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【カナダBC州の子育てレポート】第21回 新型コロナウイルス子どものワクチン接種、ウィズコロナの新たなフェーズへ

要旨:

カナダBC州では新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大の真っただ中に5~11歳向けの新型コロナウイルスワクチン接種が本格化しました。筆者の8歳の娘もこれまでに2回の接種を終えましたが、副反応も腕の痛み程度で済みました。新型コロナウイルス感染症に対し、正しく恐れ、正しく備えたいという思いから踏み切った子どものワクチン接種ですが、BC州では1回目と2回目の接種間隔を8週間としており、その間、またその後に新型コロナウイルスのオミクロン株が現れたこと、変異株へのワクチンの有効性などが少しずつ分かるようになってきて、ワクチンを取り巻く状況も変化しています。今回のレポートでは、子どものワクチン接種の様子、副反応、接種後の思いなどを筆者がまとめました。

キーワード:
5から11歳向けの新型コロナウイルスワクチン、3回目接種、オミクロン株、副反応

2021年11月、カナダのBC州では新型コロナウイルス感染者数が減少し、生活が少し落ち着きを取り戻し始めたかのように見えました。まだオミクロン株が蔓延する以前のことです。 それより少し前の時期に、隣国アメリカでは5歳から11歳の子どもへの新型コロナウイルスワクチン接種が始まりました。接種開始をする前からBC州政府は、10月からオンラインや電話で接種予約のための登録を開始していました。そしてアメリカから遅れること数週間、2021年11月末にカナダでもこの年齢枠へのワクチン接種が始まりました。

BC州で5歳から11歳への新型コロナウイルスワクチン接種が始まる頃には、12歳以上のワクチン接種率は80%を超えていて、2回目の接種から6か月を超過している医療従事者、高齢者、免疫不全の人々の間では、ブースター接種(3回目接種)も進んでいました。校内感染は減少を続けており、デルタ株による感染の波が落ち着いていて、何よりも子どもはオミクロン株に感染しても重症化しないことが多いという点から、保護者の間で子どもにワクチン接種を急がせなければという焦りのようなものは感じられませんでした。

我が家も娘のワクチン接種をすることはすでに決め、登録は11月に済ませていたものの、12月の前半は私の仕事や用事が詰まっていたこと、緊急性を感じていなかったことから、実際に8歳の娘が1回目の接種を終えたのは12月の半ばでした。

5歳から11歳の新型コロナウイルスワクチンは当時ファイザー社のもののみが認可されていて(現在、6~11歳はモデルナ社製も接種可能)、BC州では12歳以上の新型コロナウイルスワクチンの接種は1回目と2回目の間隔を8週間あけるようにと言われています。5歳から11歳の接種も同様です。よって娘の2回目の接種も2月半ばとなりました(注1)

子どものワクチン接種の会場は、成人の大型接種会場内に設けられたキッズスペースにあり、怖いイメージを払拭するために、明るい色紙で飾り付けされていたり、塗り絵などが用意されていました。ちょうど、娘の接種がクリスマス時期と重なったため、クリスマスツリーもあり、担当になった看護師さんは娘にフレンドリーに話しかけ、「見て、クリスマスツリーの飾りキラキラしているでしょう。あのキラキラを見ていてね」と言っている間に注射を終えていました。娘は赤ちゃんの頃からワクチン接種で泣いたことがなく、この日も多少の緊張はありましたが何事もなかったかのように終え、15分間ほど近くで待機しました。接種直後から腕が痛いと訴えましたが、風邪のような症状も、発熱もなく、翌々日には腕の痛みもひいたようでした。待機中に周りを見回してみると、平日だったこともあってか、接種を受けに来ている子どもの数は少なかったです。なかには、お気に入りのぬいぐるみを持ってきた子どもに看護師さんが「まずはぬいぐるみさんにお注射しましょう」とお芝居をしてから子どもの接種をしたり、逆に保護者や看護師さんになだめられてもどうしてもワクチンが受けられずに長時間戸惑って座り込んでいる子どもなども見受けられました。

ワクチン接種の登録が始まった当初、登録率はBC州では40%以下とカナダ国内でも低く、2022年3月末の時点では、1回目の接種を終えた人の割合は50%、2回目まで接種を終えた人の割合は3%未満でした(注2)

2021年12月末、BC州でオミクロン株が流行り出しました。すでに南アフリカやイギリスでの感染状況を分析していた州政府は、ここで感染対策の大きな方針転換を図りました。濃厚接触者の追跡はしない、体調が悪い場合は7日間の自己隔離を自主判断で行う(後に5日間に変更)、検査キットは高齢者や医療従事者、免疫不全の人たちのみに配布する、子どもは隔離なし(発熱などの際は、解熱して24時間経過して解熱剤なしに平熱に戻った場合は登校可能)となりました。オミクロン株の感染力の高さから、追跡することの非合理性が指摘され、また経済にこれ以上のブレーキをかけないために「私たちの誰もが友人や家族の濃厚接触者である」ことを前提に行動をとるように、と州保健局長が発言したのが印象に残りました。会社の従業員は、できる限りリモートワークを行うようにと指示されました。

BC州教育省はオミクロン株の感染増加を受け、学校の冬休みを1週間延長しました。その間、濃厚校内感染も追跡や報告をしないことが発表されました。我が家は少なくとも感染のピークが終わるのを待つことを決め、娘はさらに1週間学校を休み、冬休みが1か月と長期化しました。その後、州政府は州内の感染ピークが1月第1週末だったことを報告しました。

ピークは過ぎても、学校では感染が広まり続けていたようです。これまで頻繁に閲覧していたBC School Covid Tracker(注3)にはまだ感染の報告があったものの、まん延状態を見聞きしているとその数が現実を映し出しているようには全く見えませんでした。そうこうしているうちに、近所の知り合い、クラスメートの家族、日本語学校の家族などの感染を次々と耳にするようになりました。デルタ株のときには感じられなかった感染の輪のようなものが少しずつ狭まって、感染のリスクが身近に迫ってきている感覚がありました。確かに子どもは軽症や無症状が多いようではあったのですが、感染した保護者にはそれなりの症状が出ていて、仕事や家事がままならないというのも聞いていました。日本と異なり、ほとんどの人がみなし感染となり、クリニックへは行けず、またよほどのことがない限り救急外来へも行けません。保健センターのようなところが健康状態をチェックすることもなければ、支援グッズや食料品が自治体から届くこともありません。ナースラインと呼ばれる、電話で看護師や薬剤師と相談ができるシステムは、かけても数時間つながらないパンク状態でした。カナダでは新型コロナウイルスの規制が多くあり、それによって人々は日々の暮らしに不自由を感じてきました。助成金などの補助で助かる部分もありましたが、実際に感染したときのサポートは手厚くなく、自分でなんとかするように言われるというドライな印象を受けました。もともと医療に関しては健康保健料も一般治療費も無料ですが、日本のように手厚くない対応のように感じることが多く、新型コロナウイルスというこれまでに経験のない感染、症状が個々人によって大きく異なる病気に、ほとんどの人が戸惑うばかりだったことは容易に察しがつきます。

州政府の方向転換と学校での感染状況から私たちもいつ感染してもまったくおかしくないと考えるようになりました。そして、娘にも新型コロナウイルスは以前のように罹患したら致死率が高い病気ではなく、まだ気をつけなくてはならないけれども、感染しても多くの人が回復しているということを伝えるようにしました。「〇〇ちゃんがコロナでお休みしていたって言ってた」というようなことを学校から戻ってきて話すようになったからです。「感染することは恐ろしいこと」、「感染した人はルールをきちんと守っていなかったから悪い人」、という負のイメージを払拭したいと母として考えたからです。ですが、子どもたちはこの2年間、学校でマスクや手洗い、消毒、黙食、ソーシャルディスタンスなどのルールを守ってきています。ましてやこちらでは、声高に反ワクチン運動や反マスク運動などが目につく場所で起きていました。そこに日々変化していくウイルスに合わせて「新型コロナウイルスを正しく恐れる」ことに柔軟性をもたせるのはとても難しいと、子どもに伝えながら感じました。大人である私でも、次々と出される規制のみならず、ウイルスの変化に合わせて自分の心構えを変えていくのにとても苦労し続けたのだから、子どもであればなおさらそうではないかと気になりました。

今年2月、娘は2回目のワクチン接種を終えました。接種会場は多くの成人の接種が3回目も含めて終わっていることから小型会場へと変わっていて、それがさらにアットホームな雰囲気を醸し出していました。担当した看護師さんが1回目と同じ人で、娘のことを「とても勇敢なお嬢さん、憶えているわよ」と声かけをしてくれて、なんの問題もなく接種が終わりました。待機場所には大きなホワイトボードがあり、付箋に「怖くなかった」「痛くなかった」「みんなもワクチン接種してね」「ワクチンを打って旅行に行くんだ!」などというコメントを多くの人が残していて、娘と15分の間に一つ一つそれらを読んで楽しみました。なかには「Lean Clean Vaccine Dairy Queen!」(寄りかかって、消毒して、ワクチン受けて、デイリークイーンに行くよ:Dairy Queenはソフトクリームが看板メニューのファーストフード店)という韻を踏んだおもしろい言葉遊びがあり、さっそく私と娘もその足でソフトクリームを買いに走りました。娘は2回目の接種後も、副反応は2日間程度の腕の痛みのみでした。

5月中旬現在、カナダでは第6波がピークアウトし、オミクロン株の流行が落ち着きを見せています。今後は亜種が多く出回るだろうという予測があり、新型コロナウイルスはこれからも変化を続けながら、私たちの暮らしに少なくともしばらくはとどまり続けると言われています。その一方で、マスク着用義務の撤廃、ワクチンカード提示義務の廃止など3月半ばから州政府は次々と規制の緩和を発表しています(注4)。誰かに指示されて抑制され続けた気持ちが一気に晴れたことの現れなのか、「マスクは今後も室内では推奨されています」と入り口に掲げている施設でも、中に入ると誰一人としてマスクを着用している人を見かけないことに、規制緩和にも気持ちが追いついていない私は戸惑いを感じます。

そして、5~11歳のワクチン接種、12歳以上の3回目接種が進んでいく中、日本と同様にもうすでに4回目接種の話が出始めています。同時に5~11歳児向けの新型コロナウイルスワクチンの有効性がデルタ株では90%以上ときわめて高かったものの、オミクロン株では感染防御率が大きく下がるという結果も目にしました(注5)。感染しないためにワクチン接種をしたものの、ウイルスが変異したことで感染は免れなくなり、その代わり重症化は防げることになったこと。子どもへのワクチンはBC州では「推奨」しているけれど(注6)、こちらも感染を防ぐことにはつながらないことがわかってきたこと。2回接種しても半年すると抗体がだいぶ下がることがわかってきたこと。3回接種してもまた4回目が必要になってくるかもしれないこと。変化し続けるウイルスに振り回され、そもそもブースターが必要ならば8週間も接種の間隔をあけることに意味はあったのか、オミクロン株が流行り続ける中で、子どもに接種する必要はあったのか、成人に4回目の接種が必要となった場合、5~11歳へのワクチンでもブースターが必要になるのか、など。こうした疑問への答えは今のところ誰にもわかりません。ここにもまた正しく恐れ、正しく備えることへの難しさがあります。

答えがわからないままウイルスの方に衰えていってほしいというのが私の消極的な結論ですが、それでもしばらくは様子をうかがいながら、自分のわかる範囲で備えつつも、これまでよりも少しずつ元の暮らしに戻す方向で生活をしたいという思いがあります。我が家は大人が3回目接種を終えてたいした副反応もなく、ワクチンそのものに安全性の疑問を感じないという理由から、8歳の娘のワクチン接種に踏み切りました。重症化しないと言われているとはいえ、子どもが感染したら、子どもだけでなく看ている側もつらく、感染してしまったという罪悪感、ワクチンを受けていたらよかったのかという後悔といった精神的負担も思いのほか大きいです。正しく恐れ、正しく備えるということに近づきたい思いからのワクチン接種だったと考えています。

とはいえ、ウイルスの出現から2年以上が過ぎ、その間にあまりにできなかったことが多かったため、いざ一歩もう少し広い世界に踏み出そうとしたときに、物理的にできなかったことから負った心理的ダメージの大きさを強く感じずにはいられません。


筆者プロフィール

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高井マクレーン若菜

群馬県出身。関西圏の大学で日本語および英語の非常勤講師を務める。スコットランド、アイルランド、オーストラリア、ニュージランド、カナダなど様々な国で自転車ツーリングやハイキングなどアクティブな旅をしてきた。2012年秋、それまで15年ほど住んでいた京都からカナダ国ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア市へ、2018年には内陸オカナガン地方へと移住。現在、カナダ翻訳通訳者協会公認翻訳者(英日)[E-J Certified Translator, Society of Translators and Interpreters of British Columbia (STIBC), Canadian Translators, Terminologists and Interpreters Council (CTTIC)]として 細々と通訳、翻訳の仕事をしながら、子育ての楽しさと難しさに心動かされる毎日を過ごしている。

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