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【スウェーデン子育て記】 第27回 子どもによる子どもへの支援

下鳥 美鈴

2018年4月27日掲載

毎年4月半ば頃になると、スウェーデン版赤い羽根共同募金とも言えるような募金活動があちこちで始まります。近所のスーパーマーケットの前や駅のそばで、放課後、小学生のグループが、花をモチーフにしたピンバッジやシールなどを売り歩いています。我が家の5年生の長女は、クラスの友達と帰宅するなり商品の入ったキットを持って、人の多く集まりそうな場所で募金活動をしています。この花のモチーフは、毎年デザインが変わります。2018年の今年は、黒地に黄色の花びらがついていて、中心が白い色の可愛い花です。毎年の花の綺麗なデザインを見るのも楽しみの一つで、これをコレクションしている人もいるそうです。

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上の写真は募金活動で売る商品のキットです。紙で作られたピンは、一つ20クローナ(約255円)、花輪のピンが一つ40クローナ(約510円)、そして金属製のピンバッジは一つ60クローナ(約764円)だそうです。

5月の花(Majblomma)

毎年行われるこの募金活動は、「5月の花(Majblomman)」と呼ばれる公的機関によって1907年から行われています(http://www.majblomman.se)。日本の赤い羽根募金では、学校や街頭で募金をした人が羽を受け取りますが、こちらは値段の異なる様々な商品を買うかたちで募金をします。街頭で子どもたちが売る商品を買う以外にも、ネットで品物を注文したり、寄付をすることもできます。「5月の花」募金の目的は、18歳までの未成年者の健全な育成を経済的に支える、というものです。子どもの貧困状態を軽減し、楽しい学校生活を送るために必要な経済援助をしています。具体的には、集まったお金は子どもの冬の防寒着、視力の弱い子のためのメガネ、サッカーなどの課外活動のための費用などに使われます。

経済的に厳しい状況にある家庭で育つ子どもの保護者は、子どものこのような費用として、金銭的な援助を申請することができます。保護者は申請書を作成し、それとともに子どもの状況をよく知る学校の教師や学童の指導員からの証明書を添付して、書類を「5月の花」へ送付します。申請書の審査ののち、数週間で援助が受けられるかどうかの返信が来るそうです。

経済的な援助を受けるということは、保護者によっては非常に辛いことで、しかも家庭の経済状況を学校の関係者に話すことは恥ずかしいという気持ちがあるというのも事実だと思います。しかし、この点については非常に良い配慮がされていて、直接的に「貧困」という言葉を使ったりすることは避けているそうです。保護者にも後ろめたい感情を与えることのないように気が配られているのは、本当に素晴らしいことだなと思います。第一に子どもの健全な学校生活を重視し、親の都合で子どもの生活が壊されることのないようにという考え方には、学ぶべきことがあると思いました。

募金活動の注意点

娘の通う小学校では、各クラスの保護者が話し合いで募金活動を行うかどうかを決めています。募金活動を行う場合は、団体として申し込みをし、上記の商品が入ったキットを生徒の数だけ受け取ることになります。地域での募金活動は子ども主導で行われるのですが、現金を扱うこともあっていろいろな約束事が設けられています。ホームページによれば募金活動の際には以下の注意点が挙げられています。

  1. 子どもたちはクラスメイトか保護者を同伴して募金活動を行う。
  2. 人が多く行きかう場所で募金活動を行い、知らない人にはついていかない。
  3. 集めたお金は自分の募金キットのカバンにしまう。
  4. カバンの中にはたくさんの現金を入れておくことのないように、定期的に他の場所へ移しておく。
  5. 知らない人から大きな金額のお札は受け取らないこと。

最近では携帯電話からSMSを通じて募金もできますが、まだまだ現金で募金がされることも多くあります。私も保護者として心配な気持ちもあり、娘が募金活動をしているスーパーマーケットの前に見に行ってみましたが、きちんと上記の約束事を守っている様子で安心しました。同じような募金キットを持つ子ども同士でのいざこざも時にはあるそうですが、娘の周囲ではそういったトラブルも無いようです。

今年2018年は4月12日から募金活動がスタートし、4月いっぱいは続けられるそうです。娘の5年生のクラスでは、集まったお金のうち、8割を「5月の花」へ寄付し、残りの2割をクラス旅行の費用として使うとのことです。以前の記事でもお伝えしましたが、スウェーデンの小学生はクラス全体で共同の貯金をしており、事あるごとに色々な活動を通して自分たちでお金を稼いでいます。これまでもクラス全体で学校でのディスコを開催して、入場料などでお金を稼いだこともありました。クラス旅行はまだ少し先になりますが、クラスの仲間みんなで頑張って集めたお金で行く旅行はきっと楽しいだろうと思います。この「5月の花」の取り組みは、自分たちでお金を集めるという経験もしながら、経済的に厳しい状況にある子どもたちへの支援にもなる、とても良い取り組みだと思いました。

筆者プロフィール

下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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