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【スウェーデン子育て記】 第4回 家族の呼び名いろいろ

6月中旬から8月初旬にかけて、スウェーデンの学校や保育園は長い夏休みにはいります。我が家には毎日のように近所のお友達が遊びに来たり、また娘たちが遊びに出かけたりするという日々が続いています。北欧の夏は短いですが、午後2時くらいには陽が落ちてしまう冬とは異なり、その期間は夕方でも外が明るいので子どもたちは一日中思いっきり夏を楽しんでいます。

娘のお友達が家に遊びにくるようになると、母親である私も娘たちのお友達と会って話をすることが多くなりました。子どもたちの付き合いを通して、たくさんのスウェーデンのご家族と知り合う機会が増えたので、自分が学生として勉強していたころには知らなかったような単語もたくさん知るようになりました。

とくに興味深いと思ったのは、いろいろな家族の呼び名です。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんなどの一般的な呼び名のほかに、家族の形態が変わることで増える呼び名もあります。両親の離婚、再婚によって子どもの家庭環境が変化するためです。日本語では、義理の○○、などと呼んで自分との関係を表現しますがスウェーデン語ではちょっと変わった呼び名があります。

ある日のこと。小学生の娘と、彼女のクラスメイトのMちゃんの話をしていたときのことです。そのMちゃんの両親は離婚しているので、MちゃんとMちゃんの妹は隔週で父親と母親の家を行き来して生活しています。Mちゃんのお父さんとお母さんはそれぞれ新しいパートナーができており、そのパートナーたちにも連れ子がいるので、Mちゃんには同じ両親をもつ妹のほかにも義理のお父さんとお母さん、そして兄弟がたくさんいるのです。娘との会話の中ではMちゃんの新しい家族の話がいろいろ飛び出すのでそれぞれの呼び名をスウェーデン語で知った時は「へー、そういう呼び名があるのね」と勉強になりました。スウェーデンにおける、「家族」という人間関係のとらえ方が垣間見られるようで面白いと思いました。

今回はそれらの呼び名から、スウェーデン人の家族に対する考え方を紹介しようと思います。

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夏は夜の9時でもこの明るさ!

ボーナス家族

スウェーデン統計局(http://www.scb.se/sv)の調査によると、2014年にスウェーデンで結婚したカップルの数は約4万7千組、また同年に離婚したカップルの数は約2万4千組ということです。そして離婚したカップルのうちの多くは、結婚してから5年以内に離婚に至ってしまった人たちが一番多いとのこと。そのようなカップルには子どもがいる人がほとんどなので、離婚後に再び新しいパートナーに出会って新しい関係を築き、別のかたちの家族関係がうまれることも当然多くなります。それに加えて、スウェーデンでは同棲というかたちをとったまま子どもを産み育てる家庭が非常に多く、婚姻関係はもっていませんが家族という形態をもつ家庭が多く存在します。下の図は、スウェーデン統計局が2011年に、0歳から17歳までの子どもが誰の保護下で生活しているかを調査したものです。

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図1 2011年、0歳から17歳までの子どもが暮らす家庭形態(出典 スウェーデン統計局)


上図の「母子・父子家庭」のカテゴリーのなかには、婚姻関係がないまま新しいパートナーと同棲している場合も含まれています。この調査によると、血縁関係にある両親と生活する児童は全体の75%で、残りの約25%のスウェーデン家庭のなかには、血縁関係のない義理の親と暮らす子どもたちがいることがわかります。

婚姻関係の有無にかかわらず、子どもにとっての義理のお父さん・お母さんに対してはいくつかの呼び名があります。基本的には「義理の両親(Styvföräldrar)」と呼ばれますが、これはフォーマルで固いイメージをもつためなのか、近年になってから別の呼び名ができたそうです。日本語に直訳すると「ボーナス両親(Bonusföräldrar)」、「プラスチック両親(Plastföräldrar)」または「架空の両親(Låtsasföräldrar)」などと呼ばれ、日常会話で使えるような呼び名が定着しているそうです。

日本語でこう聞くと不思議な表現と感じられるかもしれませんが、これらの新しい言葉は、私の聞いた限りではネガティブな意味は含まれておらず、「義理の両親」という言葉よりもカジュアルに使われているそうです。私個人の考えですが、子どもにとっては、両親の離婚・再婚などで環境が変わる中、それを重くとらえず表現してくれる言葉があることは、何らかの救いになるのではないでしょうか。

また同様に、新しい兄弟・姉妹についても「ボーナス兄弟・姉妹(Bonussyskon)」や「架空の兄弟・姉妹(Låtsassyskon)」という言葉が使われます。親の立場からも再婚相手の連れ子を「ボーナス子ども(Bonusbarn)」などと表現します。「ボーナス」という言葉から想像できるように、再婚によって子どもが増えて幸せだ、という意味合いが大きいようです。とてもいい言葉だなあ、と私自身は思います。これも私の想像ですが、新しい家族を得た子どもたちにとっては、こういったカジュアルな言葉を使うことで、あまり重い気分になることなく、お友達同士で自分の家族の話ができたりするのかもしれないなと思います。複雑な家庭環境で暮らす子どもが多いスウェーデンならではの言葉ではないでしょうか。

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夏の家族

夏休みということで思い出しましたが、長い夏休みの間だけ作られる「夏の子ども(Sommarbarn)」という言葉もあります。これは日本ではほとんど聞いたことのない話だったので、初めて聞いたときは驚きました。

近年ではスウェーデンでも聞くことが少なくなったそうですが、夏になると都市部の子どもたちは自然や動物と触れ合うことができる田舎にホームステイをして夏休みを過ごしたそうです。街の子どもたちは「休日の子ども(Feriebarn)」や「夏の子ども(Sommarbarn)」と呼ばれて、ホストファミリーとなる「休日の両親(Ferieföräldrar)」または「夏の両親(Sommarföräldrar)」のもとで夏を過ごします。対象は4-5歳くらいから14歳までの子どもたち。1900年代の初頭から各地の自治体などにより開始された活動ですが、とくに1970年代ころから2000年ぐらいまでが一番活発であったようです(資料2)。

私の主人は子どものころ、しょっちゅう田舎の「夏の家族」のもとで過ごしたそうです。彼の場合、毎年同じホストファミリーのもとに行ったわけではなく、いくつか違う家族でお世話になったとのこと。そのうちのひとつの家族には、障害のあるお子さんがいたので長い夏休みの間の遊び相手として招待されていたそうです。スウェーデン人は、自分の子どもであれ、他人の子どもであれ、子どもと過ごす時間を楽しもうとするお国柄なのかなあ、と思います。

現在では、私のまわりでそういった夏の過ごし方をする子どもの話を聞いたことはありません。そのかわり各自治体では「夏のコロニー(Sommarkollo)」というサマーキャンプのようなアクティビティーを提供しており、自然の中でたくさんの子どもたちと共同生活をしながら様々な体験をさせてくれるそうです。この「夏のコロニー」は歴史が長く、スウェーデンの子どもたちにとっては夏の定番だとか。我が家の娘たちにもいつか体験させてみたい夏の行事のひとつです。


資料1 http://www.scb.se/sv_/Hitta-statistik/Artiklar/Karnfamiljen-fortfarande-vanligast/
資料2 http://www.feriebarn.se/

筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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