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【ニュージーランド子育て便り】 第6回 住居と引越し

要旨:

不動産人気が高く人口が集中しているオークランド中心部では、新居を見つけるだけで一苦労である。引越しが決まってから落ち着くまでの1ヶ月は大騒動であった。ようやく決まった新居だが、数年後には子どもの学区を考慮して引越しをすることになるだろう。学校を選ぶ際に参考にされているレポートについても紹介したい。

3月、私たち一家は引越しすることになりました。大家から契約期間変更の申し出があり、今後半年以上は住む意思がないことを伝えると、3週間以内に退去してほしいと通達されてしまいました。あまりに唐突な話だったので、交渉して1ヶ月半ほどの猶予をもらいました。しかし後で調べると、大家側からも入居者側からも期間が定められていない契約を解除するには、3週間の猶予で良いのだそうです。日本ではずいぶん借主の権利が守られていた気がしますが、このような流れで私たちは新居を探すことになりました。

現在、オークランドの家賃は東京都心と同じようなレベルです。もともと家賃が高騰していたそうですが、2011年2月にクライストチャーチで起きた地震の後、多くの人がオークランドに移住したそうでオークランドの家賃は高値安定のようです。(クライストチャーチの地震は日本で私が思っていたよりも、ずっと深い悲しみをNZにもたらしていると感じます。復興を祈るばかりです。)さて、高値安定の不動産ですがオークランド中心部では入居希望者が多く、ほぼ毎回ひとつの物件に複数の申し込みがあり、競争になってしまいます。物件にもよりますが、指定された見学日に行くと何組もの希望者が来ており、各々職業や家さがしの経緯を不動産担当者にアピールしていることが多かったと思います。良い物件になるほど多くの申し込みがあるので、不動産担当者や大家が入居者を選ぶような形になります。 審査基準が明確になっているわけでもないのですが、私たちが見学した様々なアパートでは娘が元気に動き回り、親の私たちが自己アピールも出来ず申し込みをしても断られるということを繰り返してしまいました。ようやく決まった今回のアパートは、見学に行く途中で娘が寝てしまい、アパートについた瞬間に目覚めました。寝起きでボーっとしている娘がよほどおとなしくていい子に見えたらしく、不動産担当者に好印象だったようです。申し込み段階でもいかにここに住みたいかをアピールし、ようやく新居が決定しました。それまで断られ続けていた私たちは、子連れで引越しなど無理なのではないかという不安が頭をかすめていましたので、引越し先が決まり安堵しました。

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ホテルやアパートが立ち並ぶ光景


これでとりあえずは一安心ですが、今度は引越し初日からダニ・ノミ(flea)の被害にあってしまいました。私自身もたくさん刺されて気が滅入りそうでしたが、娘の虫刺されの跡を見たらそうも言っていられません。幸い毎日大掃除を繰り返していたら一週間ほどで被害がなくなりました。デイケア(保育園)の先生方も心配してくれましたし、医者にも連れて行きました。子どもが被害にあったというと、不動産会社も動きが早く、プロの害虫駆除業者を派遣してくれたり、追加掃除などの対策費を全て負担してくれたりしました。この害虫駆除業者はbed bugではなくfleaだと確定してくれました(駆除方法も違うそうです)。普段子どもを見ている保育園の先生や医者などから言われた内容を伝えることで、不動産会社の対応は早まった気がします。その他いろいろな人に助言をもらい、海外での虫刺されには虫の種類や駆除方法が日本と異なる可能性があるのだと知りました。隠さず早めに相談してよかったと思っています。

少し話はとびますが、NZで気に入った家の設備をいくつか紹介します。1つ目は電源プラグ横のスイッチです。プラグを抜かなくても待機電力が節電できます。2つ目は、キッチン家電の主電源の位置です。キッチンの家電は備え付けの物が多いのですが、主電源が上にあり、オーブンなどが子どもの手の届くような場所にあっても、主電源が切れていれば子どもが触っても作動しません。最後にアパートの設備です。多くのオートロックのアパートの入り口のドアは、外から入るときに鍵がいるのは日本と同じですが、内側から出るときにもボタンを押さないとドアが開かないようになっています。このボタンがだいたい5歳くらいの身長にならないと手が届かないくらいの高さについているので、小さな子どもが外に飛び出していくのを防ぐことができます。防犯目的のボタンだと思いますが、小さな子どもと出かける際にもありがたいボタンです。

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主電源が奥にあるので小さな子どもがオーブンやコンロを触っても作動しない


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電源プラグの横にあるスイッチ


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自動ドアの横にあるボタンの例


ようやく落ち着いたわが家ですが、夫は早くも次に住む場所に興味があるようです。オークランド中心部には、世界中から若いカップルや、小さな子連れの家族が集まってきています。しかし家賃も高く広いスペースを確保しにくい中心部でのアパート生活はあくまで仮住まいで、その後子どもの小学校入学の前に郊外に転居する人が多いように感じます。NZの公立の学校は学区の区割りが厳しいので *1、子どもを通わせたい学校の学区へ転居する必要があります。よく学校選択の参考にされるものに、各学校の教育評価レポートがあります *2。レポートの中にはDecile Ratingといって、その学校の学区に住む住民の所得や職業などから社会経済的指標を示す数値があります *3。この指標は1から10で表されます。NZ教育省によれば、この数値は数値の低い学校に多くの補助を出し、数値の高い学校には補助を少なくするという根拠だそうです。補助額の根拠になるだけなので、学力や教育の質とは無関係としています。しかし数値が高い学校が良い学校という一般的なイメージは存在し、数値の高いところに住みたいという人が多いのも事実です。学校を探し中の移民のお母さんが周辺のDecileの値を全て暗記している様子を目の当たりにし、数年後は大変そうだなと思ったものです。その他にもこのレポートには生徒の人種構成比、生徒人数、男女構成比も書かれています。 実際はレポート上で分かることだけではなく、小学校による教育方針も学校規模も雰囲気も各学校による違いは日本以上に大きいようです。私たち家族にも、私たち家族に合う学校を考えて住む場所を選ぶという大きな課題が数年後に迫っているのは確かです。

子どもがいると考えることの多い引越しですが、オークランド中心部では家具付きの家が多いため比較的気楽に引越しできるという良い点もあります。また、家賃が週単位であり、不動産手数料1週間分、敷金3週間分が相場です。日本のように単位が「月」ではないので、初期費用は少なくてすみます。そうは言っても、私はせっかく決まったこの家で少し腰を落ち着かせてすごしたいと願っています。

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アパートの火災報知器を鳴らしてしまうと2,000NZドル課されるのが一般的。2013年6月のレートで、1NZドル=約79円、つまり158,000円!



  • *1: 親が長期の就労ビザ、永住権、NZ国籍以外のビザの場合には、子どもがInternational Studentという枠になります。この場合、学区とは関係なく行きたい学校を選択することができます。ただし、公立の学校でも年間約10,000NZドルの授業料がかかりますし、全ての学校がInternational Studentを受け入れているわけではありません。
  • *2: 教育評価レポートが公表されているサイト(Education Review Office
  • *3: Decileについての詳しい説明(NZ教育省)
筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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