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論文・レポート

【スウェーデン子育て記】 第20回 高学年は変化の連続!

下鳥 美鈴

2017年4月21日掲載

今年もイースターの季節となりました。冬時間から夏時間(サマータイム)に切り替わり、途端に日照時間が長く感じられるようになりました。太陽が顔をだす日が増えてきたのでみんなの気分も明るくなります。4月、5月になると北欧でも花粉症(杉ではありません。白樺の花粉です!)が大流行し始めるので、あちらこちらからクシャミが聞こえてくるのもこの季節の定番です。時折、チラチラと雪が降ることもありますが、春は確実に近づいてきていると感じます。

中学生や高校生にとっては、6月の卒業を控え、次の進路を決める大事な時期です。大人になると1年なんてあっという間のことですが、子どもたちには1年1年が大きな変化の連続ですね。

小学校高学年の娘の変化にもめまぐるしいものがあります。小学校の低学年では、まだまだ保育園の気分が残っているような雰囲気ですが、高学年になってくるとティーンエイジャーのような言動も増えてきます。例えば、女の子がいる家庭にはよくある話題なのかもしれませんが、小学校の高学年になるとオシャレやお化粧に興味をもつ子が増えてくるので、「何歳から化粧を許すか」という議論がスウェーデンのお父さんお母さんの間でもされています。ネットでもたくさんの意見交換がされていますが、このような個人レベルの問題に関しては、学校の先生が意見をしたり、規則を掲げるようなことはしません。これは各家庭の子どもと保護者で話し合う問題なのです。子どもの教育に関して、様々な面で先進的な考え方の人が多いスウェーデンですが、それでも小学生のお化粧には疑問をもつ人が少なくないようです。私も個人的には、まだ10歳くらいでは早すぎるな、と思っているので娘には「化粧なんてまだ全然必要ないよ」と言っています。全体的にはティーンエイジャーとなる13歳頃からのお化粧は許容する意見の人が多いようですが、小学校ではまだまだ、というのが大方の意見のようです。

成績表は小学6年生から

教育システムのなかでも、小学校の高学年からはたくさんの変化があります。娘が小学校に入ってから非常に驚いたことですが、日本の小学校とは大きく異なっていることの一つに、成績表があります。スウェーデンの小学校では1年生から成績表をもらうのではなく、6年生に進級した年の秋学期(8月後半から1月初旬まで)から成績表がもらえるようになります。それより前の学年では、英語やスウェーデン語などの教科で小テストがあったりしますが、それはあくまで先生が生徒の学習進度を測るためのもののようです。さらに3年生、6年生、そして9年生(中学校3年生)では、全国共通試験(Nationella prov)が行われます。この全国共通試験も生徒の学習能力を全国レベルで測ることを目的としており、各学校ごとの偏った評価を調整することを目指しているそうです。このテストの結果をもとに、各学校はその後の学習プランを見直したり、各生徒への指導を改善するための資料にしているとのことです。

6年生からの成績表は秋学期、春学期のそれぞれ終わりに出され、高校への進学時には9年生での最終成績が考慮されることになります。スウェーデンの公立高校にはいるには、高校受験というシステムはありません。一般的に、各コミューンはその地域に住む子どもたちに高等学校レベルの教育を与える義務があります。高校で勉強したい子どもがいれば、その場を与える義務があるのです。しかし、高校からは専門教科が分かれたり、各高校の学習レベルも異なってくることになります。したがって、当然のように人気のある学校が出てくることになるので、希望者の多い学校では選抜が行われることになります。この場合に考慮されるのが9年生の時の最終成績です。この最終成績は各学校の先生が、生徒の学習能力を全国共通試験の結果などを参考にしながらつけるもので、基本的に16の履修教科(特別外国語を入れる場合は17教科)に成績が出されます。この最終成績を希望の高校に提出し、入学ができるか否かがわかる仕組みです。もし希望の高校が無理だったとしても、別の高校には進学できることになります。自分の住むコミューンとは別の場所に希望の高校がある場合にも、もちろん申請はすることができます。しかし選抜となった場合、各コミューンはまずそこに住む子どもを優先にするという方針のようです。

そして高校に進むと、成績は各科目が終了するたびに出されます。多くの教科は幾つかの科目に分かれている場合があるので、その科目ごとの成績がつきます(例えば英語は、文法などの筆記試験と会話などの口頭試験など)。成績表はAからFまでの6段階で評価されており、それぞれの段階には細かい評価規準が設けられています。大きく分けてAからEまでは及第となり、Fは落第となります。

近年になり、このシステムを改正しようとする議論があるようです。6年生からつける成績表の学年を引き下げて、4年生と5年生でも成績表を出そうという提案があり、これを受けて今年、2017年の秋学期から2021年の春学期まで試験的に4年生と5年生にも成績表が出されることになるそうです(スウェーデン教育委員会ホームページ。参照1)。しかし対象となるのは全国すべての小学校ではなく、学校責任者が申請をした学校のみ(最高で100校まで)で実施されることになります。私の娘が通う学校では、この試験が導入されることは無いそうですが、成績表の開始年齢が引き下げられることになるかもしれないということは、今まで低学年ではのんびりしていた勉強も、今後は気を引き締めなくてはいけないということ。子どもも保護者も気持ちの切り替えが必要になるかもしれません。

子どもの権利と、子どもオンブズマン

さらに学校外でも、小学校高学年以上になると社会生活における立場は変化していきます。以前の記事にも少し書きましたが、スウェーデンでは子どもの人権に関しては徹底的に守っていこうという考え方が強く、未成年の子どもに対して色々な権利が与えられています。また、子ども自身がそれを知っておく必要があるという考え方も定着しています。

スウェーデンには、一般市民から行政機関に対する様々な意見をまとめて発言するオンブズマン制度がありますが、その中には子どもの立場から意見をまとめる「子どもオンブズマン」も存在します(参照2)。そのホームページを見ると、子どもが知るべき情報として、以下の「大事な年齢」が挙げられています。これらは保護者に向けたものではなく、子どもたちが自らの権利を知るために書かれたものです。

出生時あなたの両親への育児手当が支給され始めます。
3ヶ月生後3ヶ月までに両親はあなたの名前とミドルネームを申請します。
1歳就学前学校(日本の保育園や幼稚園に当たる)へ通える権利が与えられます。就学前学校は義務ではありませんから、あなたの両親が決定します。
6歳あなたが6歳になる年の秋学期(8月から翌年1月まで)からプレスクールに通うことができます。
7歳あなたが7歳になる年の秋学期から義務教育が始まります。
11歳11歳以上の年齢制限がある映画を観ることができます。
12歳もし両親があなたの苗字を変えることになったら、あなたの同意が必要になります。また、あなたの同意がなければ養子縁組をすることもできません。しかし、12歳以下であっても自分の意見を述べることはできます。
13歳あなたの健康に悪影響を与えることがなく、学校の勉強の妨げにならない程度であれば、働くことができます。13歳以下は働くことはできません。
15歳犯罪を犯した場合は法的に罰せられます。原付バイクに乗ることができます。児童禁止の映画を観ることができます。もしあなたの自転車や原付バイクに安全な装備が付いていれば、10歳以下の児童を乗せて走ることができます。法律では成人が15歳以下の児童と性交渉をもつことは禁止していますが、15歳同士や同年代の同意のもとの性交渉はその範囲内に入りません。
16歳9年生(中学3年生に当たる)を修了すると義務教育は修了します。週40時間の通常労働を行うことができるようになりますが、雇用主による特別な配慮が必要となります。個人で事業を起こすことができます。あなたが稼いだお金は、あなたの自由に使うことができます。軽量オートバイやトラクターの免許を取得することができます。普通自動車の練習運転ができるようになります。引っ越しの手続きを一人ですることができるようになります。あなたの両親への育児手当の給付が終了します。その代わりにあなたは学生手当を貰うことができるようになります。
18歳新成人となります。結婚することができます。選挙権がもらえます。タバコを買ったり、レストランでアルコールを注文したり、ビールを買うことができます。普通自動車免許や重量オートバイの免許を取得することができます。あなたの両親は、あなたへの扶養義務がなくなります。しかしながら、あなたがまだ学校に通っている間(21歳が上限)は扶養することとなります。
(筆者訳)

日本人の私としては、ちょっと親子の間では話しにくい問題(お金のことや性のこと)まで踏み込んで説明してくれているのが正直、有難い気もします。親が子どもを扶養するのは18歳までとか、15歳以上の性交渉の問題などは日常会話ではあまり出てこないかもしれません。もちろん各家庭ごとに決めなくてはいけないこともたくさんあります。しかし社会全体で子どもの権利をどこまで認めているか、ということを知るのは親にとっても子どもにとっても、大事なことではないでしょうか。

我が家の長女は今年で11歳です。彼女はこれからたくさんの変化の中で成長していくことになります。保護者としては、成人となるまでしっかり見守っていくと同時に、子どもの人格と向き合って権利を認めていくという「子離れ」の作業が始まるのだなあ、と少しずつ実感しているところです。



参照1 スウェーデン教育委員会 https://www.skolverket.se
参照2 子どもオンブズマン https://www.barnombudsmannen.se

筆者プロフィール

下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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