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【双子のいる生活】 第19回 双子の個性って

お久しぶりです!
しばらくご無沙汰していた間に、我が家の双子は3月に6歳になり、保育園を卒園。今月、小学校1年生になりました。

私にとっては、10年間に及ぶ保育園への送迎が終了。年間200日とすると、1年に400回、10年で4,000回。雨の日も風の日も自転車で子ども達を送り、迎えに行った日々が終わり、母親としても一つの節目だと感無量です。ワーキングマザーの生活は、このような小さなことの積み重ねの上にあるのです。

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保育園送迎の最後の日。

現在、日本では、出産の約1%が多胎出産(注1)。もはやマイノリティーとは言えない?!
でも、多胎児の妊娠・出産・育児情報や、多胎児ママ・パパ向けのサポートはまだまだ少ないです。私自身が双子ママとなって得た情報や体験を、後輩の多胎ママ・パパさんたちに役立てて頂けたらと思って、このコーナーを始めました。それから早くも5年以上経ちました。6年間の育児生活を振り返ると、双子ならではの育児情報が必要だった時期は、妊娠期~赤ちゃん時代を中心とした2~3年間だったと思います。私が頻繁に書いていた時期やテーマも、妊娠期~赤ちゃん時代のことが多いです。子ども達の成長に伴って、双子ならではの育児は減っていきましたが、一方で、精神的な面で子ども達への気づかいが増えてきたなぁと感じます。

3月、嬉しいことがありました。このコーナーをご覧くださった双子ママさんが、参加されている港区主催の双子ママ向けの会に、私をゲストで呼んでくださったのです。この会に過去に呼ばれた方々は、多胎児家庭の研究やサポートの専門家の方々が多く、私のような者が行ってお役に立つだろうかと、声をかけていただいた当初はドキドキしました。でも、多胎児のための育児書を何冊か読んできましたが、どの本も、実際の育児経験から産み出された知恵や工夫が中心となって書かれてあることに気付き、「先輩の知恵と試行錯誤の共有」こそが大切だと思い、行って参りました。

港区は、隔月で奇数月に「ふたごの会」(多胎の子どもと保護者の集い・妊娠中の方も参加可能)を開催しています。会の間は託児も行います。双子ママたちは、ひと時、子ども達から離れて、ママ同志で情報交換や悩みなどを話し合います。その場には、保健師もいて、専門的な相談にも答えられる体制になっています。私も、自分の住んでいる地域の双子ママサークルの定例会に何度も参加させて頂きましたが、子ども達がいると、なかなか落ち着いて交流ができませんでした。だからと言って、ママたちの倍以上の数の子ども達の託児費用はなかなか出せません。自治体が、託児もつけて、このような会をもたれていることは、大変な育児をしている双子ママたちを支える素晴らしい制度だと思いました。(ちなみに、港区主催の「ふたごの会」が開催されない偶数月には、双子ママさんたちが自主的に集まり、託児も頼んで交流をはかっているそうです。)

私は、妊娠・出産・育児の調査研究を仕事としておりますが、出産体験の良好さ(リラックスした分娩であったかどうかなど)を導く要因について調べたことがあります。出産は長くても3日程度のイベントですが、母親にとって、出産体験は、その後の育児肯定感に影響するからです(注2)。分析の結果、出産体験の良好さに最も影響を及ぼしたのは、出産の様式(自然分娩・予定帝王切開・緊急帝王切開)で、特に「緊急帝王切開」で出産された方の出産体験は悪くなっていました。そして、出産体験が悪かった方の「母親自身の心身についての相談サービス」についての評価は、出産体験が良かった方に比べて低くなっていました。双子の出産の場合は、「予定帝王切開」のケースが多いだろうと思いますが、同じ帝王切開でも、予め手術をすることが分かっている「予定帝王切開」の方の出産体験は、「自然分娩」の方とあまり差がありませんでした。しかし、予定帝王切開であったとしても、手術を経て傷ついた身体で、双子の育児を行う双子ママの心身の負担は、大変大きいものです。そんな双子ママ自身の心身を支える相談サービスは充実するべきであろうと思います。港区が隔月でこのような会を開かれていることは、本当に素晴らしいことだと思います。

「ふたごの会」では、生後半年~2歳前くらいの育児について、参加されている方々の体験も伺いながら、母乳育児や双子を連れての外出、双子育児と仕事の両立などについて話しました。その時に、幼児期以降の双子の個性の差や、個性の差を踏まえた教育についてご質問を頂きました。正直、個性の差については、ひとつの答えはないと思います。双子といっても、卵性の差、性別が同じか別か、出生時の状況、保護者の関わり方、育て方等によって、個性や発達の差は変わると思います。専門家による研究もおこなわれているくらいです。ですので、私は、私の娘達を育てて感じたことしか伝えることができませんが、私自身も試行錯誤しながら、二人の成長を見てきましたので、幼児期を卒業するこの機会に、我が子たちのことを振り返ってみたいと思います。

卵性:一卵性双生児
性別:女児
出生時の状況:2400㌘と2500㌘、二人とも異常なし
保育歴:1歳0カ月から保育園入園。5年間、同じクラスで同じ担任、同じ友達と過ごす。

二人の性格は、大きくみると似ています(二人とも、外交的で楽観的で明るい)。でも、細かくみると、個性は異なり、その個性は赤ちゃん時代から変わっていません。そのひとつは、「物ごとへの取り組み方」です。双子姉は「やると決めたら自力でできるまで粘る」子、双子妹は「無理はしない」子です。たとえば、1歳の時の歩行の練習。双子姉は、部屋の端から端まで脇目も振らず、周りのことは気にせず、ひたすら行ったり来たりしていました。双子妹は、一歩、歩いては、周りの大人に目を向けて、「ほら、私、歩けるわよ」とアピールし、それで満足。4歳の時、二人は補助輪を取った自転車に乗る練習をしました。双子姉は、ヘトヘトになるまでひたすら自転車に乗り続け、半日で乗りこなすようになりました。双子妹は、周りの大人を巻き込み、少し乗って転ぶと休み、乗れるようになるまで2日間かかりました。5歳、ひらがなや算数のワークブックを渡してみると、一日で全てやってしまうのは双子姉、私と一緒に数日かけて少しずつ取り組むのが双子妹。この傾向は保育園でも同様で、できるまで諦めない双子姉は坂上がりも棒登りもできるようになりましたが、双子妹はまだできません。このように、物事に取り組む姿勢のようなものには、遺伝子が同じ一卵性でも、はっきりとした個性の違いが見られ、それは赤ちゃん時代から変わりません。私は親として、二人の個性を活かして、かつ、差をつけないように対応しているつもりですが、それが正しい対応なのかどうかはわかりません。

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自転車の練習中

もうひとつ、二人の違いで面白いのは、ダンスです。双子姉のダンスは、男性のダンスグループで踊られるような直線的なハリキリダンスです。一方で双子妹のお得意ダンスはアニメのヒロインやアイドル系。細かい振りをしたり身体をくねらせたりして、やっぱり"観客"を意識しながら踊ってくれます。

これから学童期に入り、初めて、違うクラスで過ごして、違う友達ができ、教科学習も始まり、二人がどのように育ち、変わっていくのか、ドキドキしつつも楽しみな私です。

個性も違うけれど、いつも分身のようにそばにいる双子。母親の私からみると、その存在は「ライバルであり親友」。一人が保育園を休んだ時、休んだ方は、保育園にいるもう一人の話ばかりしています。保育園に行った方は、いつもより静かで、休んだ子のことばかり話しているそうです。一人が兄貴(小6の長男)と喧嘩をしていると、もう一人が身を投げ出して、兄貴の拳から相方を守ろうとします(止めに入るのも忘れて、私は感動して見入ってしまいます)。

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ライバルだけど、一番の仲良し

最後に、双子妹(B子)が話してくれた、双子から見た双子の存在について書かせていただき、今回のレポートを終わらせて頂きます。

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いよいよ小学校1年生。どんな風に助け合って成長していくでしょう。楽しみです。


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