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【ベルギー子育て奮闘記】 第8回 日本食フェスタ

これまで子どもたちの学校の様子や、イベントなどについて書かせていただきました。本当にいろいろな経験をさせていただいているこの2年間。今回は私が満を持してチャレンジした大イベントについて書きたいと思います。

上の子(以下「お姉ちゃん」)が小学校に通い始めて2、3カ月経った頃、お姉ちゃんのお友達のママに、「あなたに相談があるの」と呼び止められました。そのママは、私がベルギーに来て初めてお友達になった方です。まだ英語もままならない私をご自宅に誘ってくれたり、会えば必ず「大丈夫?何か困ったことはない?」などと話しかけてくれたりして仲良くなりました。そのママが「相談」とはなんだろうと、少し構えて聞いてみると、何やら保護者会のイベントとして、毎年色々な国の料理を一緒に作って、一緒に食べる、というイベントを開催しているとのことでした。昨年は保護者の一人がアルゼンチン料理をレクチャーして、みんなで一緒に作って食べたそうです。 それを今年は私にお願いしたいと・・・。「日本の料理をみんなにレクチャーしてくれない?」と頼まれました。

ここルーヴェンでは、3、4年前から、日本食レストランや、寿司バーなどが増えてきたそうで、今では7、8軒を数えます。ただし日本人が調理しているお店は無く、ネパールの方や中国の方が作っているので、私たち日本人からすると、少しずれた日本食になってしまっています。このお話をいただいたのは、家族でルーヴェンの日本食のレストランに何軒か行ってみて、「何か違うよね。惜しいね。」などと話をしていた、ちょうどその頃でした。とは言っても、この話をいただいたとき、「よし!ベルギーの皆さんに本当の日本の味を教えよう!」などとは微塵も思えず、本当にそんなことが私にできるのか、不安でいっぱいになりました。ですが、主人の「何事も経験。こんなチャンス二度とないよ」という言葉に後押しされ、引き受けることに決めました。

引き受けた以上、絶対に成功させたい、みんなに喜んでもらいたいと思い、開催日当日までの約1か月、できる限りの準備をしました。現地のお友達に何を作ろうかと尋ねると、やはり、一番に出てくるのは「お寿司」でした。さらにリクエストとして、「これを機会に家でも作れる日本食を教えてほしい」ということでした。ルーヴェンには日本の食品を扱っているお店は何軒かありますが、品数は少なく、値段も高いです。その数少ない日本の食品を使って何ができるか、色々考えてみました。

現地のお友達と集まり、メニューを決めたり招待状を作ったりして、いよいよ当日です。25名もの保護者や職員の方が集まってくださいました。中には、校長先生や先生方もおられ、お姉ちゃんの担任の先生も、小さいお子さんを預け参加してくださいました。他の皆さんも金曜日の夜にも関わらず、仕事が終わった後、子どもたちをシッターや祖父母に預けてまで参加してくれました。19時半からの調理開始です。

この日のメニューは、巻き寿司、鶏のから揚げ、カレーライス、お味噌汁です。組み合わせとしては、ちょっとどうなんだろう?という感じもしましたが、ルーヴェンで手に入る食材、カレールーやだしの素などをどうしても使いたかったので、このメニューにさせてもらいました。お味噌汁の作り方も、カツオや昆布からだしを取る方法も考えましたが、「家でも作れる日本食」を今回は実施するため、簡単に使えるだしの素での調理を選択しました。

当日、集まってくださった皆さんに、和紙で作った桜の形の名札を渡しました。すると皆さんが、自分の名前を日本語で書いてほしいと言ってくださったので、皆さんの名前をカタカナで書いて渡しました。そして、主人が一言挨拶をした後に、まずは日本酒で乾杯し、それからメニュー毎のグループに分かれて調理を始めました。事前に作った英語のレシピを見ながら、皆さん調理に取りかかったのですが、やはり細かな説明や実演を求められ、一人バタバタと走り回り、とっても忙しい時間を過ごしました。

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日本酒で乾杯

当日は日本から持ってきた包丁を持参したのですが、日本では普通サイズの包丁も、ここベルギーではその大きさに驚かれました。というのも、ベルギーでは包丁というよりは小さなナイフを使い、ジャガイモやニンジンなどは形を気にせずとにかくぶつ切りにと言った切り方が多いようです。カレー用のジャガイモの「乱切り」も、その切り方に興味を持っていたのが印象的でした。

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お寿司を作る参加者

そして、すべての料理が出来上がったのが、なんと午後9時半。そこからみんなで食べます。別室にテーブルなどをセッティングしたのですが、その入り口に、少しでも日本の文化に触れてもらおうと、子どもにも手伝ってもらって作った、折り紙や、竹とんぼ、こまなども用意しました。そして、子どもたちの浴衣もディスプレイしました。皆さんすごく興味を持って見てくださり、主人に質問する場面も見られ、食事の前に日本の文化を紹介することが出来ました。

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日本の物のディスプレイを見る参加者

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ディスプレイ


作ったお料理ですが、ベルギーの人たちが初めて作った日本料理とは思えない出来栄えで驚きました。見た目も味も、私の想像以上のものが出来上がりました。皆さんもとても喜んでくれて、きれいに完食しました。

最後に、校長先生と主催してくれたお友達からベルギービールと花束をいただき、感無量でした。この話をもらってから当日まで、どこか落ち着かない日々を過ごし挑んだ日本食フェスタでしたが、参加してくださった皆さんの協力と、また優しい気遣いもあり、大成功で終えることが出来たと、最後は本当に涙が出るほどうれしかったです。

このあと、何人かの人に「あれからカレーを作ってみたのよ。子どもたちにも大好評だったわ」「お寿司作ったわよ」などと話しかけてもらい、本当に挑戦して良かったと思いました。

今回のこのイベントに際し、子どもたちもたくさん協力してくれました。メニューを決める際に、「あの子はお寿司が好きだから、ママに絶対お寿司の作り方を教えてあげて」だとか、「私がお弁当を持っていったら先生が"これは何?"って聞いてくるから、から揚げも作って」などいろんな助言をしてくれました。折り紙も一緒に作ってくれ、「竹とんぼとこまも貸してあげる」と言ってくれました。次の日に、大成功だったと伝えると本当に一緒になって喜んでくれました。不安もありましたが、何事もトライしてみることが大事と、子どもたちにも示せたように思います。

ベルギーに来る前の私は、お友達ができるのか、異国の地でちゃんとやっていけるのか不安でいっぱいで、いつも日本のお友達や家族に泣きついていました。まさかベルギーの方たちと日本食を一緒に作って食べる機会があろうとは、思ってもみないことでした。出会えた友人たちの優しさの中で、こんな楽しい経験をさせてもらえて、本当にベルギーに来てよかったと思えるようになったことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

筆者プロフィール
奥村 沙織: 2011年より、夫の転勤に伴い二人の娘とともにベルギーのルーヴェンに在住。
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