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論文・レポート

【離婚家庭の子どもへの支援】 前編 日本の離婚家庭の現状―子どもから見た親の離婚

小田切 紀子(東京国際大学教授)

2012年12月14日掲載

要旨:

離婚家庭の子どもへの調査から、親の離婚を経験した子どもは、社会的にも経済的にも不利な状況におかれ、離婚後も親のいさかいや対立関係が長引けば、子どもへの影響は深刻であることが明らかになった。しかし、離婚後の親の対応によって子どもへの影響は最小限に抑えることができる。日本では離婚後、単独親権のため別居親と子どもの交流が途絶えるケースが多いが、継続した面会交流が子どもの健全な成長に果たす役割は大きい。
はじめに

私は臨床心理学を専門とし、児童福祉学の教員と共に、離婚家庭の親と子どもの自助グループを主宰している。現在は、勤務大学の海外研修でアメリカ・オレゴン州に滞在し、離婚家庭への支援体制について学んでいる。本稿では、離婚家庭の子どもへの支援について、前編「日本の離婚家庭の現状」と後編「アメリカ・オレゴン州の離婚支援制度」に分けて報告する。

1.日本の離婚の現状

日本の離婚件数は、2002年に史上最多(289,836件)を記録し、その後減少が続いている(厚生労働省、2011)。夫婦2.9組のうち1組が離婚しており、同居期間別に見ると同居期間20年以上の熟年離婚が増加傾向にあるが、離婚総数の約60%は同居期間10年未満の離婚である。これは幼い子どもを連れての離婚が増えていることを示している。離婚する夫婦の約60%に未成年の子どもがおり、その子どもの約80%は親権を取得した母親と暮らし、約15%は親権を取得した父親と暮らしている。

2.子どもから見た親の離婚―離婚家庭の子どもの声

子どもは成長過程で、家族の重病、親の死、親からの虐待などの問題に遭遇すると、強いストレスを体験する。親の離婚は、その困難な出来事のひとつである。子どもが親の離婚をどのように感じ、体験しているかについて、子ども(小学生から大学生)への調査結果(小田切、2004;2008)の一部を報告する*1

質問1「離婚家庭で育ったことをどのように感じていますか」

  • お金がなくて嫌だった。
  • 普通の家庭が羨ましかった。
  • 自分の家庭を引け目に感じることが多かった。
  • 友達と比べて惨めな思いをすることが多かった。
  • 親の大変さや人間の醜さ、泥沼の人間関係を見たことで、人を見る目がついた。
  • 結婚や異性に対して深く考えるようになった。

子どもの多くは、自分のことを「離婚家庭の子ども」と位置づけ、自分の家は「普通ではない」と感じていた。離婚したことを友達に打ち明けられず、隠しごとがあるうしろめたさから、あたり障りのない表面的な友達関係しか持てない子どももいた。子どもが親の離婚を隠す背景には、親自身が離婚を「恥ずかしいこと」、「普通ではないこと」と捉え、「人にはあまり言わないように」と子どもに諭したり、離婚の事実を周囲に隠そうとする態度があったりした。また、離婚によって家計が苦しくなり、欲しい物が買ってもらえず、お金に固執している子どももいた。その一方で、対立した人間関係に対処する力や独立心がついたという子どももいた。

親の離婚を恥ずかしいと思っている子どもには、人生で本当に恥ずかしいことは何かを話し合い、例えば、人を騙したり、弱い人を利用したりする方が恥ずかしい生き方である、といったことを伝えるとよいだろう。

質問2「家族や周囲の人に言いたいことがありますか」

  • 離婚すると親戚がいなくなる。父親の方だけじゃなくて母親の方とも会わなくなるのが寂しい。(母親と暮らしている子ども)
  • 子どもが事件を起こしたとき、その子の親が離婚しているだけで、事件の原因がわかったと決めつけないでほしい。
  • お父さんに会ってみたい、私のことをどう思っているのか知りたい。(父親と面会交流のない子ども)
  • 親が離婚していると言うと、周りが引いて後味が悪い。

子どもたちは、親の離婚によって、別居親だけでなく両方の親の祖父母や親戚とも疎遠になり、寂しいと感じていた。また、子どもは離婚や離婚家庭に対する周囲の差別意識や先入観を鋭く感じていた。子どもが思い切って親の離婚を告白しても、聞く側に十分な理解と配慮がないために、子どもは打ち明けたことで傷ついていた。

質問3「親が離婚した子どもへのアドバイスはありますか」

  • 物事がうまくいかなかったとき、期待通りの結果が得られなかったときに、親の離婚のせいにしないでほしい。
  • 親が離婚している友達を見つけて話すといい。
  • 両親が揃っている「普通の家族」にこだわらないでほしい。
  • 親も苦しんでいるのを理解してあげてほしい。
  • 離婚はあなたのせいではない。

子どもたちは、親の離婚後の急な生活の変化に不安や孤独、怒りを感じ、親に心を閉ざしたり、反発したり、投げやりな生活態度になったりしていたことを、後悔したり反省したりしていた。そして、親のせいにしても、自暴自棄な生活を送っても、何も得ることはないことを体験していた。また親への気遣いも語っている。

質問4「離婚した親へのアドバイスはありますか」

  • 別居親と会うことを嫌がらないでほしい。
  • 相手の悪口や不満を言わないでほしい。
  • 子どもを親のメッセンジャーにしないでほしい。
  • 親も趣味や友達を見つけて生活を楽しんでほしい。

この質問への回答では、子どもたちは自分の親に言いたいことを語っていた。子どもは、同居親の母親から「お父さんは、まだお酒を飲んでいるの?」と聞かれると、「うん」といえば父親に悪いし、「飲んでないよ」といえば嘘になるので答えに困るという。また、別居親の父親から「お母さんは、幸せそうか?」と聞かれると、父親が母親の生活はうまくいっていないと思いたがっているのを知っているので、悪いことばかり話してしまい、子どもは母親に申し訳ない気持ちと同時に、両方の親に良い顔をする自分が嫌になるという。どちらの場合も子どもの心に大きな負担をかけていた。

3.離婚するときに親が子どもに配慮するべきこと

子どもたちの声から、離婚家庭の子どもは、社会的にも経済的にも不利な状況におかれ、離婚後も続く親同士のいさかいや対立に心を痛め、生活が不安定になっていることが理解できる。親の対立関係が長引けば、子どもへの影響は深刻であるが、親のサポートによって離婚によるマイナスの影響は抑えることができる。鍵となるのは、親の子どもへの対応である。自助グループの活動の経験などから、子どもが安心して暮らせるように、親が子どもに配慮したいことは次の通りであると考える。

①子どもの前で言い争いをしない

子どもの前で、夫婦が感情をぶつけ合って怒鳴ったり、暴力を振るったりすることは子どもの心に大きな傷を残す。相手を無視する、会話をしないなどの態度も同様である。自分にとって大切な両方の親が、互いに傷つけ合っているのを見るのは辛いことであり、親の怒りが、自分に向けられるのではないかと不安に思う子どもがいる。

②相手への不満や悪口を子どもに言わない

子どもが母親(父親)から父親(母親)の悪口や愚痴を聞かされると、子どもは父親(母親)を好きになれずに父親(母親)とよい関係をもつことができなくなる。また、子どもは両方の親の血を引いているので、自分が否定されたような気持ちになってしまう。

③生活の変化を少なくする

親の離婚によって子どもの生活は大きく変化し、子どもはそれに適応しなければならない。子どもが早く新しい生活に慣れ、安定した気持ちで暮らせるように、1日の生活の流れや生活習慣はできる限り変えないことが大切である。

④面会交流を保障する

別れた配偶者と子どものことで連絡を取るのは煩わしいと感じる人は多いが、面会交流は子どもが別居親と会う権利であり、子どもが望む面会交流は、自分の生活ペースを崩さずに、両方の親とつながりを持ち続けることである(小田切、2008;2009;2010)。調査によると、子どもは面会交流によって、別居親は一緒に暮らしていなくても自分のことを大切に思い愛してくれていることを実感できていた。他方、子どもが別居親と会えないと、自分は愛されていない、別居親にとって価値のない人間だと感じ、自尊心が傷つき自己評価が低くなった。

4.面会交流の重要性

日本は離婚後、単独親権のため親権を持たない親(父親が大半)と子どもとの交流が途絶えるケースが増加している。面会交流の紛争は、年間6200件以上で(最高裁判所、2010)、離婚によって親子関係が阻害される問題が急増している。

面会交流は、親と子ども双方の権利であるが、究極的には子どもが親を知る権利である。 自分の親を知らないということは、思春期の子どもにとって苦しみや葛藤になりうる。子どもは、面会交流を通して、第一に、別居親は離れて暮らしていても自分のことを愛しく思っていることを理解する。第二に、青年期の発達課題である親離れが促進される。たとえば子どもが母親と暮らし、父親と会えない場合、両方の親と心理的・物理的に等しい距離がとれないため好ましい親離れは難しい。第三に、青年期のもう一つの発達課題であるアイデンティティを確立する。両方の親を知ることを通して自分のルーツを知りアイデンティティの確立が可能になる。

面会交流で大切なことは、第一に、子ども主導で行われることである。子どもが幼い時期は、親がスケジュールを決める親主導型になるが、子どもの意思を尊重することが大切である。しかし、別居親に対する子どもの意向を把握することは非常に難しく、別居親との面会交流が継続して行われ、同居親への依存心理が少なくなってはじめて、子どもは自分の意思を親に伝えられるようになる。子どもが「(別居親と)会いたくない」といった場合、同居親から否定的なことを吹き込まれたからではないか、あるいは片親疎外症候群(Parental Alienation Syndrome)*2ではないかと指摘されることがある(J.Kelly & J.Johnston、2001;棚瀬、2010;Richard、2010)。また、子どもの発言を理由に面会交流が中断されるケースが多いが、虐待などの深刻な問題がない限り、子どもを励まし、面会交流を続けさせることも必要である。

第二に、子どもが面会交流の前後に不機嫌になったり拒んだりしても、親は長期的視点に立って子どもを見守る姿勢が大事である。とくに思春期は、子どもは自分から別居親にかかわろうとしないことが多いが、別居親との連絡手段を確保していることの意味は大きい。


  • *1 筆者らは、小学校高学年から大学生26人を対象に2000年-2002年と2006年-2007年に1時間半の半構造化面接調査を実施した。質問内容は、「親の離婚を離婚直後と現在、どのように受け止めているか」、「親から離婚の理由について話があったか」、「別居親との交流はあるか」など12項目である。
  • *2 片親疎外症候群とは、両親の離婚や別居などにより、子どもを監護している親(監護親)が、もう一方の親(非監護親)に対する誹謗や中傷、悪口などマイナスなイメージを子どもに吹き込むことでマインドコントロールや洗脳を行い、子どもを他方の親から引き離し、正当な理由なく子どもに片方の親との関係を喪失させる状況を指す。この結果、子どもには様々な情緒的問題、対人関係の問題などが生じ、長年にわたって悪影響を与えると言われ、引き離しを企てている親の行為は、子どもの情緒面への虐待であると指摘されている。

引用文献

  • J.Kelly & J. Johnston 2001 The alienated child : A reformulation of parental alienation syndrome Family Court Review Vol.139(3)
  • 厚生労働省 2011 平成23年人口動態統計推計
  • 小田切紀子 2004 離婚を乗り越える ブレーン出版
  • 小田切紀子 2008 離婚家庭の子どもの自立と自立支援 平成18-19年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書
  • 小田切紀子 2009 子どもから見た面会交流 自由と正義、Vol.60 日本弁護士連合会
  • 小田切紀子 2010 離婚―前を向いて歩き続けるために サイエンス社
  • Richard A. Warshak 2010 Divorce Poison (青木聡訳 2012 離婚毒 誠心書房)
  • 最高裁判所 2010 司法統計年報
  • 棚瀬一代 2010 離婚で壊れる子どもたち 光文社新書

筆者プロフィール

Noriko_Odagiri.jpg 小田切 紀子(東京国際大学教授)

東京都立大学人文科学研究科修了、心理学博士、臨床心理士。大学院時代に国立精神・神経センターで家族に関する縦断研究に参加したことがきっかけで夫婦関係および夫婦関係が子どもに与える影響に関心を持ち、離婚に関する研究を始める。同僚と離婚家庭の親と子どもの自助グループを主宰する一方、日本に根強く存在する離婚への偏見意識の形成要因について調査研究をしている。最近は、離婚後の面会交流の問題に取り組み、現在はアメリカ・オレゴン州で離婚家庭の支援体制を勉強中である。
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