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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第12回 小学1年生の成績表

シュリットディトリッヒ 桃子

2015年10月16日掲載

要旨:

ベルリンの小学校は二期制をとっていることから、前期と後期の終わりに成績表が発行される。人生で初めての成績表となる前期の成績表は、「顔マーク」を用いた3段階評価で、教師のみならず児童による自己評価も行われたものであった。これに対し、後期の成績表は4ページにも及ぶ、内容もずっと本格的なものとなっており、教師の評価のみが4段階で記載されている。また生活態度などに関するコメントはなく、あくまでも教科に対する評価のみが行われた。息子の通う小学校では、2年生は1年生と合同クラスであるため、今年度も1年生の時と同じフォーマットの成績表になるそうだが、3年生からの形式は保護者が多数決で決めていくそうなので、今後も学校生活や制度から目が離せない。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、小学校、学年度末、成績表、シュリットディトリッヒ桃子

前回の記事では、学年末に行われたサッカークラブのバーベキューパーティについて書きましたが、学年末として忘れてはならないのが成績表!今回は息子が通う小学校の成績表システムについてご紹介したいと思います。

小学1年生前期の成績表

ベルリンの小学校は二期制をとっていることから、息子は前期の終わりと後期の終わりに成績表をもらってきました。一般的なドイツの学校では、「1」が最高評価で、数字が上がるにつれ評価が下がり、「6」が最低評価、という6段階評価が主流のようですが、息子の小学校では、入学してから初めての評価である前期の成績表は、「顔マーク」を用いた3段階評価となっていました。日本でいうと、「大変良くできました」「良くできました」「がんばりましょう」といったところでしょうか。

成績表のタイトルは「私がもうできること」。10項目に分かれており、その内訳は「授業参加度」「アルファベットを書くこと」「ドイツ語の単語を書くこと」「計算」「スポーツ」「宿題」「読書」「クラスメートと協力しているか」「プロジェクト(季節ごとにテーマが変わる学習の時間)」「話者に注目して、集中して勉強すること」となっています。

これらの項目に関して、先生が評価を行っていましたが、驚いたのは、そこには自己評価も含まれていること!下の写真で言うと、左側が「自分の評価」、右側が「先生の評価」となっています(息子の名誉のために、一応、スマイル顔=「大変良くできました」のものを載せています)。まず、児童が自分で各項目に対する評価を行い、その後、先生が評価を記して下さったそうです。

report_09_185_01.jpg
前期の成績表の項目例:「宿題」に関する評価

先生と評価が一致している項目もあれば、本人の評価の方が高かったり、逆に先生の評価の方が高かったりと、双方の評価が異なっている箇所もありました。ただ、初めての成績表とあってか、概ね先生も本人のやる気を損ねないように判定して下さった印象を受けました。いずれにしても、大切なことは、1年生でも前期半年間の学校生活を自分で振り返り、先生の評価との差異を認識し、次の学期に臨む、ということのようです。

ちなみに、この前期の成績表は学校によっては発行していなかったり、していても上記のとは形式が異なるなど、運用は各小学校に委ねられていたようです。

小学1年生後期の成績表

前期の成績表がこのような可愛いマークで記されていたので、「後期の成績表も同様になるのかな?」と思っていましたが、そんな私たちの予想に反して、後期の成績表は4ページにも及ぶ、内容もずっと本格的で詳細なものとなっていました。さらに、今回は児童による自己評価欄もありません。

評価に関しては、顔マークではなく、円グラフのようなもので、到達度を4段階に分けて表記されていました。下図に示すように、左の黒円が最高評価=到達度100%で、その右が到達度75%、右から2番目が50%、一番右が25%と、右に行くほど到達度が25%ずつ下がっていきます。ちなみに、この後期の成績表に関しては、私が知る限りでは、ベルリンの小学校1年生は息子がもらったのと同じフォーマットで評価されていたそうです。

report_09_185_02.jpg
後期の成績表:4段階評価の円グラフ(左から到達度100%,75%, 50%, 25%)

これにより、前期よりもより具体的に各項目の到達度を把握することができましたが、その項目も前期とは比べ物にならない程、細かく分けられています。例えば、最初の大項目であるドイツ語は、以下のような項目に分けられ、評価がなされています。

1.ドイツ語
  • 話すこと、聞くこと
    • 話者に注目して、話を聞くことができるか
    • テーマに沿って議論に参加することができるか
    • 議論についていくことができるか
    • 議論で自分の意見を言うことができるか
    • 自分の言いたいことを、はっきり言うことができるか
  • 読むこと(テキストとメディア*1
    • テキストを読んで、意味を把握することができるか
    • 重要な情報をテキストから抽出することができるか
    • テキストに自分の興味を結びつけることができるか
    • 年齢に応じて、メディアを使うことができるか
  • 書くこと(作文とスペリング)
    • アルファベットを書くことができるか
    • 単語と文を書くことができるか
    • 文章を校正することができるか
    • 単語を正しく書くことができるか
    • スペリングの規則がわかり、使用することができるか
  • 言語とその使用
    • 話すときや書くときに自分の興味を表現しているか
    • 言葉や文の最後を認識しているか
    • 単語の成り立ちのルールを理解しているか
    • 知らない言葉でも、意味を推測することができるか
(筆者による和訳)

このように基本的な読み書きに加え、「人との会話や議論に参加すること」、「自分の意見をはっきり言うこと」、さらに「言語活動をいかに自分の興味に結びつけるか」ということに重点が置かれていることが、コミュニケーションや個人を重んずる当地の文化を反映していて興味深いと思いました。

紙面の都合により詳細は省きますが、この他にも、「算数」「プロジェクト」「図画工作」「音楽」そして「体育」といった教科に関しても、同様に細かな項目が設けられ、円グラフで到達度が示されていました。

もう1点、後期の成績表で目を引いたのが、先生からのコメント。遠い昔、私が日本で小学生だったころには、性格や生活習慣についての記載があったと記憶していたので、同様に息子の学校における生活態度などについての先生の所見を期待していました。しかし、実際にはそのような所見は一切なく、「道徳の授業に参加しました」「放課後、ハンドボールクラブに所属していました」「運動会で優勝しました」など、客観的事実3点の記載のみ!

息子の通うこの学校では、あくまでも「行われた教科」に対する評価を示す「成績表」の発行を行うだけで、それは日本のように生活の記録も同時に行う「通知表」とは異なるものだったのです。これは当地では、「子どもの躾は家庭で行い、学校の教師はあくまでも教科を教えるプロフェッショナル」という考えが強いこととも関係しているかもしれません。

担任の先生によると、2年生は1年生と合同クラスであることから、成績表も1年生の時と同じように、前期はスマイルマーク、後期は4段階評価の成績表となるそう。そして3年生からは、なんと冒頭で説明したような6段階評価の正式な成績表を発行するか、それとも1-2年生と同様の4段階の評価にするか、2年生の後期に保護者が多数決で決めるとのこと!

ベルリンでは小学校は6年生までですが、その後は総合大学進学コースのあるギムナジウム、単科大学および専門学校への進学コースのある実科学校、仕事への即戦力をつけるための職業訓練校と3つの進路に分かれます。その進路選択の際、小学校の成績が大きく関わってくることから、私が知る限りでは、多くの保護者は、3年生からは6段階の本格的な成績表を望んでいる模様です。成績表に関するルールがフレキシブルであることに驚きましたが、このように大切なことであるからこそ、保護者の意見を尊重して決定していくのかもしれません。小学校に入学した初年度は驚きの連続でしたが、今後も学校生活や制度から目が離せません。


    *1 ここでの「メディア」とは書籍、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、コンピュータといったあらゆる媒体のことを指しています。
筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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