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第4回ECEC研究会「世界の保育と日本の保育~遊びの中に学びを探る~」

2015年2月27日掲載
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第4回ECEC研究会を開催

2015年2月8日(日)、チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)主催の第4回ECEC研究会が新宿で開かれました。「世界の保育と日本の保育〜遊びの中に学びを探る〜」というテーマのもと、イタリアやニュージーランド、中国での保育実践の特徴や課題などが日本と比較して紹介されたほか、世界的な幼児教育の状況も分析されました。今回は第一弾として、研究会の概要をお届けします。各講演者の報告内容の詳細は、後日順次掲載していきます。

■実施概要
【日時】  2015年2月8日(日) 13:30~17:00
【場所】  ベルサール西新宿 イベントホール
【主催】  チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)
【共催】  ベネッセ教育総合研究所

■プログラム
第1部 話題提供 各国の保育・幼児教育の紹介

【イタリア:レッジョ・エミリア市】 森 眞理(立教女学院短期大学准教授)講演録
【ニュージーランド】 上垣内 伸子(十文字学園女子大学教授)講演録
【イタリア:ピストイア市】 星 三和子(名古屋芸術大学教授)講演録
【中国:上海市】 周 念麗(中国・華東師範大学教授)講演録
【世界のトレンドから】 北村 友人(東京大学准教授)講演録
第2部 パネルディスカッション 諸外国の保育実践・評価から日本の保育を考える 詳細

第1部 話題提供 各国の保育・幼児教育の紹介
【イタリア:レッジョ・エミリア市】
保育者も地域住民も(または地域のおとなも)子どもと同じ視線に立ち
遊びと学びの一体化をサポート


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最初に登壇した森眞理氏(立教女学院短期大学准教授)は、イタリア北部に位置するレッジョ・エミリア市での実践について講演しました。

まず、同市が「コミュニティーには一人ひとりの子どもを市民として尊重する責任がある」という方針のもと、美術館や博物館の所蔵品に触れたり、廃材を利用して子どもが日常的に様々な芸術の世界を創造・表現する環境を整えていることを紹介。子どもの情緒をはじめ人間性を豊かにすることに、保育者だけでなく街全体で力を合わせていると述べました。

さらに、幼児教育実践では、子どもが保育者とともに栽培した野菜を料理し、食の探究活動を行った「プロジェッタツィオーネ」を挙げ、菜園づくりや収穫、調理、食事といったどの過程でも遊びと学びとが一体化していると強調。これを支えるのは、子どもと同じ視線に立ち、気づき、子どもとともに感動する保育者の姿勢が大きく関与していると分析しました。

また、多民族化による人口増加などにより、地域の気質などが変わってきていることにも言及。優れた幼児教育の伝統をいかに守り、いかに新しくしていくかという課題は、日本の幼児教育と共通すると指摘しました。


【ニュージーランド】
子どもの日常を包括的に記述する「ラーニングストーリー」


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次いで登壇した上垣内伸子氏(十文字学園女子大学教授)は、ニュージーランドの幼児教育をテーマに講演しました。

初めに、園庭での砂場遊び、昆虫や草花を取り入れた遊びといった、自然を生かした活動が同国で盛んに行われていることを報告し、これは日本の幼児教育と似ていると述べました。

続いて、同国の幼児教育のナショナルカリキュラム、テファリキについて詳細に紹介。例えば、「子どもは有能で自信に満ちた学び手である」という教育理念をすべての保育者がいかに共有し実践しているかを、自身や友人たちの視察体験や写真などを通じて具体的に述べました。

さらに、子どもの知識やスキルだけでなく、情緒的な側面での成長をも見取る評価手法として同国で考案された「ラーニングストーリー」にも言及し、子どもの心情や意欲、態度などを包括的に記録していると、その特徴を解説。保育者の保育観や子ども観を言語化し可視化する機会となるほか、公表されることで、子どもや保護者と保育者とのつながりを強める役割も果たしていることを強調し、保育者が自分の保育を考える契機として、日本でも応用してほしいと呼び掛けました。


【イタリア:ピストイア市】
保育者一人ひとりの見取りを全員で共有し合議する体制


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3人目の講演者、星三和子氏(名古屋芸術大学教授)は、イタリア中部に位置するピストイア市での実践について解説しました。

まず、子どもの心の安定や居心地の良さを重視していることを特徴として挙げ、保育者が常に静かに落ち着いた口調で子どもに話し掛けることや、遊びの空間、読書の空間というように機能別に部屋を分け、どこに何があるかを子どもにとって分かりやすいように工夫していることなどを、写真を交えて具体的に紹介しました。

また、保育園や幼児学校が保育者の合議によって独自の年間カリキュラムを作成することで、子どもが互いに主体的にかかわる活動を実現していると力説。例えばグループ活動では、その内容こそ園・学校によって異なるものの、「一人で取り組むより友だちと一緒のほうが楽しい」と、どの子どもも自然に、そして身をもって感じられるような工夫が、大半の園・学校に共通して行われていると述べました。これは、保育者一人ひとりが子どもの表情や行動などを把握するだけでなく、それを互いにしっかり共有し、具体化するための協議にも長けていることの表れであり、日本の幼児教育への示唆に富むと訴えました。


【中国:上海市】
社会生活の変化が幼児教育のあり方に反映


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次いで壇上に上がった周念麗氏(中国・華東師範大学教授)は、中国の幼児教育の現場で、今、行われている遊びについて語りました。

初めに、伝統的に教科学習を重視してきた中国が、近年、幼児期における遊びを通した学びの重要性を認め、2014年には国として遊びを通して子どもの自発性を引き出す方針を打ち出すに至った経緯を、自国や他国の教育研究者の理念を交えて略述しました。

さらに、よく行われている遊びとして、子どもにもなじみの深い社会生活の場所であるスーパーマーケットなどを模した「社会的なごっこ遊び」を挙げ、上海の幼稚園での実践の様子を具体的に紹介しました。また、社会的なごっこ遊びが普及した背景についても解説し、経済成長による社会生活の変化を強く反映した傾向があると考えられると述べました。

一方、農村部では教科学習に偏った幼児教育も見られるとも指摘。ただ、国が幼児教育の質の向上に力を入れ、保育者への全国的な研修・育成を図っているため、都市部と農村部との差は少なくなっていると分析し、遊びを通した学びの普及に意欲を示しました。


【世界のトレンドから】
認知的・非認知的な能力の両側面を包括的に評価することが大切


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北村友人氏(東京大学准教授)は5人目の講演者として登壇し、幼児教育をめぐる政策がどのような傾向にあるかを、国際的な比較を通して見ていきました。

まず、幼児教育を充実させることの重要性をOECDによる調査結果などによって具体的に示してから、幼児教育の質をいかに評価するか、その方法について検討しました。そして子どもの学力や情緒、保育者や保護者の子どもへのかかわり方、教育施設など、さまざまな側面を包括的に見る必要があることを強調し、それを実現するためにユネスコが新たな指標を打ち出していることを紹介しました。

また、近年、日本や韓国、ニュージーランドなどを除く経済的な先進国では、学校教育における学力問題に対する危機感の高まりや、移民の増加、格差の拡大といった社会背景のもと、学校への準備を重視する「就学準備型」の幼児教育が増えていると分析しました。ただし、学力などの認知的な能力の向上にばかり目を向けていては、いわゆる子どもらしい時期を取り上げることになってしまうと警鐘を鳴らし、能力に関する認知的な側面と情緒などの非認知的な側面とをバランス良く見ることが大切だと訴えました。

第2部 パネルディスカッション 諸外国の保育実践・評価から日本の保育を考える
日本の幼児教育を世界に発信しましょう!

個別の講演の後には、5人の講演者に司会の榊原洋一氏(CRN所長・お茶の水女子大学大学院教授)を加えた6人によるパネルディスカッションが行われました。

イタリアのレッジョ・エミリア市、ピストイア市、ニュージーランド、中国それぞれの実践の長所や評価の仕方、日本との比較など、さまざまな論点から意見が交わされました。壇上で異口同音に発言されたのは、子どもを学習面や情緒面など多様な側面から見取ることの重要性、そして、日本の幼児教育が世界の先進的な幼児教育と多くの共通点をもっていることです。「皆さんの実践を、自信をもって世界に発信していきましょう!」榊原氏が最後に会場の保育者にこう呼び掛け、ディスカッションは幕を下ろしました。

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なお、各講演者の報告内容の詳細やパネルディスカッションの詳細については、プログラムのリンクからご覧ください。

編集協力:(有)ペンダコ

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