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【スウェーデン子育て記】 第8回 子どもたちの経済学

下鳥 美鈴

2015年12月18日掲載
秋学期は忙しい

スウェーデンでは10月下旬の秋休みが終わるとあっという間に朝晩が冷え込み、冬の気配を感じるようになります。今年2015年は11月半ばに北スウェーデンで初雪が降りました!この時期にはクリスマスへむけて少しずつ準備も始まります。気の早い私の友人は、クリスマスの一か月以上も前からクリスマスプレゼントを買い始めているそうです。家族でクリスマスを祝うスウェーデンでは、家族全員分のプレゼントをそれぞれが用意することもめずらしくありませんが、たくさんのプレゼントを準備するのは大変そうでもあり、楽しそうでもあります。

小学校では、秋学期(8月中旬から12月)は春学期(1月~6月上旬)に比べて期間が短いので、学校行事が少ないのかという気もしますが、実際にはそんなことはなく、期間が短いなかにいろいろな行事が詰め込まれているぶん、忙しい学期だなあ、という印象があります。しかし子どもたちにとっては、外の寒さも暗さも忘れる楽しい時期なのかもしれませんね。今回はその学校行事とお金の話です。日本の学校とはかなりシステムが異なっていて興味深いです。

行事にはお金がかかる

スウェーデンでは、教育はすべて無料ということが法律で定められています。したがって、保育園や学校で行われるさまざまな行事(クラス旅行、社会科見学や遠足など)にかかる必要経費は、基本的にすべて無料とされています(参照: スウェーデン教育委員会ホームページ http://www.skolverket.se/)。自治体が管理する保育園や小学校では、それぞれの学校が国や自治体からの資金で活動経費をまかなうことと決められているため、保護者の経済状態にかかわらず、全ての児童は学校行事に参加できるということを基本方針としているのです。

しかし、実際の校外活動ではそれ以外にかかる諸経費もでてくることがあります。たとえば見学先での飲食費やアトラクションに参加するための費用などです。今年の夏、保育園に通っている娘が牧場見学へ行ったことがあります。保育園の先生にそのときの話を聞いたのですが、見学先までの交通費や入場料など、基本的に必要な経費は保育園でまかなったそうですが、牧場で買った飲み物や、ポニーに体験乗馬する費用などは保育園の予算外のお金から負担しなくてはいけなかったそうです。

そういった予算外の経費はどうするのか。日本だったらすべて保護者からの集金というかたちで補うのでしょうが、スウェーデンではこういった費用を強制的に保護者から集金することは法律に反するので、これまで行事のあるごとにコーヒーなどを提供する際に「お茶代」として保護者から集めたお金や、バザーで集めたお金で補っているそうです。

スウェーデンの学校の運営を査察する公的機関、スクールインスペクショーネン (Skolinspektionen: http://www.skolinspektionen.se/)によれば、そうして集められたクラス共有のお金は多いほど良いわけではなく、ある程度の金額におさえるという指導もされているようです。例えば、高学年の生徒たちが一泊か二泊ほどのクラス旅行を行う場合、生徒一人あたり300クローナほど(約4,250円:2015年11月のレート、以下同様)を割り当てるくらいの集金であれば許容範囲であるとされています。いずれの場合も、クラス共有の予算としてお金を集めるためには、学校長の判断のもと、保護者と生徒が中心となって活動を行うのが基本原則だそうです。しかし、生徒が工作などで作品を作り、それを半強制的に保護者に買わせてお金を得るというような方法は許可されていません。

どうやってお金を集めるの?

実際に生徒と保護者が協力してお金を集めるためにはいくつか方法があります。

  • フリーマーケット
    一度に多くの収入が見込めるのは、地元で行うフリーマーケットです。土曜日や月末の給料日をねらって、人が集まる広場やスーパーマーケットのそばでフリーマーケットをひらくことがあります。子どもたちが使わなくなったおもちゃ、遊具、本、スポーツ用品を持ち寄ったり、手作りのお菓子などを売っています。
  • ディスコ
    高学年の子どもたちが中心となって、学校でディスコを開くこともあります。小学校のディスコとはいえ、体育館のようなところにちゃんとミラーボールがあって、流行りの音楽が流されるという徹底ぶり!みんなオシャレをしてディスコにやって来ては、思い思いに踊っています。ほとんどの場合、金曜日の夕方から時間を区切り、低学年を早い時間に招き、そのあとは高学年の子どもたち、というかたちで行います。当然、安全のために大人がお手伝いとして行くことになりますが、入場料を集めたり、ディスコでお菓子やジュースを販売するといったことは子どもたちが担当します。3年生の娘が今まで参加したことのあるディスコでは、2時間のディスコで、入場料とスナックの料金を合わせても50クローナほど(約700円)でした。
  • 商品の販売
    企業の中には、生徒が販売するための商品を扱っているところがあります。一定量を売ることを前提に企業と契約して、商品の靴下や花、クッキーなどを預かり、これを生徒が販売するのです。我が家にもよく、子どもたちがこれらの商品を売りに来ることがあります。問題点としては、一定量の販売を企業と契約しているため、けっきょくは保護者が職場で商品を売らなくてはいけなくなったりすることがあるそうです。
  • お手伝いアルバイト
    最近よく行われるのは、とくに準備もいらない「お手伝いアルバイト」です。近所のお宅の犬の散歩、洗車、草むしりなどの軽作業をすることで、子どもがお金を集める方法です。我が家に時々やってくるのは、空き缶やペットボトルを回収に来る子どもたちです。「クラス旅行へ行くので、資金を集めています。ペットボトルをいただけませんか」と言われるので、私も常に集めておくようにしています。スウェーデンでは、ほとんどのスーパーで空き缶とペットボトルのリサイクルコーナーがあり、その場で換金ができます。空き缶が一本0.5~1クローナほど(10円前後)、そして大きなペットボトルは1.5クローナほど(約20円)になるので、大量に集めれば結構な金額になります。

気を付けなくてはいけないこと

クラスの中には、意欲満々でお金を集めようと頑張る子もいれば、それほどやる気が出ない子もいるかもしれません。仕事の役割分担に不公平がでないようにすることは、その後の活動にも影響するので、非常に大切なことのようです。お金を集める目的は、個人が使用するためではなくクラス全体のためであることを忘れずに行動することが大事でしょうね。

我が家の娘たちは、まだ実際にお金を集めるために活動をしたことはありませんが、今後、学年があがればきっと体験することだろうと思います。保護者の立場から言うと、学校行事のためのお金を集めるという作業をすることで、その行事がより思い出深いものになり、さらにお金を稼ぐことの大変さと大切さを学んでくれるいい機会になるといいな、と思います。

筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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