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【タイの子育て便り】第2回 タイにおけるコロナ禍の記録

松本 留奈

2020年8月 7日掲載

この記事を執筆している6月下旬時点で、タイ国内の新型コロナウイルス感染症の新規感染者は、30日以上ゼロを記録しています(海外からの帰国者は除く)。これまでの合計感染者数は約3千人、死者数58人、現時点で世界的に見て感染拡大を封じ込めた国の1つといえるでしょう。3月下旬に発令された非常事態宣言はいまだに継続中であるものの、5月以降は規制を段階的に緩和し、新型コロナウイルスに配慮しながらの新たな日常が始まっています。

タイでの新型コロナウイルスの感染状況や拡大防止のための対応について、1月からこれまでの経緯をおおまかにまとめてみます。
※筆者の観点で編集しています。公的機関からの発信もあわせてご確認ください。

1月中旬

中国以外での初めての感染者が、タイで確認されたと発表される。

感染者は中国からの旅行客であり、その後は感染拡大することはありませんでした。

2月中旬

新型コロナウイルスが世界的な広がりを見せ、マスク着用や手洗い、人混みへの外出自粛の呼びかけが始まる。

タイ国内で感染拡大はみられませんでしたが、海外から旅行者が多く訪れるバンコク市では、市民の間に不安が広がり始めます。

2月下旬

児童や学生で、本人もしくは同居家族、あるいは本人と接触のあった者が、タイ政府が指定する感染地域に渡航し帰国した場合は、14日間の登校禁止となる。

この時期、ちょうど市内の多くのインターナショナルスクールは1週間程度の冬期休暇中で、インター生の中には一時帰国や旅行で国外に出ていた生徒が多くいました。バンコク日本人学校では、受験のために一時帰国をする生徒がいる時期です。タイ政府が指定した感染地域には日本も含まれており、また家族や本人と接触のあった者の渡航にもこの措置が適用されたため、筆者の周りでは登校できなくなる生徒が多くみられました。新型コロナウイルスが自分たちの日常を変えてしまうことを目の当たりにし、一気に身近な脅威となりました。

3月上旬

ナイトクラブとムエタイスタジアムで集団感染が確認される。

政府から50人以上の集会を制限する指示が出され、残念ながら日本人学校では卒業式が中止になりました。

3月中旬

小中学校や高校、大学などすべての教育機関、民間の学習塾や、映画館、フィットネスジムなどが閉鎖、4月に予定されていた大型連休の延期も決定される。

この頃から感染の拡大が始まります。小学5年生の娘が通うインターナショナルスクールは、オンライン授業に切り替わり、結局このオンライン授業は6月の学期末まで続きました。その後、タイの教育課程に沿う小中学校や高校、大学の始業日を、当初の5月16日から7月1日に延期することが発表されました。

3月26日

非常事態宣言が発令される。外国人の入国を原則禁止、国内でも長距離の移動や高齢者・基礎疾患のある人・子どもの外出自粛を要請、生活必需品を扱う店以外は閉鎖される。

非常事態宣言が出る4日前には、タイで1日当たりの新規感染者数としては最多の188人が報告されました。事態を重くみた政府は、罰則を伴う規制を開始させます。飲食店は店内飲食が禁止され持ち帰りと宅配のみになり、公園も封鎖され、あっという間に街中から人の姿が消えました。

非常事態宣言の発令が予告されるとすぐ、交通手段が封鎖される前に故郷に帰ろうと、休業に追い込まれた出稼ぎ労働者が長距離バスターミナルに押し寄せました。刻一刻と人の往来が難しくなる状況の中、急いで母国に帰る外国人もいました。

この急展開の中でも、タイの人々にパニックは見られず、落ち着いて行動しているように見えました。聞けば、直近20年でもタイは、SARSの流行、クーデター、洪水、空港閉鎖など、数々の災害や非常事態に見舞われた経験があり慣れているからとのこと。タイという国の逞しさを感じました。

4月

夜間外出禁止令が発令される。国際線旅客機の乗り入れ禁止。

例年であればタイの4月は、もっともにぎわう月です。旧正月(4月13日)を祝うタイ最大のお祭り「ソンクラン」が行われるからです。全国各地で様々なイベントが催され、街中では人々が水を掛け合い大騒ぎして正月を祝います。この日は無礼講で、誰彼構わず道行く人々にバケツや水鉄砲でとにかく水を掛け合うこのお祭りを、タイの人々は楽しみにしています。ところが、今年は新型コロナウイルス感染防止のため、すべてのイベントと街中での水かけは禁止となりました。生活必需品を扱う店舗以外は休業し、可能な限りのオフィスは閉鎖、学校も閉鎖されたバンコクは、これまでの大渋滞と喧騒、深刻な大気汚染が嘘のように静まり返り、空は澄み渡りました。

観光客が消えたタイ南部の海では、絶滅の危機にあったジュゴンの群れやウミガメの産卵が確認されました。人間が活動を自粛したことで自然環境は改善され、美しくなった海に野生の生物が戻ってきたのです。今回のコロナ禍による被害はあまりにも甚大ですが、せめてこれを契機に人間と自然が共存できる環境を見直すことになればと思います。

4月に敷かれた厳しい規制の甲斐があって、3月下旬をピークに感染は縮小していきました。

report_09_373_01.jpg 筆者自宅の窓から。澄み渡ったバンコクの空。日差しがこれまで以上にまぶしく感じられる。

5月~6月

非常事態宣言は継続中だが、規制が段階的に緩和される。

5月に入るころには、1日の新規感染者数は一桁に減り、規制の緩和が始まりました。規制緩和は4段階に分けられていて、政府による会議で14日ごとに感染状況を評価して、次の規制緩和に進むかどうかを決定していきます。評価は保健の観点を第一に考慮し、経済・社会の観点はあくまでも参考とされています。

5月3日に第1弾として、飲食店(酒類の提供禁止などの条件付き)、市場、小売店、理髪店などが営業を再開しました。再開といっても店舗に入れる人数や滞在時間に制限があり、以前のようにはいきません。

5月中旬には新規感染者数が0人の日が増えてきました。5月17日に第2弾として、大型商業施設、介護施設、宿泊施設などが営業を再開しました。大型店舗の再開にあわせて、利用客を追跡するシステムが導入されました。店舗や施設の利用者は自分のスマホでQRコードを読み込み、入る際に「チェックイン」、出る際に「チェックアウト」の登録をしなければなりません。これらのデータは60日間保存されるので、万が一感染者が判明した場合、チェックイン・チェックアウトの履歴から個人を特定し、クラスターの発生を最小限に食い止める狙いがあるそうです。

5月下旬には新規感染者数は0人の日が続くようになり、6月1日には規制緩和の第3弾として、マッサージ施設、フィットネスジム、映画館などが再開。6月14日には第4弾として、インターナショナルスクール、外国の教育課程の大学、学習塾、生徒数が120人以下の学校、幼児施設などが再開し、夜間外出禁止令が解除になりました。7月1日には、タイの教育課程にある小中学校や高校、大学が始業し、ようやくすべての教育機関が再開しました。しかし、生徒間の距離や、一度に登校できる人数、飲食などについて細かな制限があり、当面は分散登校やオンライン学習との併用になる学校が多いようです。

このようにタイでは、大規模な感染拡大には至らず、感染者を抑え込むことができたため、規制は順調に緩和されていきました。しかし規制が緩和されるたび、嬉しさを感じる一方で、再開できるはずなのにシャッターが上がらないままの店舗を見て、今回のコロナ禍がもたらした経済的ダメージの大きさを痛感しています。

インターナショナルスクールは、第4弾(6月15日)で再開の許可がおりましたが、6月20日から夏休みがスタートする直前というなんとも残念なタイミングでした。結局、3か月以上ものオンラインラーニングの果てに娘は半日登校したのみで、長い夏休みに突入することになりました。

次回は、娘の3か月に及ぶオンライン学習の様子について、報告したいと思います。

筆者プロフィール
松本 留奈(まつもと・るな)

京都大学大学院教育学研究科修士課程修了 修士(教育学)。民間シンクタンクを経た後、ベネッセ教育総合研究所にて、幼児から高等教育分野まで幅広い分野における各種調査研究を行う。2018年、夫の転勤に伴いタイ・バンコクへ渡航。現在に至る。2児の母。
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