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【スウェーデン子育て記】第36回 スウェーデンからノルウェーへ転居

下鳥 美鈴

2020年11月 6日掲載

これまで数年間、スウェーデンでの子育て記をCRNウェブサイト上にて書かせていただきましたが、今回はとうとう最終回です! 娘二人が、保育園の活動を通して成長する様子や、日本とは違った小学校生活のなかで起こったことなどを、あれこれ綴らせていただきました。普段はあまり気にも留めなかったことを、皆さんにお伝えするため改めて調べなおし、文章にまとめたりする作業をしてきました。このことにより、私自身も新しい発見をすることばかりでした。本当に良い経験をさせていただきました。とはいえ、まだ子育てが終わったわけではありません。子育てが一段落するのは、子どもたちが一応成人と認められる18歳になってから(のはず)。まだそれまでは、しばらく時間がかかります。「スウェーデン子育て記」は、私事ながら仕事の都合により隣国ノルウェーへ転居しましたので、「ノルウェー子育て記」と名を変えて、続けさせていただくことになりました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。今回はスウェーデンでの子育てに一区切りつくということで、国をまたいで学校を代わるときの過程などをお伝えしようと思います。

転校を前に

私自身は転校をした経験が無いので想像することしかできませんが、いままで慣れ親しんだ学校や地域を離れるのは、子どもにとって非常に大きな試練であるだろうと思います。今はインターネットの発達のおかげで、いつでも画面を通して遠くの友だちと会話ができたりしますが、子どもたちにとっては、同じ時間を共有し同じ場所で遊ぶことが一番楽しいはずだと思います。
引っ越しのまえに新しく住む場所を見ておこうと思い、ノルウェーに旅行に行ったときには「きれいな町だね!」と言っていた子どもたちも、引っ越しが現実的になってその日が近づいてくると、「本当に引っ越すの?」と聞いてきました。やはり少しずつ不安な気持ちが出てきた様子でした。
親の都合で環境を変えざるを得ない子どもたちに対して、親としては申し訳ない気持ちを抱えつつ、いままでお世話になった学校へ転校のお知らせをしました。スウェーデンの学校が夏休みに入る前には、学校のお友達が娘たちのお別れ会をしてくれたり、夏休みになってからは、お友達同士で夜遅くまで毎日遊んでいました。引っ越しをする前の日には、仲の良い近所の幼なじみと、とうとう大泣きしてお別れをしました。ノルウェーは隣の国といっても距離にしたら大したことないな、と大人は思いますが、自分も子どものころはちょっと電車に乗っただけでも遠いと感じたものですので、娘たちにとっては一大事なのでしょう。また休みになったら戻るからね、と約束して別れました。

幸いに、というのも語弊があるかもしれませんが、国外に引っ越すとはいえスウェーデン語とノルウェー語は同じ語族の言語ですし、お互いの言語で簡単なコミュニケーションは可能なほど似ています。具体的には、両言語の文法はほとんど同じと言えます。しかし物の名前や、動詞、形容詞などの語彙が異なっているものがあります。それは学習していくうちに少しずつ身に着けていけるかと思います。つまり日常会話レベルでは、コミュニケーションに大きな問題は無さそうです。ただ難しいのは、ノルウェーにはNynorsk(ニーノシュク)とBokmål(ブークモール)という2種類の書き言葉があって、これらはとても似通ってはいるのですが、正しく書き分けるようになるのはかなり学習が必要になりそうです。それに加え、ノルウェーには多くの方言が存在しているので地域によっては理解が難しくなるかもしれません。とはいえ、大きな都市で話されているノルウェー語については理解ができますし、生活スタイルもほぼ変わることはなく、街で見かける店もスウェーデンにあるような見慣れたお店がほとんど。食べ物は言うまでもなく、日常生活はほぼ変わりませんので、カルチャーショックを受けるかもしれないという心配はありませんでした。しかし親として子どもの不安はなるべく取り除き、サポートしようと思いました。私にとっても、家族を連れて新しい環境に馴染むための挑戦が始まりました。

引っ越しを前に、まずは必要な手続きの下調べから始めました。北欧理事会に属する5カ国3地域(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド、そしてグリーンランド、フェロー諸島、オーランド諸島)のあいだでは、これらの国の国籍をもつ人たちは引っ越しなどの移動は比較的自由にできるようになっています(https://www.norden.org/sv)。税金や健康保険の手続き等は、もちろん個人で申請しなくてはいけないのですが、仕事や学業のためにこれらの国の間を移動する人たちにはとても便利な仕組みになっています。家族の引っ越しに伴って子どもが転校する場合の手続きも非常に簡素でした。まず最初に、スウェーデンの学校が属するコミューン(自治体)に転校を知らせます。そして転校先のノルウェーの学校名をお知らせして、保護者が転校に合意しているという確認書にサインします。これでスウェーデン側の手続きは完了です。しかし、ノルウェーの学校関係の知識はほとんどなかったので、引っ越し先のコミューンのホームページなどでいろいろと調べてみました。

転校の手続きの過程としては、新しい引っ越し先の住所が決まったら、その地域のコミューンが管轄する学校へ保護者が連絡をします。それぞれの学校は担当する学区域が決まっているので、私は地図を見ながら一番近い学校へ連絡をしてみました。娘たちはまだノルウェーの個人識別番号を持っていなかったのですが、当面はスウェーデンのもので代用できるようだったので、転校登録をしてもらいました。事前に校長先生と話をしたときには、子どもたちにノルウェー語のサポートは必要であるか、とか、選択科目は何にしたいか、というようなことを聞かれました。そのほか、国の医療管理システムが違うため、子どもたちの今までの病歴や予防接種の記録などは、スウェーデンの学校から記録をもらってくるように言われました。

手続きの過程で戸惑ったことがありました。スウェーデンでは保育園を卒園した後に小学校に入学する前の1年間をプレスクールで過ごします。つまり保育園の後に0年生があり、それを終えてから小学校1年生が始まって、中学3年生(9年生)で義務教育が終わります。しかし、ノルウェーではプレスクールの1年間(0年生)がなく、スウェーデンの0年生が小学校1年生になるため、中学3年生は10年生ということになります。娘たちは、秋学期からスウェーデンで始める予定であった学年よりも数字が一つ上の学年に入ることになるので、ちょっと違和感を感じたようです。

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コロナ禍の影響もあり、引っ越しに伴う移動にはいろいろありましたが、それは次回にお伝えしようと思います。まずは子どもたちの転校手続きもすみ、いよいよノルウェーでの生活が始まります!


筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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