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【ニュージーランド子育て便り】 第23回 「教科横断型学習」を体験

村田 佳奈子

2015年2月13日掲載

要旨:

ニュージーランドの小学校では、1つのテーマを多くの科目に関連づけ、長期間かけて学習するという「教科横断型学習」をとる学校が多いようである。春から夏にかけての3ヶ月あまり、娘は保育園で「虫」をテーマに過ごした。ニュージーランドの教科横断型学習と、この保育を通じて「虫」に対する態度が変化した娘の様子を紹介する。

ニュージーランド(以下、NZ)では、「教科横断型学習 *1」を採用している小学校が多いようです。個々の科目を独立して勉強するのではなく、学校全体で1学期間、1つのテーマに沿って、可能な限り全ての科目にそのテーマに関連づけて学習するという学習方法です。例えば、今学期は「海」がテーマであるとします。その場合、リーディングの時間では海に関する読物を読み、ライティングの時間には海に関することを書き、アートの時間では魚の絵を描き、科学では海の生態系を学び、課外学習の行き先も海や水族館にするといった感じで、1学期間、毎日テーマに関連させて学習します。いくつかの小学校を見学した時に、このスタイルで学習をしているという説明を受けました。また、学校のホームページ上でこういった学習スタイルをとっていると説明しているところもあります。

幼児教育では、このスタイルは主流ではありませんが、娘の通う保育園のクラス(2歳半~4歳半の子どもたちが在籍)では、春から夏にかけての3ヶ月あまり、このスタイルで保育活動が行われました *2。もちろん保育園ですから、内容は学習ではありません。多くの遊びやマットタイム *3を1つのテーマに関連させて行ったそうです。テーマは「虫」。春になり、虫も増えてきたこの時期、なめくじ、かたつむり、てんとうむし、蝶、蝶の幼虫、蝶のさなぎ、蜘蛛、蟻、蜂について取り扱ったとのこと。例えば、クラスでは虫を飼い、虫についての絵本を読み、自分の家にいる虫についてみんなの前で話をしたり、身体を動かす際に虫の動きを真似てみたり、糸と遊具を使って蜘蛛が巣を貼るような動きを作ってみたり...。私が迎えにいくと、娘の友だちが駆け寄ってきて、「この蜘蛛、毒があるって知ってた?」と目を輝かせながら、私に蜘蛛の本を見せてくることもありました。また、自分の家の庭にいたなめくじを持ってきた子もいたようで、しばらくクラスでなめくじを飼っていたそうです。その他にも、蝶の幼虫を飼育していたらしく、幼虫はさなぎになり、クラスの全員の前で蝶になって飛び立ったそうです。その蝶は、その後も頻繁にクラスを訪れ、何人かの子どもが手を前に出すと手にとまるといったこともあったそうです。

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春夏は花盛り
(写真は、NZのクリスマスツリーと言われる木。2015年元日に撮影。)

実は、私の影響を受けた娘は、虫が大嫌いでした。それが保育園で虫をとりあげるようになってから、「なめくじは、怖くないよ」、「〇〇のお家の庭になめくじがいるんだって。なめくじがいるって、大きいお庭かもね」などと、なめくじの話を頻繁にするようになっていました。また、「虫は怖くないよ」、「蝶々は1匹なら大丈夫だよ」、「蜘蛛って悪くない虫なんだって」など、ぽつんぽつんと虫に関するポジティブな発言をするようになっていました。家でも蝶々の絵を描くことが増えていました。ある時、描いた絵がどう見ても蛾にしか見えず、「ちょっと蛾みたいだね」と言ってしまった、私。直後、親としてあまり良いコメントではなかったかな...と思いましたが、意外にも娘は蛾と蝶は何が違うのかと聞いてくるので、娘と一緒に蝶々と蛾の特徴を調べたこともありました。今では同じ絵の中に、蛾と蝶を区別しています。蝶と蛾の違いを調べて以降、私と共に虫の特徴を調べる機会も増えました。

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蝶(左)と蛾
*娘の理解では「蝶は身体が細くて色が綺麗、触角はかわいく丸まっている。
蛾は身体が太くて色が暗く触角はギザギザ」とのこと。

個人的には、伝統的な教科独立型の学習にも、独立して基礎をしっかりと学べるという良さがあると考えています。また、設定されたテーマによっても、違う印象をもつようにも思います。しかし、今回の「虫」をテーマとしたこの数ヶ月間は、娘には悪くなかったのかなと思います。闇雲に虫を嫌いとも言わなくなりましたし、前は直視すらできなかった虫に近づいて観察するようになりました。これはNZで暮らす上で、とても大事なのだと思います。アウトドアが盛んで、キャンプ、ビーチ、森林散策と、子どものうちから自然に親しむことの多い国で、いちいち無害な虫を怖がってはいられないのです。また、景色や景観を大事にするためか、窓には網戸のない家がほとんどです。ハエなどが家に入ってもあまり気にせず、窓を開けておけばそのうち出て行くといった感覚のようです(蚊はそれほど入ってきません。といっても、私の本音は、窓には網戸をつけてもらいたいのですが)。ですから、娘がNZで暮らす上で、数ミリの小さい虫にも叫び声をあげていたことを思い起こせば、大変ありがたい変化です。

また、例えば兄弟が何人かいて同じ小学校に通っていたら、違う学年で同じテーマを学習することは楽しそうだな、とも思います。こういった学習方法をとる小学校が多いということは、娘もいずれこのスタイルで勉強することになるでしょう。娘は、その前に、保育園でちょっとした体験ができて良かったと思っています。ついでに、最近、私自身も娘の手前、「虫」で以前ほど騒げなくなり、多少成長したかもしれません。

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雨上がりに カタツムリ


  • *1 教科横断型学習はESD(持続可能な発展のための教育)へのアプローチ法のひとつとしてUNESCOが推進している学習法です。
  • *2 幼児教育は、教師の裁量がとても大きく、個々の教師がかなりの自由度で教育内容を決めているように思います。幼児教育のカリキュラムや運用の実態などは、https://www.blog.crn.or.jp/lab/01/49.html にも記載。
  • *3 歌や絵本の読み聞かせなど、子どもたちが一箇所に集まって過ごす教師主導の時間。
筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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