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【スウェーデン子育て記】 第10回 秋学期にむけて進級の準備

下鳥 美鈴

2016年3月 4日掲載

年が明け、年末までの暖かさとはうってかわって毎日寒い日が続いています。1月のストックホルムはマイナス気温の日が多く、子どもたちは毎日スケートを楽しんでいます。この季節、あちらこちらの広場やスポーツ競技場では、一部に水を張って凍らせ、人工スケート場を一般に無料で開放する場所がたくさんできます。その時期には貸しスケート靴のブースも臨時に設営されるので、大人も子どもも気軽にスケートを楽しんでいます。この先4月ころまで当分、寒さは続きますが、日に日に陽が長くなってくるのが嬉しい毎日です。

春は選択の時期

まだ先の話となりますが、今年の8月から長女は小学校4年生へ進級し、次女は小学校のプレスクールクラス(6歳となる児童を対象とした小学校準備クラス)へ入学します。通常、小学校1年生となるのは、その年に7歳となる児童が対象ですが、特別な理由(身体的問題など)がある場合は1年遅らせて進学したり、1年早めて進学することも可能です。

秋学期(8月下旬から12月中旬)の進学、進級をまえにして、昨年末にコミューン(自治体)から2通のお知らせが届きました。1通は、次女のプレスクールクラスへの進級のお知らせと、どの学校へ進級を希望するか申請してください、というもの。もう1通は長女が4年生へ進級するのにともなって、学校変更の希望があれば申請してください、というものでした。長女が現在通っている小学校の校舎には3年生までの教室しかないため、4年生からは別の校舎に移ります。それを機会に学校の変更を行う生徒も多いようです。

スウェーデンでは学年があがる時期にあわせて、または何か特別な事情ができた時には学校を変更することが日本よりも一般的に行われます。日本では家族の引っ越しにあわせて転校する場合が普通ですが、私の印象ですと、スウェーデンでは引っ越しといった理由以外にも、生徒の当然の権利として、自身の希望に合わせて学校を変える、という感覚があるようです。子どもが通える範囲にあるいくつかの学校のなかから、その生徒の性質に合う学校や、教育方針が合う学校を選んで転校している子どもがたくさんいることに、日本とスウェーデンの教育への考え方の違いを感じました。最初に通った学校が合わなかったり、ほかに自分の考えと合った学校がある場合は転校の意志をあらわすことができ、またそのような選択肢をもつことが子どもの権利であるといった理解のようです。スウェーデンの政治、経済、教育問題に関して調査・分析を行うデモスコープ社(http://www.demoskop.se/)の2015年の調査では、7歳から16歳までの子どもをもつ保護者の8割以上が学校選択の権利はあるべきと考えている傾向が示されています。子どもとはいえ、個人の考えを尊重し、それぞれの子どもに適した教育をする考えなのでしょうね。

学校選択の流れ

このような学校の変更はあくまでも、たくさんの権利の中のひとつであって、在学中の学校でそのまま進級するという希望があれば、選択する必要はありません。学校の変更を希望する場合は、毎年1月から3月にかけてその手続きが行われます。変更の申請期間はそれぞれの学校によっても異なりますが、だいたい1月中旬から2月中旬にかけての1か月間に各家庭が進学を希望する学校の選択をすることになっています。様々なことを考慮したうえで、2月中旬までに希望の学校をインターネットを通じて申請すると、コミューン立学校からは3月中頃くらいまでに、希望する学校の受け入れが可能がどうかの結果が送られてきます。その後、3月末までに再び各家庭が最終決定をし、どの学校へ進学するか連絡をします。この最終決定には、親権をもつ両親の承諾が必要です。仕事などの理由でサインができない場合には、きちんと代理人をたててサインをすることが義務付けられています。

どんな学校があるの?

スウェーデンの小中学校、そして高校には経営主体の異なる2つのタイプの学校があります。コミューンが所有するコミューン立学校(kommunala skolor)と、会社、財団法人、協会などが経営する公営私立学校(fristående skolor)です。公営私立学校は、学校機関を監査する公的機関(Skolinspektionen, http://www.skolinspektionen.se/)から承認を受けている学校です。どちらもコミューンからの補助金によって経営されており、学費を払う必要はありません。

どちらのタイプの学校でも、同等の内容の教育が受けられますが、学校によっていろいろな教育理念を掲げているのが特徴です。とくに公営私立学校では、基本の学習以外にも力を入れて取り組んでいる分野(スポーツや音楽、英語教育など)があり、それを目的に学校を変更する子どもも少なくありません。

スウェーデンの教育委員会にあたる行政機関(Skolverket, http://www.skolverket.se/)の2014年の調査では、スウェーデン国内のすべての小中高校のうち、約8割がコミューン立学校、そして2割が公営私立学校です。公営私立学校の数は全体の割合としては少ないのですが、毎年、公営私立学校を希望する生徒の数は増えてきているとの調査もあります。ストックホルム県内では2015年に公営私立学校の高校へ進学した高校生は全体の約4割(39%)だったそうで、ここ数年で1パーセントずつ希望者数が増加しています。スウェーデン教育委員会の2014年調査では、保護者の学歴を調べており、大学卒業以上の学歴をもつ両親は、子どもの進学先として公営私立学校を選ぶことが多く、高校卒業までの学歴の両親をもつ生徒はコミューン立学校を選ぶという傾向があるそうです。教育に対して熱心なのは日本と変わりがないようですね。

学校を選ぶ基準

何を基準に学校を選ぶのか?なんといっても地理的条件は重要視される点の一つです。共働きの多いスウェーデンでは、夫と妻が役割分担をして保育園や学校への送り迎えをすることが多いため、地理的条件の良い場所を選ぶことが最優先。コミューン経営の保育園や学校側では、定員以上の申し込みがあると自宅から学校までの距離を考慮して児童の受け入れを決めるケースが多いそうです。小学校では、両親と学校側が同意すれば、児童が一人で帰宅する場合もあるので、なるべく学校から自宅までの距離が近い児童が優先されることになります。また、上の学年に兄弟、姉妹がいる児童もその学校への入学が優先されます。ただ公営私立学校の場合は、教育モデルや方針に沿って異なる選抜方法が行われるそうです。

そして学校を選ぶ基準として最も重視されるのは在籍生徒の学力水準です。各学校はそれぞれの教育方針や特徴を公開しているのと同時に、スウェーデンの全国テスト(Nationella prov)で在籍生徒がどのくらいの成績を残しているかということを公開しています。全国テストは、いくつかの科目で小学3年生、6年生、そして中学3年生の時に行われます。その結果は学校を選択する際に参考にすることができ、インターネットで比較できます(http://www.grundskolekvalitet.se/)。また、各学校の生徒の学力水準や学校環境などを比較できるサイトもあります(http://www.utbildningsinfo.se/)。こうした情報公開も、自由な学校選択への一因となっているのではないでしょうか。

今年のコミューン立学校の秋学期は8月18日からです。次女が保育園を卒園するまであと半年となりました。子どもたちの成長があまりに早すぎて、親としては嬉しいやら淋しいやら。どこの学校へ行ったとしても、お友達と楽しい学校生活を送ってくれればいいな、と願っています。

筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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