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【ネットジェネレーションの教育】 第2回 親子インターネット利用調査の日米比較 (2)

加納 寛子 (山形大学基盤教育院 准教授)

2008年4月11日掲載

要旨:

インターネットを利用しているときに親が見ているのか見られていると思っているかに関する親子日米比較をしてみると、親子とも米国より日本の方が、見ている割合も見られていると感じている割合も低かった。日米とも親が見ているほどには、子どもは見られているとは思っていないことがわかった。また日本の親は、履歴をチェックしていないために、子どもが危険にさらされていてもそれに気がつかない親が多いと推察された。日本の親の履歴チェックの割合が低いのはパソコンリテラシーの初心者が多いことに起因するのではないかと考えられたが、リテラシーの低い親ほど、子どものインターネット利用に不安を持ちチェックしている実態がわかった。

 

3.インターネット利用の親の見守り

米国では、親が学校へ子どもを送り届ける光景は珍しくない。むしろ、一人で子どもが外を出歩くことはほとんどなく、親の目の届かないところで遊ばせておいては、養育放棄と見なされ罰せられることにもなりかねない。一方、我が国では、通りを見渡せば、防犯ベルをランドセルに取り付け、スクールバスから降りて一人とぼとぼと家路に向かう子どもの姿が見られる。集団登校のため、待ち合わせ場所らしき路地に一人で立って待っている子どもの姿も見られる。そんな日米の親子の関わり方の違いが、親子インターネット利用調査の日米比較にも顕著に表れた。

 

図6は、インターネットを利用しているときに親が見ているのか見られていると思っているかに関する親子の比較である。親子とも米国より日本の方が、若干見ている割合も見られていると感じている割合も低い。おそらく、日常から常に子どものことは監視していなければいけないという米国の今日的風土と、まだまだ常に子どもを親の監視下においておかなければいけないほど治安が悪化していない日本の風土の違いが、室内での監視にも影響を与えているのだろう。

 

また、親の回答より子どもの回答の方が、米国で12.4%、日本で6.4%低く、日米とも親の心子知らずであることには違いはなく、親が見ているほどには、子どもは見られているとは思っていないことがわかる。 監視と見守りは、表裏一体であり、監視と思えば窮屈になるが、見守りと思えば和み(なごみ)であり、和の心は、本来日本が得意とする文化ではなかったのか。監視しているという意識ではなく、見守っているという意識で、もっと多くの親が子どもたちのインターネット利用の様子を見守っていてほしいと思う。


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図6 「インターネット利用の様子を見ているか」に関する親子の日米比較


百聞は一見にしかずと言うように、何をしているか目視することも重要であるが、表面的な見守りになりかねない。履歴フォルダーをチェックして、親子で情報の共有を測ることも重要だ。宇宙に関するページをよく閲覧しているようであれば、今「宇宙に関心を持っているのだな」など、子どもの興味関心や嗜好を知ることができる。自然環境などを調べている途中に富士山麓の死体サイトを偶然見つけてしまったり、フィルタリングから漏れたアダルトサイトにつながってしまうことがある。見てはいけないとただ禁止するのではなく、なぜそのサイトに行き着いてしまったのか、なぜ見てはいけないのか、子どもの納得のいく説明をして家庭教育を行う必要がある。履歴フォルダーのチェックは、家庭教育を行うための生きた教材なのである。

 

だが、図7に示す履歴チェックの割合を見ると、日米とも親子の認識の違いは大きくないが、米国では4割程度行っているにもかかわらず、日本では1割程度にとどまっている。図4、図5に示した「知らない人からの誘い」「性的な内容を含んだeメールやポップアップ広告」の質問項目において、日本の子どもは米国の子どもより多く、知らない人からの誘いや性的な広告にさらされているが、それを知らない親が米国より日本に多いことにつながっているのではないか。つまり、日本の親は、履歴をチェックしていないために、子どもが危険にさらされていてもそれに気がつかない親が多いと推察される。

 

また、履歴チェックの割合が低い要因は、次項に示すパソコンリテラシーの違いも影響しているのではないか。


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図7 「履歴チェック」に関する親子の日米比較

 


4.パソコンリテラシー

 

図8と図9は、パソコンリテラシーの日米比較のグラフである。図8の親のリテラシーを見ると、米国ではわずか6.1%が初心者だと回答しているに過ぎないが、日本では38.9%の親が初心者だと回答している。その上、上級ユーザとパワーユーザを合わせたパソコンの「熟達者」の親は、米国では50.5%、日本では11.2%である。

 

図9の子どものリテラシーを見ると、米国ではわずか6%が初心者だと回答しているに過ぎないが、日本では66.8%の子どもが初心者だと回答している。また、上級ユーザとパワーユーザを合わせたパソコンの「熟達者」の子どもは、米国では45.5%、日本では5.6%である。

 

日本の親の履歴チェックの割合が低いのはパソコンリテラシーの初心者が多いことに起因するのではないかと考え、「履歴チェック」とパソコンリテラシーに関連があるのかχ2検定によって調べたところ、履歴チェック×親のリテラシーはχ2(3)=14.16(p<.01)、履歴チェック×子のリテラシーはχ2(3)=8.85(p<.05)で、親子とも履歴チェックとリテラシーは有意であった。

 

履歴をチェックするのは親であるので、履歴チェック×親のリテラシーのグラフを図10に示した。これを見ると、履歴チェックとリテラシーには関連があるが、それはリテラシーが高ければチェックするのではなく、その逆で、初心者の方が履歴チェックしている親が多かった。つまり、リテラシーの低い親ほど、子どものインターネット利用に不安を持ちチェックしている実態がわかった。


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図8 親のパソコンリテラシーに関する日米比較

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図9 子どものパソコンリテラシーに関する日米比較

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図10 履歴チェック×親のリテラシー

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