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【仲間関係のなかで育つ子どもの社会性】 第2回 子どもにとってのナナメな関係:きょうだいと異年齢の仲間から学ぶこと

酒井 厚(山梨大学教育人間科学部准教授)

2011年12月 2日掲載

要旨:

今回は「子どもの仲間関係と発達への関わり」の連載第2回目として、異年齢の子ども同士の関係性について取り上げた。子どもにとって身近なきょうだいに始まり、異年齢保育での仲間関係に関する心理学の知見を紹介しながら、子どもの社会性の発達に対する異年齢関係性の意義について論じた。
1.幼稚園で起きたある事例から

私が教員養成学部の授業で学生によく見せる教材DVDに、幼稚園での4歳の男児の一日を追いかけたものがある。主人公であるAくんが、大好きなタイヤ転がしレース遊び(本人はミニ四駆レースと言っている)をめぐって仲間といざこざを生じ、それをなんとなく解消して、最後には楽しい一日を過ごしたというストーリーである。中でも印象的なのは、Aくんが仲間と一緒に大きな積み木を使って、ミニ四駆レースのコースをつくるシーンである。Aくんは、同い年の子どもと一緒になって、自分の背よりもかなり高いところから滑り落ちるコースを作ろうとするのだが、まだ4歳であるため皆とイメージを共有できず、思い通りに変形してくれない木の板にいら立ち(分厚い板であるから曲がるわけはないのだが)、途中まで積み上げたブロックを仲間の一人がはずみで倒してしまうことで泣いてしまう。しかし、そばで見ていた先生は自らがコースづくりに手を貸すことはせず、近くにいた身体の大きい年上の子どもにAくんたちのコースを作る手伝いを促すだけである。そして、その子はてきぱきと作業を進めてみんなと素敵なコースを作りあげ、Aくんたちはさっきまでのいざこざをすっかり忘れて、レース遊びに興じるのであった。

年上の子が年下の子のできないことを手伝ってあげて、年下の子は年上の子をまねて一生懸命に取り組もうとする。幼少期の子どもにとって、こうした異年齢との交流は同年齢の仲間との付き合いとは違った面白さがある。近年では、少子化の影響もあり、保育園ばかりでなく縦割り保育を積極的に取り組む幼稚園が増えてきた。ある園では、「きょうだい保育」という名称を用いて、"家"のように独立した保育空間のなかで異年齢の子ども同士の関わりを促すユニークな取り組みを行なっている(粟原・桜井,2000)。こうして教育機関が異年齢の仲間関係に注目する大きな理由のひとつは、きょうだいを含め、年上と年下という関係性が子どもの社会性の発達を促すという期待からである。今回は、異年齢の子ども同士の関係性としてきょうだいと異年齢の仲間関係を取り上げ、子どもの社会性の発達との関連から考えてみたい。


2.きょうだいの存在

平成22年に実施された出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所, 2011)によると、出生子ども数の構成は一番多い2人きょうだいで56.2%、続いて3人きょうだいが19.4%、一人っ子は15.9%であった。同様な傾向はおよそ30年前から続いており、少子化が進むわが国においても"子どもにきょうだいがいる"家庭が7割程度を占めている。

心理学では、きょうだい関係を同年齢の仲間のように対等な立場からの「ヨコ」の関係に加え、親子間の"面倒をみる-みられる"に似た「タテ」の関係も合わせもつことから「ナナメ」の関係と呼び、子どもの社会性の発達との関連について検討してきた。しかし、誰もが素朴に思っているように、きょうだい関係は、その人数や年齢差、性別の組み合わせなどによって特徴が随分と異なる。そのため、同じテーマ(例えば対人関係スキル)について扱った研究でも、きょうだいがいることの利点が見られたり見られなかったりした。近年、アメリカで20,649名の幼児(平均年齢は6歳2カ月)を対象に実施された大規模な調査(Downey & Condron, 2004)は、こうしたはっきりしない状況をある程度解消してくれている。

この調査によれば、子どもの社会性に関わるその他の要因(家庭の社会経済状況や子どもの健康状態など)の影響を考慮した場合にも、きょうだいが一人もしくは二人いる子どもは、いない子どもに比べて対人関係スキルや自制心の得点が高く、問題行動の得点が低いという結果であった。さらに、きょうだいの形態の中でも、1、2歳年下のきょうだいがいる子どもほど自制心が高く、問題行動が低いこともわかった。きょうだいがいれば、いくら仲が良くても、下の子の上の子へのライバル心や、上の子が下の子に対する親の接し方をうらやましがるなどからケンカは起こるものである。こうしたケンカが起こり、それを解消していく経験が、家庭外の仲間と起こすいざこざの良きリハーサルの場となり、対人関係スキルを磨いていくと主張する研究者は多い(Brody, 1998など)。また、上の子が自制心が高く問題行動が低いのは、下の子が生まれ、親から兄・姉らしくするように求められることによると考えられる。子どもによっては、寂しさから一時的に「赤ちゃん返り」や「チック」などの状態を見せることがあるが(菅原・中野, 1998)、親との関係を調整するために親の子育てを手伝ったり、下の子の面倒をみることを通じて、上の子としての自覚を育んでいくのである。


3.異年齢の仲間関係の意義

模型作りをしている7歳の子どもが、自分の年上のきょうだいとその友人(7歳の子にとっては異年齢の友人)の両方から同時に作り方を教わった場合、どちらの話を良く聞くか比較した実験がある(Azmitia & Hesser, 1993)。その結果、7歳の子どもはきょうだいのやることを観察し、真似て、助言を求めることがより多く、年上のきょうだいの方が友人よりも7歳の子どもの求めにうまく応じていた。この実験で示されるように、きょうだいと異年齢の仲間関係では、コミュニケーションのスムーズさや関係性の深さという点で差がある。しかし、社会性の発達を促すという観点からすれば、異年齢の仲間関係にもきょうだい関係と同じような利点が見出されている。例えば、幼児期に異年齢集団のなかで過ごしている年上の子どもには、年下の子が何かしようとするのを手助けしたり、決まり事を教える行動が自然と見られ、年下の子の面倒を見る責任感が育まれていく。それと同時に、面倒を見た年下の子どもに喜ばれ、周囲の大人に褒められることで自分に自信をもてるようにもなる(仲野・後藤, 2002)。

一方、年下の子どもは、年上の子どもに薦められサポートがある状況では、少し複雑で難しそうな遊びや作業にも取り組むことができ、ものごとに挑戦する姿勢が身についていくと考えられる。異年齢の仲間関係の利点は、小学生を対象にした調査(McClellan & Kinsey,1999)からも認められており、低学年齢期に異年齢集団で過ごした子どもの方が、同年齢集団で過ごした子どもに比べて向社会的な行動が高く、攻撃的な行動が少なかった。また、異年齢集団は、同学年とはうまく関われない子どもにとっても適しているという報告がある(坪井・山口, 2005;Katz, Demetra, Jeanette, 1990)。幼児期には、上の学年の子が下の学年の子であればスムーズに関われるケースが見られるが、その理由のひとつは、誕生月の違いによる発達の進み具合の差であると考えられる。異年齢集団であれば、それぞれの子どもの発達状況に適した仲間を見つけることができ、学年の垣根を越えたヨコとタテの関係から多くを学ぶことができるといえよう。


4.異年齢の仲間関係を意味あるものにするために

これまで紹介してきたように、きょうだいや異年齢の仲間関係で得る経験は、幼少期の子どもの社会性の発達を促すものである。しかし、せっかく異年齢の子どもたちが集まったとしても、年上の子が自分勝手に振る舞ったり、下の子が全くできそうもないことをやらせたりしていたら、下の子の負担は増えるばかりである。上の子に関しても、下の子を「お世話する」役割を与えられすぎるとストレスが高まり、きょうだいや異年齢の仲間との良好な関係性が築けなくなってしまう恐れがある。育児雑誌等で度々取り上げられるように、親の上の子との関わりは二人目が生まれたあとで減少する傾向にある(Kojima,Irisawa, & Wakita, 2005)。また、異年齢保育の保育者にも、年上の子どもと年下の子どもに「お世話する‐お世話される」関係を期待しすぎる傾向が指摘されている(坪井・山口, 2005)。親や保育士は、ときには上の子を甘えさせてあげることも忘れずに、異年齢の子どもたちの自由なやりとりを見守って欲しい。


引用文献

Azmitia,M., & Hesser,J. 1993 Why siblings are important agents of cognitive development:A comparison of siblings and peers. Child Development, 64, 430-444.

Brody,G.H. 1998 Sibling relationship quality: Its causes and consequences. Annual Review of Psychology, 49, 1-24.

Downey,D.B., & Condron,D.J. 2004 Playing well with others on kindergarten: The benefit of siblings at home. Journal of Marriage and Family, 66, 333-350.

Katz,L.G., Demetra,E., & Jeanette,A.H. 1990 The case for mixed-age grouping in early education. Washington, DC: National Association for the Education of Young Children. ED 326 302.

Kojima,Y., Irisawa,M., & Wakita,M. 2005 The impact of a second infant on interactions of mothers and firstborn children. Journal of reproductive and infant psychology, 23, 103-114.

McClellan,D.E., & Kinsey,S.J 1999 Children's social behavior in relation to participation in mixed-age or same-age classrooms. Early Childhood Research and Practice, 1, http://ecrp.uiuc.edu/v1n1/mcclellan.html.

粟原知子・桜井康弘 2010 「きょうだい保育」を導入した保育園の子どもの発達に関する調査研究(2):「いえ」型保育空間における園児の居室利用実態について 日本建築学会北陸支部研究報告集, 53, 623-626.

国立社会保障・人口問題研究所 2011 第14回出生動向基本調査:結婚と出産に関する基本調査(夫婦調査の結果概要) http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14/doukou14.pdf

菅原ますみ・中野早苗 1998  きょうだいの子育て-上の子と下の子でこんなに違う! 主婦の友社:

坪井敏純・山口郁 2005 異年齢保育の中の子どもたち 南九州地域科学研究所所報, 21, 1-10.

仲野悦子・後藤永子 2002 異年齢児とのかかわり-いたわりと思いやりの心の育ち- 保育学研究, 40, 72-80.
筆者プロフィール
report_sakai_atsushi.jpg 酒井 厚(山梨大学教育人間科学部准教授)

早稲田大学人間科学部、同大学人間科学研究科満期退学後、2002年に早稲田大学において博士(人間科学)を取得。国立精神・神経センター精神保健研究所を経て、現在は山梨大学教育人間科学部准教授。主著に『対人的信頼感の発達:児童期から青年期へ』(川島書店)、『ダニーディン 子どもの健康と発達に関する長期追跡研究-ニュージーランドの1000人・20年にわたる調査から-』(翻訳,明石書店)、『Interpersonal trust during childhood and adolescence』(共著,Cambridge University Press)などがある。
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