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【ニュージーランド子育て・教育便り】 第2回 小学生の母親にとっての仕事

村田 佳奈子

2016年4月22日掲載

要旨:

ニュージーランドでは、小学生の子どもだけでの留守番が許されていないため、働く親たちは学童保育、ナニーなどを利用して仕事と子育てを両立させている。今回は、ニュージーランドで小学生の子どもをもつ母親がどのように働いているのか紹介する。

前回は、小学生の子どものいる親の負担がとても軽いということをご紹介しました。今回は、ニュージーランドで小学生の子どもをもつお母さんたちがどのように仕事と子育てを両立させているのか、ご紹介したいと思います。

職探し

ニュージーランドで働く女性像といっても、働く理由は実に様々で、一概には言えません。キャリア実現のために働く人ももちろんいます。家にかかる費用(ローン、家賃)や一般的な物価(食料品その他)が高騰しているので、その経済的な負担軽減のために働く人も多いようです。離婚率も高いため、離婚を機に仕事を始める人もいます。子どもが小学生になり、たまたま良い仕事があったら働こうかな、というような気軽さで働く人も多々います。また、子どもをもつ前からずっと仕事を続けている人もいますが、子どもを産んでから仕事を変える人も、一時的にキャリアを中断する人も多く知っています。働き方もフルタイムの人から週に数日の人、起業して在宅で働く人など様々です。私の周りにはこのように多様な働き方のお母さんたちがいるのですが、子どもがいても日本より比較的簡単に仕事を見つけているように思えるのは、採用する側が、性別、年齢、結婚のステイタス、妊娠の有無や可能性などを応募・採用時の条件とすることが違法になっているからでしょうか *1。これは特に母親にとって重要な点だと実感しています。

更に、起業が比較的容易なニュージーランドでは、子育てと両立できるような仕事を起業してしまう方もいます。それもいかにもやり手の雰囲気の女性ばかりではなく、普通の母親が自然体で小さなビジネスを始めるようなイメージのほうが、実態に近いと思います。また最低時給は、時給15.25ドルと法律で決められています *2。(生活感覚にすれば10ドルは1000円に近いので1525円といった感覚になります *3。)それ程高スキルが要求される仕事でなくても、週に数日でも働くとある程度まとまった収入になります。

学童保育・ナニー

働くことにした場合、学校の始業前と放課後に子どもの過ごす場所を絶対に確保しなければなりません。というのも、ニュージーランドでは14歳未満の子どもだけで家にいることは違法だからです。家で留守番をさせておくという選択肢はありません。この点は、日本とは違う苦労に直面する点だと思います。そして、子どもをケアしてくれる人たちも最低賃金が適応されるからか、その料金がかなり高いのも特徴です。

まず、第一の選択肢として、日本で言う学童保育に相当するもの(Before/After School Programme)があります。学童保育の利用は、1日あたり放課後は10~20ドル、始業前は10ドル程度が相場です。就労状況、利用理由を聞かれることもなく、利用したい人は直接申込をして空きがあれば誰でも利用できます。事前に登録しておくと、空き状況が確認できていつでも申込可能なウェブサイトを利用しているところもあります。娘の学校で利用できる学童保育がいくつかあるのですが、空きがなかったということは聞いたことがありません。通常の仕事だけでなく、記念日に夫婦2人で過ごすためや、突発的な仕事や用事、子どものパワーが有り余ってお母さんが少し疲れてしまった等の理由で利用している人もいます。それにしても、毎日の事となるとそれなりの出費になるので、共働き家庭でも夫婦どちらかが出勤を少し遅らせて、始業前は利用せず、放課後だけにしようとしていたり、少しでも休みをとれたらその日は学童保育は利用しないで子どもと過ごすようにしている家庭は多いように思います。

第二の選択肢はナニー(ベビーシッター)です。学童保育よりも家庭的な育児を好む場合、ナニーに送迎を頼み、親が帰ってくるまでの数時間を家で一緒に過ごしていてもらうという人も多いようです。信頼できるナニーを見つけられるかという心配もあるようですが、親の仕事が忙しい場合には学童保育より時間の融通がききますし、子どもの習い事までの送迎をしてくれたり細かなニーズにも対応してもらえる部分がメリットのようです *4。また兄弟姉妹が多い場合、ナニーの方が金額的な負担が少なくなるケースもあるかもしれません。家が広い場合は、住込みのナニー(オーペア)を利用する人もいます。オーペアというのは、ニュージーランドに滞在したい主に若い海外の女性に個室と食事を提供する代わりに、子どもの世話をしてもらうという制度です。オーペアを仲介する業者もたくさんあります。

つまり働くと収入は得られるものの、子どもの祖父母など親族に頼めるケースを除き、子どもを見ていてもらうにもそれなりのコストがかかってしまいます。実際に、このコストがかかることを考えて働き始めるべきかどうか迷っているお母さんも多いようです。

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ある日の学童保育で遊んでいた時の様子

夏休みを乗り切る

ニュージーランドの小学校は4学期制です。1学期10週間の後2週間の休みが続くサイクルです。夏休み期間は12月後半から1月末までの約1ヶ月半となります。共働き家庭にとっての試練は、この夏休みをいかに乗り切るかです。夏休み以外の2週間の学期間休みは、学童保育のホリデー版(School Holiday Programme)が毎日開催されているのですが(1日あたり50ドル前後)、12月後半から1月前半の夏休み期間はクリスマス~年末年始の休暇にあたり、学童保育を含む預かりのサービスもお休みの事が多いのです。ナニーも休暇をとって出かけることが多いようです。そのため、小学生の子どもがいる親は必然的にこの期間に休みをとることが多いように思います。(通常の学期間休みにも数日間休暇をとり家族で旅行などにいく親は多いです。)それでも仕事を優先したい場合、娘の友達家族は、おじいちゃん、おばあちゃんを頼りにしていることが多いように思います。おじいちゃんかおばあちゃんが泊まり込みで子守りをしてくれたり、おじいちゃんおばあちゃんの家に泊まりにいったり...。親は仕事を休まなくてよく、子どもは祖父母との貴重な時間が過ごせて一石二鳥というところでしょうか。大きくなったら働く気満々の娘もそんなお友達の姿をよく見ているので、「私が大人になって働いている時は、時々、私の子どものこと見ててね!」と言います。なお、School Holiday Programmeはバスにのって遠足に出かけたり等、特別なアクティビティも多く、充実した一日を過ごせるプログラムになっており、娘はこれが大好きです。

ホリデーのプログラムの例 (実例をもとにアレンジ)
月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日
動物園に遠足バルーン遊び郊外の公園に遠足映画鑑賞クラフト作成
遠足や映画をみる日には追加料金が発生します。

このように、日本とは違い、必ず子どもの居場所を確保しなければならず、そのコストも高額という大変さもあるのですが、娘と同い年程度のお子さん(5-6歳)のいるフルタイム共働きのご夫婦と会話していると、大変そうでありながら「子どもの数は2人まではなんとかなるかな。3人だと少し大変になりそうだけど。」となんとか2人までの子育てを想像できる人が多いようです。働いていないお母さんたちも「そろそろ子どもも大きくなったし働こうかな。」と気楽に話しているように感じます。そして実際にフルタイムの仕事やパートタイムの仕事を見つけてきます。

もちろん、その一方で、いざという時に頼れるネットワークの有無や、祖父母が近くにいるのかどうか、学童保育などの高いコストの負担や、ナニーやオーペアを依頼できるだけの住環境、法律で労働環境が守られている場所で働けるのかどうか、といった点を考慮すると、移民をはじめそれらがハードルになっている人たちも少なくないであろうなとは思います。

ニュージーランドで小学生の子どもを持ちながら働くということは、他の国と比べて何かの制度がとりたてて素晴らしいわけではなく、職探しのハードルの低さ、男性女性共に定時退社が当たり前という職場環境、働いていても面談や行事に参加しやすい小学校の仕組み(第1回参照)、などなど様々な要因があって可能になっているように思います。


筆者プロフィール
村田 佳奈子

日本で7年間企業に勤める。退社後、2012年4月よりニュージーランド(オークランド)在住。
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