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【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第34回 小学校説明会

要旨:

小学校入学前の説明会が夏休み前の平日夕方に開かれた。説明会の間は、子どもたちは保育サービスを受けることができ、子連れでも安心して保護者会に参加することができた。前半は学校全体や入学式の説明、後半はクラスに分かれての細かい説明があり、有益情報を入手できた。が、国際色豊かな100名以上の保護者が参加した会では、歯に衣着せぬ物言いの保護者も目立ち、保育園とは異なる環境に親も身を置くことになるんだな、と保護者としても気持ちを新たにした。

キーワード:ドイツ、ベルリン、小学校、説明会、保育士、学童保育、シュリットディトリッヒ桃子

今夏から息子は小学校へ入学しましたが、夏休み前に学校から「入学にあたっての説明会開催のお知らせ」というお手紙が届きました。入学式や学校生活などに関する情報を共有する会のようです。以前行われたフリーマーケットなどのイベントで、息子はこの小学校に足を踏み入れたことがありましたが、入学の準備として学校の雰囲気に慣れさせるため、私たちと一緒に連れて行くことにしました。

説明会は平日の夜6時からの開催でしたので、その日は早めに晩御飯を食べて、一家3人で近所の小学校へ向かいました。会場である食堂に到着すると、既に100人位でしょうか、着席している保護者たちが目に入ってきました。この学校に通う40%の子どもたちの親は、非ドイツ人とのことで、保護者の顔ぶれも様々。周りを見渡すと、ドイツ人は勿論、ロシア系、インド系、中東系、アフリカ系、そしてアジア系の親もいて様々です。

息子が通っていた保育園も英独バイリンガル園でしたので国際色豊かでしたが、小学校は規模が異なります。既に熱気あふれる会場に少し圧倒されながら席を探し、家族3人で着席しました。

しばらくすると、保育士さんが息子のところにやって来て「おもちゃで遊ばない?」と遊び部屋へ誘ってくれました。ベルリンの小学校には担当教科を教える教師の他に、教師の授業の補助を行ったり、放課後に児童の面倒を見る保育士が常駐しているのです(詳しくは、第24回参照)。初めての場所、初対面の人たちに囲まれていたにも関わらず、ここが小学校ということで浮かれていたのでしょうか。息子は私たちの承諾を得ると、軽やかな足取りで保育士のお姉さんについて行きました。

以前の彼だったら、きっと私たちの元を離れたがらず、泣いてしまったと思いますが、この日はその成長ぶりを目の当たりにした日でもありました。結果的に二時間にも及ぶ説明会でしたし、息子も新しいお友達とたっぷり遊べたようで、説明会後に楽しそうに遊びについてお話してくれ、「小学校に入ったら、あのお友達とまた遊べるね!」と、私たちの思惑通り、入学に向けて心の準備もできたようでした。

ベルリンでは保護者会や保護者向けのイベントは通常、平日の夕方に行われますが、この小学校ではその間、保育士さんが子どもの面倒も見て下さるそうです。ベルリンは一般的に「サービス砂漠」と呼ばれており、日本のようにきめ細かなサービスを提供されることは多くないのですが、このように子育てに関しては助かることが多いのも事実です。

そのような理由もあってか、ベルリンでは児童数が年々増加しており、今年の9月からは、約3万人の子どもたちが新一年生となりました。これによりベルリンの小学生数は合計約42万人と去年に比べて5千人以上も多くなったそうです *1。ドイツ国内では少子化が進んでいるようですが、ここではそんな風には感じられません。他のドイツの都市に比べて物価が安いこと、国際色豊かであることなどの理由から、若いファミリーが流れてきているのかもしれません。

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息子が通う小学校の校舎(地面にペイントされているのは、児童の足形)

さて、述べ2時間にわたり行われた説明会ですが、前半1時間は小学校のシステムや規則、入学式の段取り、保護者会の組織などに関する説明が校長先生や保護者の代表から行われました。特に入学式に関しては、前述のとおり児童数が増えていることから、二つのグループに分けて、近くの高校の講堂を借りて行う、とのこと。それでもスペースの関係で、入学式会場に入ることができる保護者は「新入生一人あたり最大4人まで」という制限つきです。さらに当日はチケットを持参しないと会場には入れないとのことで、そのチケットも配布されました。

ところが、この人数制限に反対する保護者たちが続出!すごい勢いで先生たちに質問や意見をし始め、穏やかだった説明会会場が、一気にヒートアップ!「入学式には子どもの両親と双方の祖父母を合わせて6名参加予定なのに、なんでチケットが4枚しかもらえないんだ!?」と不満を訴えている模様。自分の意見をはっきりと伝えることなしにはこちらでは生活していけませんから、彼らにとっては当たり前のことをしたのでしょうが、「初めて教師と保護者が顔を合わせる場で、そんなに攻撃的にならなくてもいいのにね・・・」と思わず夫と顔を見合わせてしまった私でした。

一方、教師たちは慣れているのか、冷静に「収容人数上、仕方のないことですし、規則は規則ですから」と言うばかりで、全く取り合う様子もありません。言い分が平行線のまま、しばらく会場は騒然として、誰が何を言っているのかわからない状態でしたが、ある保護者が「4枚のチケットを全部使用しない保護者もいるだろうから、彼らからチケットをもらってはどうか?」という提案をしたところ、なんとか騒ぎが収まりました。ほっとすると同時に「学校の先生はどこでも大変そうだなあ」と思った一幕でした。

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緑豊かな小学校校庭

その後、新学期からのクラスに分かれて、後に担任となる教師と保育士と一緒に教室へ移動。息子のクラスメートの親たちと一緒に、前半よりも詳しい説明を聞くことができました。

担任の先生によると「ベルリンでは1-2年生が合同で授業を受けることが多く(中には1-3年生が合同で授業を受ける学校もある)、この小学校も例外ではありません。だから、授業は教師とフォロー役の保育士(この方は放課後の学童保育でも保育を行う)の二人体制で授業をおこないます」とのこと。

授業内容については「入学して最初の学期は幼稚園の延長みたいなものです」とおっしゃっていました。だからでしょうか、1-2年生の合同クラスにはそれぞれお花の名前がついていて、息子は「ひまわり組」に属すことに。教室の入り口にもひまわりの花が飾ってあり、なんとも可愛らしい雰囲気でした。

担任の教師も保育士さんも感じの良いベテランの女性で、こちらの質問にも丁寧に答えて下さり一安心しました。が、ここでもやはり、先生方に意見する保護者が・・・。

事の発端は、放課後の学童保育での宿題時間に関する説明でした。担当の保育士が「放課後の学童保育では宿題の面倒もみますが、入学後しばらくは宿題も少ないですし、子どもたちにも、のびのび遊んでもらいたいので、一日15分くらいを宿題の時間として予定しています」と説明したところ、ある保護者がこれまたすごい剣幕で「私たちは共働きなので、自宅で子どもの勉強を見る余裕はない。学校の宿題は学校できっちり終わらせてもらわないと困る!」と保育士に迫っていきました。

驚いた教師が「最初のうちは宿題もそれほどないですし、出たとしてもすぐに終わる量ですから、心配しなくても大丈夫ですよ」とおっしゃったのですが「うちの子だけ、宿題が終わらなかったらどうしてくれるんですか!」と収まる気配はありません。保育士さんも「子どもの勉強は学校と家庭の両方でみてあげることが重要ですよ」とフォローしましたが、火に油を注いでしまったようで「だから、うちではそんな時間や余裕はないんですよ!勉強は学校でするものでしょ!」と叫びだす始末。

私たち残りの保護者はこれらのやり取りを、ただ静観するしかありませんでしたが、結局、この保護者は先生方に「大丈夫ですよ、入学後に問題がみられるようでしたら、またお話しましょう」となだめすかされるようにして、教室を後にしていきました。

これは個人的経験から考えることですが、日本では敢えて自分から動かなくても、必要な情報は学校や保育園から与えられることが多かったと思います。一方、海外では自分から行動しないと、多くの場合、必要な情報を入手することはできません。従って、親としてこのようなイベントに積極的に参加することは、息子が学校生活を始めるにあたって必要不可欠なことでした。案の定、説明会では多くの有益情報を得ることができましたし、息子の担任となる先生方と直接コミュニケーションをとる貴重な機会を得られ、本当に参加して良かったと思いました。が、一方で、様々な保護者の行動も目の当たりにし、保育園とは異なる環境に親も身を置くことになるんだな、とこちらも気持ちを新たにしました。


参考文献
筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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