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【宝宝、ニーハオ!-上海子育て記】 第9回 北京への家族旅行-旧友との再会

中国の休日

こちらに来てみて、中国も意外と休みが多いことを知りました。
その中でも旧正月を祝う春節(1月末~2月初旬)と、国慶節(9月末~10月初旬)はどちらも毎年1週間前後と長く、それに加えて2~3日の連休である清明節(4月下旬)、労働節(5月上旬)、端午節(6月中旬)、中秋節(9月下旬)などがあります。

お正月である春節と、日本でいうお盆の清明節には故郷に帰るのが一般的ですが、その他の連休には、家族で観光地に出かけたり、最近では海外旅行に行く人も増えています。

私たちも長い休みは日本に帰ったり、カナダ、香港に行ったりと海外で過ごしてきましたが、今年は娘が生まれて間もないこともあり、中国国内の旅を楽しむことにしました。
少し前ですが、端午節に中国の首都、北京へ行ってきたのでその時の様子をお伝えします。


北京へ高速鉄道の旅

上海から北京までは約1,400キロメートル、日本で言うと東京から熊本の距離です。おそらくほとんどの人が空路で行くのですが、私たちは陸路で行くことを選びました。日本で言う新幹線は、中国では高速鉄道、通称「高鉄(ガオティエ)」と呼ばれています。
高鉄で行くと言うと、ずいぶん周りの人には驚かれたのですが、駅は空港よりも市内からのアクセスがよいですし、面倒なチェックインの手間もありません。また、国内線のフライトはよく遅延する一方で、高鉄は基本的に定時発着が守られています。
自宅から現地のホテルまでにかかる全体の所要時間を考えると、結局飛行機も高鉄もそう変わりません。それならば、待ち時間が少なく、予定の立てやすい高鉄の方が子ども連れにはいいのではないかと判断しました。

料金は日本の新幹線のグリーン車に相当する一等席が、上海~北京間で片道大人935元(約15,000円、2014年2月現在のレート)、子どもはその半額で、飛行機のエコノミー料金とほぼ同じです *1。広々とした車両にゆったりとしたシート、くつろいでいるうちに5時間はあっという間に過ぎました。子どもたちはちょうどお昼寝時間。親の思惑通り、よく寝てくれて助かりました。

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楽しい高鉄の旅
一等席は無料でジュース、お茶、お水などの飲み物、おつまみが提供されます。


北京到着

北京に降り立つと、友人のヨウビンが迎えに来てくれていました。彼は私と夫の大学の同窓生です。さかのぼること10数年、彼は私費留学生として私たちの大学に来ていました。思えば、当時からすでに中国と特別な縁ができていたのかなと、彼が中国に帰国して以来、7年ぶりの再会に感慨もひとしおでした。


北京798芸術区

私たちはまず初めに、芸術家であるヨウビンも立ち上げに関わったという、北京798芸術区へ行きました。ここは広大な工場跡地に多くのアトリエ、ギャラリー、カフェなどが集まる、現代芸術・商業スペースです。屋内、屋外問わずアート作品があふれ、肩肘張らない自由な雰囲気の中で芸術に触れられます。
エリア全体が広く、半日では回りきれないほどでした。日本には大規模な美術館はたくさんありますが、街中でこういった小さなギャラリーが一か所に集まって、無料で一般に公開している場所はあまり見かけないのではないでしょうか。老若男女、たくさんの人がアートを楽しむために訪れていました。

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AからEまであるエリアの一部
通りにはたくさんのオブジェ


天安門広場

アートの世界から一転、次にテレビでよく見る天安門広場を訪ねました。国家の中枢機関が集まっているエリアということもあって、道路が広く、周辺は非常にきれいに整備されていました。驚いたのは、道路の幅がとてつもなく広いこと、そこに横にも縦にも巨大な建物がいくつもゆったりと鎮座していたことです。
縦に細長く伸びたビルがひしめきあっている上海とは全く違ったスケールに、すっかり圧倒されてしまいました。この迫力、実際に見なければきっと分からなかったでしょう。
警官が絶えずパトロールしていることもあって、雰囲気がどことなく厳粛なのも、さすが大国の首都北京だなと感じ入りました。

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観光客でにぎわう天安門広場
すぐ近くの故宮入口へ

万里の長城

さて、今回の旅のハイライト、万里の長城へは、朝6時に車をチャーターしてもらい、出発しました。道が混むと2時間以上かかると聞いていたのが、早朝だったためか1時間で到着し、連休中はすごい人出だと聞いていたはずが駐車場はまだガラガラ、人もまばらでした。

当初は歩いて登りたいと考えていたのですが、子ども二人連れの私たちを見た運転手さんが「歩いて登るなんて無理だ!ロープウェイに乗った方がいい!」と何度も繰り返すので、不承不承それに従うことにしました。
しかし、後で考えるとこれが大正解。6、7分であっという間に観光スポットに到着した後、長城を散歩し始めると、30分もしないうちに歩いて来た人たちがどっと到着し始めました。この人波の中、急な坂道を登ってくるのは、赤ちゃんを連れ4歳児の手を引いてではさぞ大変だったに違いありません。
見渡す限り緑の山々、遠く続く長城は壮大で美しく、子ども心にも印象に残ったようで、これ以来、息子はテレビで万里の長城が出てくると、「ママ見て!チャイナだよ!」と叫びます。あなたが今いるここもチャイナなんだけどな・・・という言葉を引っ込めて、そうだね、みんなで行ったねと話しています。

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遠く長く続く長城
たくさんの人


歴史と文化の都である北京には、古く、趣のある建物が街中のあちこちに残っていたのが印象的でした。きらびやかなショッピングモールやビルが目立つ上海とは、目に入ってくる街の色そのものが違い、こちらに来て初めて、中国らしい中国の姿を見たような気がしました。


日中間調査「友達にお金を貸しますか?」

ところで少し話は飛びますが、先日発表された、友人間でのお金の貸し借りについての日中韓調査の結果を興味深く読みました *2
日本人の回答は、友人にお金を貸してと頼む人の行動を理解できると答えた人の割合が中韓より少なく、また自分が友人にお金を貸してと言われた際には貸さない、と答えた人の割合が中韓に比べて高い、という結果でした。これは、お金の貸し借りはよくない、というしつけから来ていることは想像できるのですが、では、中国人の回答では借りる人に賛同する意見、自分ならば貸すと答えた割合の高さが際立っているのはなぜでしょうか。

試しにこちらの知り合いに同じ質問をしてみたところ、「もちろん貸す。なんで貸さないの?」と逆に聞かれました。「友達でもお金を貸すのは悩みます」と言うと、「返すって言ってるんでしょ?なら大丈夫だよ!」別の中国人に聞いても全く同じ回答でした。

中国人は用心深く、他人を簡単には信じないと聞くことも少なくないのですが、裏を返せば「友人ならば絶対的に信用する」というところがあるのではないでしょうか。むしろこの点については、私を含め日本人の方が、友人と言っても他人は他人、とやや距離をとる傾向がある気がします。

この調査結果を個人的に非常に面白く感じた理由は、実は私もヨウビンに以前何度かお金を貸したことがあったからです。
その当時、貸してと言われた私がどうしたものかとおろおろして、彼の方がどこか堂々としていたのがずっと不思議だったのです。今それがなぜだったかようやく分かりました。
彼は、私が貸そうか貸すまいかを悩むとは思っていなかったに違いありません。なぜなら、私たちはその時すでに信頼関係のある長い友人だったからです。結局ちゃんとお金は返してくれましたし、この調査結果を見て改めて、あの時は貸してあげてよかったんだとすっきりしました。

北京最後の晩餐の夜、ヨウビンが中国語で彼の友達に話していたのが聞こえてきました。「おなかがすくといつも彼らの家に行ってご飯をごちそうになっていたんだ。当時お金がなかったからね。本当にお世話になった友達なんだ」と。
彼には北京でいろいろとお世話になっただけでなく、毎日おいしい夕食をご馳走になりました。中国人は義理がたく、やはり友人をとても大切にしてくれるのです。

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北京と言えば北京ダック


三泊四日の旅はあっという間に終わり、名残を惜しみながらも私たちは上海への帰途につきました。今度はいつどこで会えるのかな、帰りの高鉄でそんなことを思いながら、昔ヨウビンが言った言葉を思い出していました。
「俺たち何人でもない。俺たち世界人。」
彼は本当は、国際人と言いたかったのでしょうか。いや、きっと世界人で正しいのでしょう。

国境を越えた世界人同士の付き合い、子どもたちにもぜひそんな出会いがたくさんありますように。それは本当に、人生をより楽しく、より面白くしてくれますから。

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ヨウビン、再見(またね)!


  • *1. 飛行機でも安いと700元くらいからあります。新幹線も二等席(普通席)だと料金は片道555元(約9,000円、2014年2月現在のレート)です。
  • *2. 調査内容:
    大学生のCとEは親友です。ある学期、Cは、授業料を支払う締め切りが明日に迫っているのに親からはまだ授業料が送金されていないという事態に直面しました。そこで、Cは他人にお金を借りる以外この問題を解決する方法はないと思いました。Cは悩んだ末、親友のEにお金を借りることにしました。あなたならどうしますか?
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筆者プロフィール
石橋 貴子

チャイルド・リサーチ・ネット日本語版・英語版編集、外資系企業勤務を経て、2011年6月より夫の転勤に伴い上海在住。
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