4月後半から5月のはじめにかけて、ノルウェー各地ではキリスト教の堅信礼が行われます。これはキリスト教の通過儀礼のひとつで、乳児のころに洗礼式を受けた者が成長してから改めて信仰告白式を行い、正式にキリスト教信者と認められます。宗教儀礼的には、この儀式を通過することによって成人と認められる、という意味もあるとのことです。我が家の娘たちは洗礼式も受けていませんので堅信礼を受けることはありませんが、周りのお友達にはこの儀礼を経験した子が何人かいます。以前住んでいたスウェーデンからも、息子や娘が堅信礼を受けたという話を聞くようになりました。私自身はキリスト教に関してはあまり詳しくはないのですが、キリスト教の堅信礼に関する話題を取り上げてみようと思います。

信仰に関する統計
堅信礼を受けるのは15歳の男女で、ノルウェーでは2019年に約3万4,500人が堅信礼を受けたそうです。これはノルウェーに住む15歳の子どもの約55パーセントにあたります(資料1)。2020年の統計局の調査(資料2)では16歳以上のノルウェー人のうち、およそ47パーセントが自分はなんらかの宗教に属している、もしくは信仰していると回答しています。この数字が多いのか少ないのかは一概に言えないと思いますが、2000年以降のノルウェー国教会(資料3)に所属する会員の数は、少しずつ減少傾向にあるようです。2021年にはノルウェー国民の約64.9パーセントが会員でしたが、これは前年比でマイナス6.4パーセントになります。この減少の要因のひとつには、16歳以上のノルウェー人で自分は信仰があると回答した47パーセントの人たちのうち、年齢層で見ると一番多いのは67歳以上であり、年齢が下がるにしたがって信仰がある人の人数は減っています(図1参照)。

図1(資料2より) 16歳以上のノルウェー人で宗教に属している、または信仰している人(濃いブルー: 67歳以上、薄いブルー: 45歳から66歳、濃いグリーン: 25歳から44歳、薄いグリーン: 16歳から24歳)
上記の統計から推測できることは、若い人たちのなかで信仰のある人の人数が少ないのに加えて、年齢の高い人たちの人数は年々減っていきますから、全体としてなんらかの宗教を信仰する人の数が減るのは自然の流れかもしれないということです。信仰のある人がノルウェー人全体の約47パーセントであるのに対し、ノルウェー国教会に所属している人は人口の約64.9パーセントであるという結果については、信仰するということと国教会に属することは比例しないということなのかと思います。ノルウェー国教会に所属していても、それは本人の意志ではなく家族がまとまって属しているのかもしれませんし、子どものうちは親の意向で所属しているという人もいるのかもしれません。しかし15歳になり、自分の意志でキリスト教徒として正式に儀式を受ける子どものうち、その先もノルウェー国教会に所属し続ける人は一定数いるのだと思います。15歳になって改めて自分と宗教の関係を見直す機会が与えられるというのも、よい勉強になっているでしょうね。
現代の若者と宗教の関係
ところで単純な疑問ですがノルウェーの若者たちは、自分はキリスト教徒であるという自覚はあるのでしょうか。統計的には、日曜日の礼拝や教会での行事(洗礼・堅信礼・結婚式など)に参加する人数は残念ながら減少してるようです(資料2)。小学生と中学生の娘たちの友人に聞いても、定期的に教会に通っているという話はあまり聞いたことがありません。私の勤務している大学の学生には、堅信礼について話を聞いたことがあります。堅信礼を受けた学生はクラスの中で約半分くらいでした。中にはとても信仰心の強い学生もいますが、どちらかといえばそれは少数派で、ほとんどの学生は自分に深い信仰心があるとは思っていないようです。堅信礼を受けた理由も様々で、まわりが勧めるからとか、家族の習慣だからとか、堅信礼には銀食器や現金などの贈り物がもらえるから、などというあまり信仰とは関係のない理由が多かったです。似たような質問をスウェーデンでもしたことがありますが、ノルウェーの学生と似たような答えでした。日本の様子と比べることは簡単にできないと思いますが、日本人の信仰心もそれほど深くないという印象を受ける一方で、様々な神社・仏閣の行事には参加する人が多いような気がします。ノルウェーでも日本でも、信仰心とは別のところで、宗教的行事が生活の一部に入り込んでいるということでしょう。生活の一部として、子どもたちや若者が宗教とどのような関係性をこの先に築いていくのか、興味深く思います。