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【国際都市ドバイの子育て記 from UAE】 第2回 ドバイの学校事情

前回の連載「移民の街トロントの子育て記 from カナダ」において、日本からカナダに引っ越した時も全く同じことを書きましたが、引っ越しが決まると、現地に入る前から何はさておき、まずは子どもの学校選びに膨大な時間を割きます。外務省やKHDA (人材開発能力庁) *1などのサイトを熟読、ドバイ在住の方のブログや、駐在員のフォーラムなど、あてになるのかならないのかわからない口コミ情報を延々と読んで、ドバイの学校事情を独自に調べ上げます。知り合いのつてでドバイ在住の方とお友達になれば、直接メールをして根ほり葉ほり尋ね、少しでも安心してドバイに上陸できるよう手筈を整えます。日本からカナダに引っ越した時、長女はまだ小学1年生でしたが、今回は小学3年生。下にあと二人控えていますから、慎重に将来を見据えながら学校を決定しなければなりません。

ドバイの学校事情

ドバイには、大きく分けて2種類の学校があります。一つは主に現地の人(エマラティ)が通う公立校で、もう一つは主に外国人が通う私立校です。

現地校は、オイルマネーの恩恵を受け、幼稚園から大学まですべて無償。連邦の予算の25%が教育分野にあてられ、国を挙げて教育に力を入れています。現地校は宗教教育が基本にあるため、小学校から厳然たる男女別学。キャンパスも別、男性の女子校への立ち入りはたとえ保護者であっても基本的に制限されています。英語教育を非常に重視し、小学校から英語は必修、ほぼ毎日英語の授業があるそうです。

私立校には、フランス系、ドイツ系、イラン系、インド系などなんと17種類のカリキュラムに基づく学校があり、その中に日本の教育カリキュラムで授業が行われる日本人学校も含まれています。イスラム教徒であることが大前提の現地校に日本人の駐在員の子どもが通うことはほとんどなく、両親とも日本人の我が家の選択肢としては、私立校のカテゴリーの中から、日本人学校(全日制)を選ぶか、英語圏の国のカリキュラムに基づいたインターナショナル・スクールを選ぶかの二択になります。

ドバイの私立校を統括するKHDAのサイトを見ると、その選択肢の多さに軽くめまいがし、英語のカリキュラムだけでも、アメリカ系、カナダ系、イギリス系、IB(国際バカロレア)、UK/IB、US/IBなど多種多様で、さらに混乱します。めまいを起こしているのは私だけではないようで、KHDAのサイト(https://www.khda.gov.ae/en/howtochoseschool?i=3)には、学校を選択する際に気を付けるべきことが説明してあり、カリキュラム選択は子どもの将来に関わってくるので慎重にしましょうと書かれています。

英語圏の国のカリキュラム

こちらでは、様々な国のカリキュラムに基づく学校があるため、どの学校に入るかによって学年を分ける基準月が異なり、子どもが何年生になるのかが変わってきます。UAEはイギリスの統治下におかれていた時代があったため、ドバイで一番多いのはイギリス本国の教育制度に基づくイギリス系カリキュラムの学校。学年を判断する基準の誕生月は9月で、9月1日生まれの子が学年の最年長となります。学年の数え方は、小学校前はFoundation Stage(FS)1(日本の年中にあたる)、FS2(日本の年長にあたる)、小学校からはYearを使い、Year1、Year2と学年が上がっていきます。

対して、UAEでは少数派、北米のアメリカとカナダのカリキュラム。学年判断の基準は1月で、1月1日生まれの子が学年の最年長となり、学年の数え方は、Kindergarten(KG)1(日本の年中にあたる)、KG2(日本の年長にあたる)、小学校からはGradeを使って、Grade1、Grade2となります。

この学年を分けるための誕生日が非常にやっかいで、4月が基準になる日本のカリキュラムも参戦して、イギリス、アメリカ、日本と三つ巴になるとほぼパニック状態、思考停止しまうこと間違いなしです。まずはさくっと、アメリカにするかイギリスにするかを決めて、アメリカ-日本戦かイギリス-日本戦の一騎打ちにして考えないと話になりません。

IBカリキュラムは、大学進学を目指す子どもたちのための国際的な共通カリキュラムで、「教科横断型」「探求型」とも言われ世界で高く評価されています。年齢別に以下のように分かれます。

プログラム名対象年齢履修期間
PYP Primary Years Programme 初等教育プログラム3~12歳
MYP Middle Years Programme 中等教育プログラム11~16歳
5年間
DP Diploma Programme ディプロマ資格プログラム16~19歳
2年間
出典:文部科学省「国際バカロレアのプログラム」

低学年から、宿題をみんなの前で発表する、パワーポイントや動画でプレゼンテーションをする、グループで一つのプロジェクトを完成させていくなど、より自分で考える力やプレゼンテーションに重きが置かれ、最近日本でも取り入れる学校が徐々に増えてきている注目株です。DP(ディプロマ・プログラム)に合格すれば、国際的に認められる大学入学資格が与えられ、世界の有名大学への受験資格が与えられるというグローバルな生き方を目指す人にぴったりなカリキュラムです。UK/IB、US/IBとは、イギリスあるいはアメリカのカリキュラムをベースにIBカリキュラムが部分的に取り入れられているという、いい所取りのカリキュラムで、多くは最後の2年間のDPが採用され、ディプロマが取得できるようになっています。

学費の問題

インターナショナル・スクールの学費は、学校によって年間60万~200万円と幅が大きく、高学年になるほど学費が上がるのが特徴的です。例えば、ドバイで長い歴史をもつスクールの一つである、エミレーツ・インターナショナルスクールは、Early Year(EY)1(幼稚部の1年目)の年間授業料は24,683AED(約75万円)ですが、Year4になると2倍弱の42,196AED(約126万円)、Year13ではほぼ3倍の73,201AED(約210万円)と年々上がっていきます。ちなみに、ドバイの日本人学校の学費は、1か月1,400AED(4.2万円)、年間約50万円です。安い!と思ったあなた、日本の国立大学の年間授業料は約50万円、小学生に50万円って日本ではセレブの域なのに安いと思えてしまうのは、ドバイマジックにはまっている証拠です。

通学は保護者が車で送り迎えするか、スクールバスを利用。バス代は学校によって多少差がありますが、ドバイの日本人学校の場合、1か月800AED(約2.4万円)、年間28.8万円。3人バスに乗せると、年間86.4万円。子ども3人小学校に6年間通わせると、バス代だけで518万円!!学費もスクールバス代もすべて無料、3人目の出産費用はゼロだった、ある意味超平等社会のカナダから引っ越してきた私たちは、お金がなければ何もできないドバイの格差社会の洗礼をさっそく受けました。

高額な学費のため、駐在員の学校選びは家庭の教育方針以外に、会社がどのくらい学費を補助してくれるかも大きなポイントになります。会社によって負担の割合は様々。日本人学校でも、インターでも学費を全額補助してくれるセレブな会社を「松」とすると、日本人学校、インターナショナル・スクールともに8割負担する太っ腹な会社は「竹」。日本人学校分だけ全額会社負担で、インターナショナル・スクールの学費のうち日本人学校との差額分が自己負担となる庶民派な会社は「梅」。夫の会社は「梅」ランク、と庶民派の我が家。カナダの現地校でようやく英語に慣れてきた長女にもう少し英語を学ばせたいという夢もありましたが、3人兄弟の長女、英語は自分で頑張れという結論に達し、あっさりと日本人学校に軍配があがりました。

ドバイに来た時に、ちょうど日本の年中さんの年齢だった次女はラッキーガール。日本人学校には当時幼稚部がなかったため、小学校入学前に限りインターナショナル・スクール代が会社から全額支給され梅から松へ昇格、まさにシンデレラストーリー。カナダの1年半に加え、ドバイで入学前までの1年半をインターナショナル・スクールで過ごしました。

1歳半でドバイに来た長男は、1年半、私と家で過ごしながらプールと公園を往復する毎日を送った後、3歳からナーサリー、4歳からインターナショナル・スクール(次女とは違う学校)に通いました。息子が4歳(年中)の時に、日本人学校に幼稚部年長クラスが新設されましたが、対象学年でなかったためなんとか逃げ切り、シンデレラ制度を使って入学前まで英語の教育を受けられる予定です。

次回は、ドバイの日本人学校の様子をお届けします。


筆者プロフィール
森中 野枝

都立高校、大学などで中国語の非常勤講師を務めるかたわら、中国語教材の作成にかかわる。
学生時代中国・北京に2度留学したあと、夫の仕事の都合で2004-2008 北京に滞在。2011-2013カナダ・トロント滞在。現在はアラブ首長国連邦ドバイに住んでいる。
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