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地域を築き直す:長寿番組「Mister Rogers' Neighborhood」の科学的背景が、子どもたちの「学びのツール」の発達をどう促すか

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1968年、初めて電波に乗って登場したアメリカのテレビ番組司会者フレッド・ロジャースは、そのやさしさと思いやり、そして彼が着ていた数多くのカーディガンとともに今日もなお、皆の記憶に残っています。それだけにとどまらず、ロジャースは子ども向けのテレビに、学習の科学における最新の発見ももたらしました。

児童擁護者として、ライターとして、またロジャースが実際に暮らしていたピッツバーグに住んでいる2人の人間として、私たちは数年にわたり、ロジャースが使用した方法を研究し応用してきました。我々の新著「When you Wonder, You're Learning; Mister Rogers' Enduring Lessons for Raising Creative, Curious, Caring Kid(不思議に思うときは、学んでいるとき:創造性、好奇心、思いやりにあふれる子どもを育てるミスター・ロジャースの不朽のレッスン)」の中で詳しく述べているように、ロジャースは心理学と教育学、児童発達学の研究をテレビ番組の中に巧みに織り混ぜましたが、それは彼が亡くなって何年も経った今でも、そこから学び続けることができます。ロジャースは、トップクラスの心理学者、教育学者、アーティストとともに「Mister Rogers' Neighborhood(ミスター・ロジャースのご近所)」という番組を作ることで、子どもの暮らしを豊かにし、人としての成長を促す要素を番組のあらゆる側面に入れ込みました。

番組の最終回から20年経った今も、「Mister Rogers' Neighborhood」の背景にある科学は、子どもたちの成功に必要不可欠であり続けています。ロジャースが教えてくれた「学びのツール」、その中でも好奇心、想像力、コミュニケーションは、子どもの学業成績からウェル・ビーイング全般にいたるまでのすべてにおいて、後押しになることがわかっています[1]。学びのツールはほぼお金をかけずに発展させることができ、まさに人生に価値をもたせてくれる自己受容、親しく愛に満ちた関係性、周囲の人への深い尊敬にかかっているのです。

こういった学びのツールは、デジタルの時代が進化するにつれ、さらに重要になってくることが証明されています。特筆すべき例として、グーグル社は10,000のデータポイントを用いた長年の分析を通して、会社における最高の上司はプログラミングスキルにもっとも優れている人とは限らないことを発見しました。技術的な専門知識は重要ですが、グーグル社で優れた実績をもつ上司たちは、問題が生じたときに助けを求めに行くことのできる人々でした。話を聞き、質問をし、創造的な解決策を考える手助けをしてくれる人々でした。さまざまなチームと一緒に働き、リードできる人々でした。そして、同僚を気にかけ、仲間として見て、接することができる人々でもありました[2]

こういった意味では、「Mister Rogers' Neighborhood」は現代における学びの形の青写真とも呼ぶことができます。フレッド・ロジャースは、子どもの発達において、愛情を注ぐ大人の存在が何にも勝ることを知っていました。「すべての学び、すべての育児、すべての関係性において、愛情のあるなしがその根底にある」と彼はインタビューで話したことがあります。

科学者たちは今日、ロジャースが正しかったことを理解しています。ワシントン大学が行った長期の研究では、両親や教師が、大人と子どもとの間に強い絆を築くことの大切さを教えられると、子どもにプラスの影響を何十年にもわたってもたらすことがわかりました[3]

ロジャースはまた、学習環境も大切であると知っていました。学ぶためには、子どもたちが安全で、温かく受け入れられていると感じる必要があります。だからこそ、ロジャースはテレビ番組の各回でセーターを着てカメラに向かって直接話しかけました。また、おなじみのルーティンを繰り返し続け、同じ行動をとり、各回の始まりと終わりで同じ歌を歌ったのです。ルーティンを繰り返すことで信頼を築き、信頼が子どもたちをリラックスさせ、学ぶ準備が整うことをロジャースは知っていたからです。

ここでもまた、科学はロジャースが正しいことを証明してくれます。グーグル社の例に戻りますが、同社の内部審査において、安心感に欠けるチーム、つまり自分たちが無力で無価値で同僚から受け入れられていないと感じているチームは、平均して19%の割合で売上目標に届きませんでした。しかし、安心感があり、受け入れられていると感じている人々で構成されているチームは、ほぼ同じ割合で売上目標を超えていました[4]

愛情を注いでくれる大人がいて安心できる学習環境があることで、子どもたちは自分の興味のある疑問について考えることができます。好奇心、創造性、そして「Mister Rogers' Neighborhood」でフレッド・ロジャースが育んだ学びのツールを発展させ始めます。ロジャースがテレビを通して伝えていた科学は、ピッツバーグから果ては日本まで、子どもたちとその家族の力となっています―人間らしくいられるように。これはロジャースが最も大切にし、うまく伝えていたことですね。


筆者プロフィール
グレッグ・ベール
グレーブル財団(The Grable Foundation)理事長。父親でもあり、児童擁護者。その業績は彼にとってのヒーローであるフレッド・ロジャースにインスピレーションを受けている。2007年に立ち上げた、教育者、科学者、アーティストそして創作者のネットワークであるリメイク・ラーニング(Remake Learning)を10年以上にわたって指揮し、国際的な団体へと成長させた。ロジャースが実際に暮らしていたピッツバーグで始動したリメイク・ラーニングは、子どもたちの好奇心をかき立て、創造性に働きかけ、学校、図書館、博物館などにおける正義感と帰属感を育むことで、フォーブスから世界経済フォーラムに至るまで、さまざまなところから注目を集めた。ノートルダム大学およびデューク大学出身、カーロウ大学およびセントビンセントカレッジから名誉学位を授与。ブルッキングス研究所およびフレッド・ロジャース・センター顧問。これまでにバラク・オバマ、リチャード・ブランソン、ディスラプター財団などに、思想的リーダーであり革新者であると言及されている。

ライアン・レゼスキー
ライターであり、科学や教育に関する記事で数々の賞やフェローシップを受賞。ピッツバーグ大学卒業後、ルイジアナ州南部で小学校教諭をしたのち、チャタム大学でノンフィクションライティングを学びMFAを取得。フリーランスのライターとして執筆する雑誌記事は、学校から宇宙旅行、「Mister Rogers’ Neighborhood」まで、あらゆるトピックを取り扱う。また自作の詩や作品がこれまでにいくつかのジャーナルに掲載されている。ペンシルバニア州エリー出身、現在はピッツバーグに妻のジャクリーンと暮らしている。

両氏の新著、When you Wonder, You’re Learning: Mister Rogers’ Enduring Lessons for Raising Creative, Curious, Caring KidsはHachette社から出版されている。詳細はwhenyouwonder.org. にて。
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