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【双子のいる生活】 第17回 職場復帰編 双子を抱えて復職して

要旨:

双子を抱え復職して1年。双子の看病や通院のため、復職後の1年間に取った有給休暇は22日、看護休暇は4日。仕事の都合で休めない時は、病(後)児保育所に双子を預けた。利用日数は1年間でのべ36日。子ども達の体調が悪い時をどうやって乗り切ったかについて、経験から紹介する。また仕事復帰後は、子育てとの両立で時間的制約を背負うため、以前よりも仕事の効率化を心がけるようになった。事務職である筆者がどのように仕事の効率化を図ったか、両立のためにどのような周囲のサポートを得たか、なども紹介する。そして、育児と家事と仕事に追われて、先が見えなくなったりしているワーキングマザーの皆さんへのメッセージもお伝えする。

春。新年度が始まりました。双子を抱えて復職して、1年が経ちました。双子の娘たちは2歳、長男は8歳(小学校3年生)になりました。「育児と仕事の両立は、本当にできるのだろうか。」「私はやっていけるのだろうか。」不安でいっぱいでしたが、「やってみてから考えよう」と思い、復職。社内外のワーキング双子ママとメールなどで励まし合いながら、なんとか、両立生活のリズムがととのってきました。



復職初年度の1年、どのくらい休んだか


のっけから、ヘビーなテーマですみません。でも、これは私が復職した時、一番気になったことでした。双子の看病や通院のため、復職後の1年間に私が取った有給休暇は22日、看護休暇は4日でした。12ヶ月のうち、実働日は約20日ですから、1ヶ月分は、会社に行けなかったということになります。職場の温かな励ましと配慮、不安定な私を信頼して仕事を任せてくれた上司へは感謝してもしつくせません。

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グラフは、私が子ども達や自分自身の体調不良のために取った休みの月別推移です。保育園に入園後の3ヶ月は、「病気の洗礼期」です。双子は、同時に、また交代で、頻繁に熱を出しました。二人とも肺炎になり、5月には揃って2週間入院しました。その後も、溶連菌感染症、ヘルパンギーナ、手足口病、と次々と感染症にかかりました。
 
夏を過ぎると、体調も安定し、保育園に毎日通えるようになりました。私の方も、復職後の生活のペースができ、ひと山越えた感じがしました。
 
そして、「保育園の初めての冬」を迎え、双子はそろってノロウィルスとRSウィルスに感染し、病院通いが続きました。RSウィルスが肺炎を引き起こし、1月には再び、双子は2週間、入院しました。
 
ノロウィルス、ロタウィルスなどの胃腸系の風邪や、インフルエンザ、RSウィルスなどは、感染力も症状も強烈で、復職して疲れの出てきた親も直撃します。私もノロウィルスは子どもから感染し、嘔吐と下痢に苦しみました。扁桃腺炎になり、自分の体調不良のために休む日もありました。
 
ベネッセ次世代育成研究所で実施した「第1回妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査」では、1歳の子どもを持つ共働きの妻(99人)に、子どもの病気などで会社を休んだり、遅刻などをした頻度を聞いています。「月に1~2回」と答える割合が最も多く28.3%、ついで「2~3ヶ月に一回程度」が26.3%です。「月に1~2回」休むとすると、年間では12~24日休むことになります。双子でなくても、子どもが小さいうちは、そのくらい、会社を休む人も多いようです。
 
私は、核家族ということもあり、自分が会社を休める時は、自分が休んで看病しました。仕事の都合で休めない時は、病(後)児保育所に双子を預けました。1年間で、病(後)児保育所に双子を預けた日数はのべ36日にもなりました。

子ども達の体調が悪い時をどうやって乗り切ったか、少し紹介させてください。

≪健康管理≫
1. 無理をさせない生活リズム、そのリズムを出来るだけ崩さないようにします。
2. 保育園にお願いをし、子ども達の体調が怪しい時は、早めに職場に連絡をもらい、翌日以降の対応(看病・仕事)を段取りします。
3. 双子の体調や病状を記録する小さなノートを用意し、それぞれの病状・熱・かかった病院名・投薬の有無を記録するようにします。(病院に行く時は持参し、医師に見せると、子どもをとり間違えることなく、スムーズに診察してくれます。)

≪仕事との両立≫
4. 夫と痛み分けをしました。夫が休めそうな日・時間を交渉。(午前は夫が休んで看病し、午後は私が交代した日もありました。)
5. 病(後)児保育所に登録しておきます(自治体に対して行うところが多い。できれば見学して、持ち物リストなどももらっておくと安心です)。病(後)児保育所がない場合は、シッターなど、病気の時も預けられる先を見つけておくことが大事です。(子どもが元気な時に、お試しで利用しておくと、いざという時、安心です。子どもとの相性や馴れもあります。子どものお気に入りシッターさんが見つかれば、次回から指名することもできます。)
6. かかりつけ医は複数持ち、診療日・診療時間帯を網羅しておく。小児科、耳鼻科、救急は、連絡先と診察券番号を携帯や手帳に控えおきましょう。
7. 仕事を絶対に休めない日は、万が一、子どもが発病した時に備えて、預かってくれる人を探しておきました。
8. 上司には、子どもの体調の推移を伝え、お休みを頂く時は、仕事のリカバリープランも一緒に伝えました。


絶対に仕事を休めない日の前夜に、子どもが熱を出した時の絶望感。職場に連絡をする時の、罪悪感や焦燥感。子ども達を引き連れて、病院に通う日々の疲れ。熱があって苦しそうな子どもを、預けて仕事に向かう時の、子どもに対する罪悪感と申し訳なさ。出口の見えないトンネルの中にいるような思いは、多胎児を持って働く親は、より頻繁に、強く感じることでしょう。

でも、一人ではありません。たくさんの双子ママ・パパが、その困難を乗り越えて、社会で活躍されています。一人で苦しまず、双子ワーキングママの友達を作り、励ましあってください。先輩双子ワーキングママの話を聞いてください。

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保育園に入園して一ヶ月。せっかく保育園には慣れたのに、肺炎にかかって入院。
5月はたった1日しか、保育園に行けませんでした。



限られた時間で仕事のクオリティーをあげる


私は、ワーキングママ歴7.5年。子どもが一人だけだった時は、家事や育児の量も現在に比べて少なく、子どもを預けることも気軽にできたので、復職して半年で時短勤務をやめてフルタイム勤務に戻し、残業や出張も積極的にこなしていました。

現在は、学童保育所と保育園の2ヶ所へ18時までに迎えに行かないといけないことから、職場の時短勤務制度を利用しています。通常、一日7時間働くところ、5時間の勤務です。もし、仕事が5時間で終わらなかったとしても、帰宅した後は山のような家事と育児があり、子どもが全員寝るまでは、持ち帰った仕事に取り組む時間はありません。

このような時間的制約を背負い、必然的に、仕事の効率化を心がけるようになりました。事務職である私の一例ですが、ご紹介させて頂ければと思います。

1. スケジューリング
仕事だけでなく、長男の小学校の行事や習いごと、双子の保育園の行事や予防接種、通院など、ライフもワークも全て1冊の手帳で管理し、モレのないようにしています。
朝の通勤電車の中で、手帳を広げ、今日取り組む仕事を確認。重要順に段どりをしておき、出社と同時にフルスタートで取り組みます。帰りの電車では、今日の仕事を振り返り、取り組めなかったこと、し残したことを、洗い出して、翌日以降の予定を組み直します。
職場では、アウトルックの予定表があり、上司や同僚は参照できるようになっています。その予定表にも、具体的に取り組む仕事や子どもの通院などでの計画休暇などの予定を入れ、私がいつ、どこで何をしているか、オープンにしています。

2. 仕事のオープン化
職場では、部門内のメンバーがアクセスできるサーバーがあります。私は、担当業務で作成した資料の電子データを、そのサーバーに保管しています。保管方法も、分かりやすいように業務ごとのフォルダを作って、データを保管しています。紙で保管している資料も、不要な物は破棄し、分かりやすくファイリングし、できるだけ机の上には資料を置かないようにしています。
こうしておくと、子どもの発熱などで急に仕事を休まねばならず、上司や同僚に仕事を代行して頂かないといけない時など、資料の場所が分かりやすく、電話やメールなどで説明がしやすいからです。

3. 仕事の効率化
限られた時間では、仕事のプロセスなども常に効率化していきます。仕事の仕方を見直し、その時間とコストを見直し、改善を提案します。

4. いつでも、どこでも、仕事はできます。
仕事は会社の机の上でないとできないもの? いいえ、そうではありません。頭は、いつでも、どこでも、使えます。私の仕事は調査・研究職。なぜか、子どもを寝かしつけている時や、授乳している時に、分析の切り口やレポートの見出しが浮かびます。枕もとにメモを置いて、忘れないように書いたこともあります。家事や育児に追われていても、隙間時間は案外、見つけられます。


仕事に向かう心意気は、自分で限界を設定しないこと、そして、感謝とGIVEの気持ちを忘れずに。「自分は双子がいるから」「自分は時短勤務者だから」と、自ら、仕事に線を引かないで、まずは、手帳を見ながら、「自分にできる方法」を前向きに考えましょう。
 
上司や同僚、助けてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れずに。自分ができること、役に立つことがあれば、自ら手を挙げましょう。
 
復職し、時間的制約や、子どもの病気などで、以前の自分と同じように仕事ができない、仕事を任せてもらえないと悩むワーキングママは多いです。でも、復職初年度の状態がずっと続くわけではありません。まずは、育児と仕事の両立の基盤を調えることを目標に、自分のキャパシティーを広げていければよいと思います。目の前の一歩を飛ばして先に行くことはできないと思います。


家事・育児と仕事の両立

1. お助け人を確保。一人で全てを抱え込まないこと。育児と仕事はずっと続きます。すべてを自分でこなそうとすると、回って行かなくなります。

(1) ファミリーサポート(3人):
足を向けては寝られない、お世話になりっぱなしの方々です。出張や残業、通院の時など、子ども達をお願いしています。

(2) ベビーシッター(3人):
ファミリーサポートの方々の予定がつかない時や、預ける時間が夜間で遅い時、子どもが病気の時などのピンチヒッターとしてお願いしています。子どもも複数いるため、シッター料金が高額になるのが難点ですが、自治体や子ども未来財団などの助成制度なども利用できます(シッター会社の指定あり)。我が家の場合は、年間での使用は2回だけでした。

(3) 家事・育児支援NPO団体(4人):
核家族、夫は仕事が忙しく、平日の家事・育児の多くが私の肩にかかっています。私自身が倒れないように、平日の2日間、18時から19時30分まで、定期的にヘルパーさんに来て頂いています。主に、その日の夕食づくりと洗濯をお願いしています。子どもをお願いして、私が少し休息を取らせてもらうこともあります。人に作って頂く夕食は、本当においしいです。ヘルパーさんたちは、みなさん、主婦のプロフェッショナル。簡単にできる美味しいおかずや、保存のテクニックなども伝授頂いています。
定期的にお願いしていてよかったことは、子ども達がヘルパーさん達に馴れていること、我が家の家事をヘルパーさんたちが知っていることです。双子が肺炎で次々と入院した時、病棟に面会に行きたくても、他の子どもは入れません。そのような時、自宅で元気な子ども達を見て頂きながら、夕食を作って頂きました。母親の私が面会に行くと、家事が滞りますが、我が家の事情と家事の手順を理解してくださっているので、説明をする必要もなく、進めていただき、本当にありがたかったです。

(4) シルバー人材センター(1人):
不定期の家事の助っ人としてお願いしています。風呂場やガスレンジ、窓ふきなど、通常の家事以外で気になる家事をまとめてお願いしています。

2. 家事のスケジューリング。そして、余計なことは考えずに淡々とこなす。

手帳を見ながら、ヘルパーさんに来て頂く曜日を決めます。そして、家事の週間プランも考えます。そして、子どもの病気や突発的な用事などが入らない限りは、その週間プランは週ごとに変えません。何曜日には何の家事をいつ、誰がやるか、夫とも相談しながら、ある程度柔軟性を持って決め、淡々とこなします。できるだけ、無用な考える時間を短縮します。
 
夫は、平日は、朝の保育園への送りと、深夜帰宅でもできる家事(皿の片づけ、洗濯物をたたむ)をやっています。週末は、二人で家事・育児を分担します。1週間の献立は二人で分担し、週末に夫がまとめてスーパーに買い物に行きます。平日の後半には生協の宅配を頼み、生協の注文は私がします。夕食は、週に1~2回は夫が朝、作って行きます。
 
家事は人に代行して頂けますが、育児は母親でしかできないことがあります。家事を依頼してできたゆとりを、ぜひ、子どもとの時間に使ってください。私は、毎晩、夕食の後、風呂に入るまでの約1時間を、子ども達との時間にあてています。息子の宿題を見たり、双子のままごとにつきあったり、ただ、双子を抱っこしていたり、一緒にテレビを見たり。

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毎日、毎日、職場を飛び出し、保育園へとまっしぐら。二人分の荷物と仕事のバッグと双子を抱え、次は学童保育所へ長男を迎えに。双子ワーキングママは重労働だけど、きっといい思い出になるでしょう!


いつか楽になるワーキングマザー生活

最後に、小さな双子の育児と家事と仕事に追われて、このような毎日が永遠に続く気がしたり、先が見えなくなったりしている方へのメッセージです。
 
復職初年度は最も大変な1年だった、とワーキングマザーの誰もが言います。しかし、子どもが3歳を越えると、病気や感染症への抵抗力もつき、保育園を休む回数も減ってきます。長男も、3歳以降は、1年以上も保育園を休まないようになりました。
 
双子ゆえのメリットとしては、いつも兄弟姉妹と一緒で心細くないからか、保育園やヘルパーさんなどに預ける時も、長男の時と比べて泣いたりしません。二人で遊んでくれて、家事が進む場合もあります(その反対に、二人にまとわりつかれた時は、動けません)。
 
ワーキングマザーになってよかったことは、「怒りも悩みもひきずらないこと」。職場で嫌なことがあっても、帰宅して家事と育児にまみれ、疲れて寝てしまえば、朝には忘れてしまいます。子どもに関する悩みも、職場で仕事に没頭すれば、その間は忘れることができ、冷静に考えることもできます。職場の悩みは家庭で忘れ、家庭の悩みは職場で解消、これはワーキングマザーの大きなメリットだと思います。
 
そして、子ども達からの無限大の愛情をもらえます。長男が保育園に行っていた頃、息子は保育園のガラスのドアに顔を押し付けて、私を見送ってくれました。曲がり角を曲がってお互いに見えなくなるまで、手を振り、投げキッスを交わしていました。幸せを心から実感した思い出です。現在、小学校3年生になった息子。学校が休みの日などは、息子と一緒に家を出て、息子が過ごす学童保育所のそばまで送ることがあります。「友だちにひやかされるから」と、今はもう手もつながないし、学童保育所まで送らせてはくれません。道の角で別れると、いちもくさんに走って行ってしまいます。でも、チラッと最後に振り返る息子の横顔に、以前の息子の面影と、息子の健やかな成長と、幸せを感じています。今は、双子からもたっぷりと愛情をもらって、私は幸せです。

両立生活は毎日続きます。どうか、ママ自身、無理をせず、自分へのご褒美、自分のための時間も大切に、忙しいけれど、(おそらく)人生で最も充実している日々を楽しんでください。
心に野望と情熱を秘めて、共に頑張りましょう。

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17回にわたったレポートを読んでくださって、ありがとうございました。
また、いつか、お会いしましょう!
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