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論文・レポート

【ジャカルタ子育てジャーナル】 第12回 ジャカルタの高校での日本語ボランティア

岸田 佐代子

2017年10月20日掲載

ジャカルタに住んで5年と1ヶ月が経ち、ついに日本へ帰国しました。

長男が4ヶ月になる頃に渡航して以来、子育てに追われる毎日を過ごしてきました。

折角インドネシアにいるのだからと、インドネシア人と関わるボランティア、特に日本語を教えるボランティアに興味をもちつつもどうしたら出来るのか分からないまま月日が経っていたのですが、日本への帰国が決まる頃にようやく実現することとなりました。

インドネシアでは高校の選択科目に日本語があり、沢山の人々が日本語を学んでいます。その日本語や日本文化を教える授業に、ボランティアで参加しました。

今回はジャカルタでの日本語ボランティア体験についてリポートします。

高校と宗教

日本でも宗教系の学校を見かけますが、インドネシアでは教育省が管轄している学校に加え、宗教省が管轄している学校もあります。ボランティア活動を通して、こういった学校も訪問することができました。余談ですが、イスラム教の聖典であるコーランはアラビア語で書かれているため小学校からアラビア語の授業があると聞いたことがあります。小学校からアラビア語とは!難しそうですね。

このような学校にはモスク(イスラム教の礼拝堂)が併設されており、生徒たちはそこでお祈りをします。犠牲祭といわれる、年に一度のイスラムの行事のときには、富める人が貧しい人々に施しをするために牛やヤギを買って皆で分けます。生徒や先生がお金を出し合って牛やヤギを買って、地域の人たちにも提供するそうです。この犠牲祭、ボランティアの私たちも招待してくださったのですが、私は目の前での屠殺を見ることがどうしても出来ないと思い断念しました。参加した人の話によると、静粛な中イベントが進められるのかと思いきや、生徒たちが肉を楽しそうに切ったり運んだりしているのに驚いたそうです。つい目を背けてしまう動物の屠殺ですが、そういった話を聞くと、インドネシアの高校生はあたりまえのこととして受け止めていて、食べることの喜びを知っているのだろうと想像します。スーパーに並んでいるお肉もどこかの食肉処理場で解体されているわけで、それを日本人は、子どもたちだけでなく大人も、知って知らない顔をして食べているわけです。貴重な文化体験ができる犠牲祭に参加しなかったことは少し後悔していますが、やはり怖さが先に立ってしまいます。

私が伺った高校は、女性は全員ヒジャブといわれるスカーフで髪を覆い、訪問者も同じようにスカーフを巻かなければなりませんでした。

なんとなく窮屈な感じなのかなと思っていたら、生徒たちは元気いっぱい、屈託のない笑顔で迎えてくれました。

「みらいプロジェクト」

私が参加したボランティア団体「みらいプロジェクト」は、主に駐在員の妻たちが主体となり活動しています。毎月勉強会を開催して、どのようにインドネシアの高校生などに日本語や日本文化を教えたら良いか、講師を迎えてレクチャーを受けたり、みんなで話し合ったりします。また、毎月情報交換の場を設けたり、ネットを利用して情報を共有したりと、これを駐在員の妻のみなさんが運営しているのかと思うと頭が下がります。

ボランティア活動に参加したい場合、初めに勉強会などに参加して登録をします。その後、実際先輩ボランティアが行っている授業を見学することが出来、見学をしたりアシスタントなどをしながら自分で授業を進める自信をつけ、自分に合った学校を見つけます。驚いたことに、ボランティアスタッフが授業をするのです。例えば授業の前半は学校のインドネシア人の日本語教師が授業をして、後半はボランティアスタッフが担当したりします。

インドネシアらしいなと思ったエピソードがあります。ある職業訓練校に見学でお邪魔した時、インドネシア人の担当教師がなかなかやってきません。ボランティアスタッフが授業を進めること1時間、ごめんなさーいと言いながら先生がようやく登場しました。その後何処かへ行ってしまい、そのまま授業の終わりまで顔を出すことはありませんでした。

ちなみに職業訓練校というのは、技能実習生などとして、日本行きがすでに決まった人たちが通う学校で、実践的な日本語を勉強しているそうです。軍隊のようなピシッとした立ち方やお辞儀、声の出し方が印象的でした。

緊張!初めての高校での日本語授業

もともと日本語教師の仕事に興味をもっていたのですが、機会に恵まれなかったり、他に興味が移ったりと、今まで教えた経験がありませんでした。帰国が決まったらなんだか焦りを感じ、1人で授業を経験してみたいという願望が強くなりました。高校生の日本語や日本文化への生の反応を感じてみたいと思っていました。

まずは、先輩ボランティアの方の授業にアシスタントとして入らせていただきました。

学校に入ってすぐにモスクがあり、お祈りの声が聞こえていました。学校関係者だけでなく、ボランティアスタッフの運転手さんもそこでお祈りをしていました。寒さ知らずのインドネシアらしく食堂が屋外です。また教室に行くのも外を歩いて行きました。

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屋外の食堂

授業の前に職員室でインドネシア人の日本語教師の方と談笑していると、その先生が、「現在アメリカから英語の先生が来ていて、いまから音楽ライブがあります」と言うのです。どういうことだろうと思いながら中庭に付いていくと、大勢の生徒が集まり、その中心にギターを持ったアメリカ人の男性教師と女性教師、そしてインドネシア人の女生徒がマイクを持っています。曲が始まると生徒たちは大盛り上がりです。即席のライブは大成功だったようです。

さて実際の授業ですが、私たちボランティアスタッフが担当したのは12年生といって、日本でいう高校3年生でした。たいていの生徒が平仮名、片仮名を読めて書くことができます。簡単な漢字もわかります。会話は個人差があり、簡単な質問に答えられる生徒もいれば、言葉が出てこない生徒もいました。「あなたの趣味はなんですか?」「私の趣味は~です。」という会話の勉強をしました。私たちも一緒になってロールプレイングの形で色々な人に趣味の質問をしたりされたりして授業を進めました。

インドネシアの高校生は日本の高校生よりも少しあどけない感じがします。挙手も多く、積極的です。ボランティアスタッフのためにさっと長いすを運んで来てくれたり、とても親切でした。

そして、とうとう1人で授業を受け持つ時がやってきました。先輩ボランティアの方が授業に参加出来ない時があり、私は1人で伺うことにしました。正直ドキドキです。

現在、授業で何を学習しているのか、その学校の日本語教師に連絡を取って伺うと「~しませんか?」「~しましょう」を学習しています、と回答がありました。困りました。何をすれば良いのだろう、と。考えあぐねましたがいいアイデアが浮かびません。本職で日本語教師をしている友達に相談してアドバイスをもらい、プリントを作りました。生徒にAグループBグループに分かれてもらい、相手を誘う練習をしてもらうことにしました。

実際の授業はドキドキです。1時間20分ほどある授業のうち、前半は先生が授業を進めると思いきや、いきなり私が準備した練習プリントをするというのです。それほど沢山の設問を準備していなかったので時間が余り、その場で新しい問題を考えたりと余裕がない授業になったことと、私の緊張が伝わったのか、以前アシスタントとして訪問した時よりも挙手が少なく生徒たちがあまり楽しそうではなかったことが残念でした。反省点は沢山ありますが、とても良い経験をさせていただきました。このボランティアを本格的に始めたらハマるなと思いつつ、すでに帰国が近づき本当に残念でした。

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授業中の様子

何名かの生徒たちと先生が11月に日本へ研修旅行に来るそうです。京都観光をする際、私も参加して一緒に周りたいと考えています。生徒たちが日本の景色や人々を見てどんな反応をするのか、今から楽しみです。

イスラム教の彼らは日本での食事をどうするのか伺ったところ、全てハラルフード(イスラム教で許された食べ物)での食事をケータリングするのだそうです。せっかく日本に来るのだから日本の美味しい食べ物を食べてもらいたいところですが、戒律が厳しいイスラム教の人々にはなかなか難しいようです。因みにイスラム教では、豚肉や豚由来の食べ物、アルコールを使ったものは禁止されています。また同じ鶏肉でも、ハラル認証の調理器具を使った鶏肉でないとハラルフードとは言えないそうです。

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授業の後に記念撮影

1年間記事を書かせていただきましたが今回が最終回となります。ジャカルタでの主に子育てについてリポートしてきましたが、お伝えしきれていないことが沢山あると思います。インドネシアは本当に奥が深く、5年住んでも知らないことだらけです。そしてジャカルタはこれからさらに発展を遂げていくことでしょう。いつか子どもたちがもう少し成長してから再訪することができたら素敵だなと考えています。

1年間どうもありがとうございました!Sampai jumpa lagi(またね)!

筆者プロフィール

岸田佐代子(きしださよこ)
メーカー勤務から地方局契約アナウンサーを経て結婚と同時に夫の赴任先のアメリカ・ジョージア州へ転居。
帰国後フリーアナウンサーとしてリポーターや司会の仕事を行い、2012年夫の転勤に伴いインドネシア・ジャカルタへ渡航。現在に至る。
2児の母。趣味はテニス、ヨガ。
愛犬はトイ・プードル。
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