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【ジャカルタ子育てジャーナル】 第10回 ジャカルタで産むべきか産まざるべきか・・・悩めるママたち

ジャカルタで妊娠。それはとても喜ばしいことです。そしてその後考えることは、どこで産もうかということ。

私の場合、第1子は日本で妊娠、出産しましたが、第2子はジャカルタで妊娠しました。そして出産を考えたとき、ジャカルタで産むことも検討しましたが、結局日本に帰って産む決意をしました。今回はジャカルタでの妊娠・出産事情をリポートします。

ジャカルタでの出産

ジャカルタで出産するか、自国で産むか、悩めるポイントは、母親の出身国によっても違って興味深いです。

オーストラリア人の友人は、第1子を産んだオーストラリアの地元の病院は、相部屋であまり良い設備ではなかったようで、第2子の出産では個室でケアしてもらえるジャカルタを選んだと言っていました。オーストラリアでは個室を選ぶとかなりの費用がかかるようでジャカルタで産むほうが安いそうです。

韓国人の友人は、祖父母も含めて家族でジャカルタに移住してきているのでジャカルタで出産しましたが、韓国のほうが産院を出てからさらに手厚いケアを受けられる施設があるので、できたら地元で産みたかったと言っていました。

日本人の場合、やはり日本の病院のほうが安心感があり、ジャカルタで出産することに躊躇する人も多くいます。私もその1人です。しかし、最近はジャカルタで出産するとか出産したという話もよく聞きます。

友人のケースをご紹介します。

インドネシアでは外国人医師は医療行為ができないことになっています。日系のクリニックはありますが医師はインドネシア人になります。日本人の看護師がいるクリニックもあります。但し、出産できる設備の整った病院はローカルの病院のみになります。

友人はジャカルタでも一番大きな病院で第3子を出産しました。なぜジャカルタでの出産を選択したかというと、里帰り出産を選択した場合、ご両親が高齢で上の子ども2人の面倒を見てもらうのが難しいことや、ジャカルタではお手伝いさんの助けを借りることができること、3人目なので出産への不安が少なかったことなどが大きな理由のようです。また、病院にインドネシア語を日本語に通訳してくれる人がいることも決め手となったと言います。他の友人でも、上の子どもの学校を休ませたくないなど、上の子どものケアを優先してジャカルタで産む決意をする人も多くいるようです。

ジャカルタで産むメリットについては、友人曰く、お手伝いさんに色々頼めること、移動手段が車で、運転手さんがドアtoドアで病院まで連れていってくれるので楽であること(渋滞が激しいのは難点)、予防接種も在庫切れは良くあるものの、日本製に拘らなければジャカルタでも打てること、子ども好きの人が多いので赤ちゃんがいると優しく声をかけてくれることを挙げていました。また、夫と協力して出産、育児に臨めることも良いことだと思います。私の場合、第1子の時はすでに夫がジャカルタに赴任していました。それでも日本での出産には間に合い、立ち会うこともできましたが、その後すぐにジャカルタに戻ってしまったので、子どもが生後4ヶ月でインドネシアに渡航するまでは育児に参加できませんでした。第2子も日本で出産しましたが、出産予定日より2週間以上早く、しかも破水から始まりあっという間に生まれたので、残念ながら立ち会うことは出来ませんでした。ジャカルタで出産する場合は、夫婦で臨む出産といった感じで、家族の一体感が生まれやすいかもしれません。

さて、デメリットはというと、友人曰く、渋滞が激しいので、産気付いたあと出産に間に合うように病院にたどりつけるか不安だったそうです。また、ご主人の職場はジャカルタ郊外の工場地帯で、ご主人も間に合わない恐れがあるため、計画出産(産む日を決めてその日に陣痛促進剤を打って出産を進めていく)をすることにしました。ローカルの人のなかでもジャカルタでの出産で不安なこととしては渋滞が挙がっていました。医師もそれを懸念して、また医師自身のスケジュールが立てやすいとして、帝王切開を勧めてくる人も多くいると聞きます。日本では事情があって帝王切開に踏み切ることが多いと思いますが、ジャカルタでは普通分娩が出来る状態にも拘わらず帝王切開をすることもよくあるそうです。

また、出産において何が頼りになるかと考えると、助産師さんの存在は欠かせないものだと思います。私自身、助産師さんがいてくれて、声をかけてくれ、体を擦ってくれて、辛い陣痛を乗り越えられました。友人曰く、ジャカルタでは日本の助産師さんのそれとは随分違うそうです。友人が陣痛で苦しんでいる間、他のスタッフと世間話等をしてくつろいでいたそうで、友人にとってストレスだった、日本との違いに驚いたと言っています。その話を聞いて日本の助産師さんはなんて素晴らしいのだろうと改めて思いました。

また、お医者さんとのコミュニケーションですが、通訳をお願いする場合、うまく訳してくれなくて歯がゆい思いをしたと言っています。特に友人の場合、胎児に異常がある可能性を指摘されながらも、その症状をうまく通訳してもらうことができず、ジャカルタで対応しきれるものなのかどうか不安が募ったそうです。結局一度日本に戻り日本の専門病院を受診して症状を詳しく聞き、産後の対応なども相談できたことで不安が解消されたということです。

ローカルの人の妊娠出産

インドネシアでは貧富の差が激しく、様々なタイプがあると思いますが、今回、ジャカルタで暮らすインドネシア人の、一般的と思われる家庭の妊婦さんにお話を伺いました。彼女はホテルのレストランでサブマネージャーとして働き、旦那様は消防士だということです。

驚いたことは、毎回の検診費用が高いことでした。彼女は職場と自宅から近いクリニックに通っているそうですが、2Dのエコー写真を撮ってもらい、診察代薬代も合わせて一回で30万ルピア(日本円で2,500円ほど)位かかるそうです。国や市からの補助などはないそうです。こちらでは屋台やローカルの食堂で150円から200円で一食食べられるような物価水準ですし、彼女のお給料は数万円という中で、それだけの費用を毎月捻出することは家計にかなり負担がかかることでしょう。貧しい人はどうするのかと尋ねたところ、エコー写真のお金が高いので、それを省いてもらっているのだろうと言っていました。

また、既に妊娠後期に入っているにもかかわらず、まだ血液検査を1度もしていないと言っていました。後期の終わりに1度だけ感染症にかかっていないかなどのチェックをするそうです。日本では2回又は3回は血液検査があると思います。

さらにインドネシアでは産休は日本と同じくらいで3か月ですが、その後の育休というものはなく、すぐに職場復帰します。産前産後合わせて3ヶ月とは、まだ体も本調子ではないままの復帰だと辛いのではないかと心配になります。その際誰が赤ちゃんの面倒を見るのか聞いたところ、彼女の場合親御さんも離れて暮らしているため、ベビーシッターさんを雇うと言っています。費用を聞いてみると、外国人がお願いする価格に比べて半額以下とかなり安く、 驚きました。

彼女の場合、診察する医師によって、告げられる出産予定日が一ヶ月近くずれていて、出産予定日の目処を立てるのが難しいとのこと。無事に元気な赤ちゃんを産んでほしいと願います。

私の経験

前述の通り、私はジャカルタで第2子を妊娠し、34週までジャカルタで妊婦検診を受けました。場所は自宅から車で10分ほどの場所にある、ジャカルタ中心部の総合病院です。最初の診察などは日本とほぼ同じで、尿検査で妊娠反応を見て、診察を受けて胎のうを確認します。2回目の診察では胎児の心音まで確認できました。その後月に1度受診したのですが、中期辺りで私はあることに気が付きました。日本では初期に血液検査をしたような記憶がある!と。そこで医師に相談したところ、どんな項目を検査したいのかと尋ねられ、第1子で通っていた日本では病院任せだった私は焦りました。逆に何が必要ですかね?と医師に聞いてしまいました。

また、日本では検診の度に尿検査をして尿糖の値や尿蛋白の値をチェックしますが、インドネシアではそういった検査をしません。私の場合、後期に入って日本で初めて検査をして、血糖値が高く、妊娠糖尿病にかかっていることがわかりました。妊娠糖尿病は母体のみならず胎児にも合併症のリスクが高くなるので、それを知り心配になりました。いつから妊娠糖尿病だったのだろう?ジャカルタでは初期の血液検査でもその項目は選択しておらず、尿検査も妊娠が判ったときに1度おこなっただけでした。胎児が毎回大きいと言われていたのは、妊娠糖尿病の合併症の1つの巨大児ということではないかと悩みました。

幸い無事元気な赤ちゃんを産むことができたのですが、ジャカルタで検診を受けるということは、受け身ではいけないのだと痛感しました。日本では何週目でどんなことをするかという検査項目が決まっていて、妊婦はその流れに沿って、病院に言われるがままに受診をすると思います。インドネシアで病院にかかる際は自分の意思をもって、何が必要で、何をしてもらいたいかということを医師に伝えて実行していくことが必要だと感じました。家庭の状況も踏まえた上で、子どものために一番良い選択をしていくことが大事なことだと思います。

筆者プロフィール
岸田佐代子(きしださよこ)
メーカー勤務から地方局契約アナウンサーを経て結婚と同時に夫の赴任先のアメリカ・ジョージア州へ転居。
帰国後フリーアナウンサーとしてリポーターや司会の仕事を行い、2012年夫の転勤に伴いインドネシア・ジャカルタへ渡航。現在に至る。
2児の母。趣味はテニス、ヨガ。
愛犬はトイ・プードル。
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