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【スウェーデン子育て記】第34回 太陽が恋しい季節

毎年のことでもう慣れているとはいえ、短い夏が終わった後の北欧は一気に冬へ向けてまっしぐら、といったかんじで、あたりは暗くなっていきます。とはいえ、8月後半に新学期が始まるとしばらくは親子ともども学校の行事で忙しくしており、10月ともなればハロウィンの雰囲気で盛り上がるので、外の暗さはあまり気になりません。しかし11月に入ると、楽しいイベントもなく、ただただ日照時間が減っていき、暗い日が続くのみ。11月は暗さで気が滅入る人や、体調を崩す人も多くなります。最近、太陽の光を浴びていないなあ、と思い始めるのも11月なのです。数年前のことですが、その年は曇りや雨が多くて例年の11月よりも日照時間が少なく、みんなの気持ちが暗く落ち込んでいました。ところが突然、ほんの数十分だけ太陽が顔を出したのです。SNSではみんなが太陽の写真をアップしており、お祭りのように喜んでいたという記憶があります。

2019年11月。今年は北スウェーデン地方を除いて全国的に日照時間が少なく、11月の最短日照時間の記録更新となるかもしれない、という予想が出ています(11月なかば現在)。スウェーデンの気象庁(資料1)によると、南スウェーデン地方のヴェクシェーという街では、11月の平均日照時間が45時間なのですが、今年は11月半ばでわずか3時間しか太陽が出ていた時間がありません。ヴェクシェーでは1993年11月に、5時間という最短日照時間を記録しており、今年はその記録をも更新してしまうのか、と懸念されています。私の住むストックホルム地域でも、最後に太陽を見たのはいつだったのかと考えてしまうほど、はっきりしない曇り日が続いています。

長い冬の子どもの安全と健康を考えて

外が暗くなると、心配になるのは子どもたちの登下校や、遊びに行った後の帰り道です。街灯があるとはいえ、暗い道も多いので、車やオートバイの通る場所は危険がいっぱいです。交通量の少ない道路を歩くようにさせてはいますが、他にも安全対策を講じる必要があります。

スウェーデン交通局が発行している安全マニュアルでは、歩行者がリフレクター(反射板)などのついた衣服や、反射材を身につけることを推奨しています(資料2)。これは子どもだけではなく、歩行者すべてについて注意を呼びかけるものです。暗い道では車の運転手からは歩行者が見えにくいということで、歩行者が巻き込まれる交通事故の約4割は周囲が暗い時間、または暗くなり始める時間に発生しているという統計があります。これは夏と冬ではかなり違ってくるのではないかと思いますが、とにかく日照時間が短い冬季では1日の大半は暗い時間であるということが問題です。歩行者用、自転車用、また犬や馬*に至るまで、リフレクターをつけて外を歩くということが、スウェーデンでは常識となっています。
リフレクターにも色々な種類がありますが、上着に直接縫い付けてあるタイプや、バンドを腕や足につけるタイプ、もしくはキーホルダーのように好きな場所に付けられるタイプなど様々です。スーパーマーケットや薬局、書店にも北欧らしいモチーフのリフレクターが売られています。形や色もかわいいものが揃っていますので、選ぶのも楽しく、子どもも喜んでつけています。

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リフレクターは動きのある場所についていると車の運転手から見えやすいということで、足首や腕につけるのが効果的ということです。

さらに外が暗くなってくると太陽光を浴びる時間が減るので、ビタミンD不足が心配されます。特に2歳以下の乳児では、骨の生育に必要なビタミンのようなので、診療所に行くと液体状のビタミンDを無料でもらえます(2歳まで)。娘たちが小さい頃は、これを数滴、毎日摂取するように指導もされました。スウェーデンでは5歳くらいまでは毎日ビタミンDを摂る方が良いとされていますが、隣国のフィンランドでは18歳までの摂取が勧められているようです。私も学生時代にスウェーデンに来た頃は、冬の暗さのために疲れやすく、風邪をひきやすかったのを覚えています。これではいけないと思い、エネルギーを摂取しなくては!と、友人と大食いをして思いきり太ってしまったのは未だに苦い思い出です。

朝起きても外は真っ暗ですっきり起きることができないうえに、ビタミン不足のためか疲れ気味になるのは大人だけではなく、子どもも同様です。我が家の娘たちも、冬はなかなか朝ちゃんと起きることができず苦労しています。近年では子どもの睡眠障害が大きな問題となっており、医療機関での研究も進んでいるようです。原因としては、日照時間ばかりが問題ではなく、日常生活でのストレスや運動不足など色々な要因が考えられるそうですが、子どもが健康で安全に生活するためには充分な睡眠が大事です。太陽の見えない暗い冬はなおさら、大人も子どもも規則正しい生活をする必要があるようです。子どもの健康管理はなかなか難しいことですが、あともう少しで楽しいクリスマスシーズンになるので、気分を上げて残りの2019年も過ごそうと思います。

*馬場の近くでは、馬が公道や森の中の小道を通ったり、衛兵の乗る騎馬隊は街中を歩くこともあります。


筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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