前回は上海で日本人の子どもが通う幼稚園について紹介しました。今回は実際に幼稚園を決定するまでをお伝えします。
私たちが息子の幼稚園を選ぶにあたって最初に考えたのは、日本語環境の日系幼稚園は候補から外す、ということです。この機会に日本にいるのとは違う経験をさせたい、私たち自身も保護者として、彼を通して外国人の先生やお友達と面白い経験をしてみたいと思ったからです。
それに加えていくつかの譲れないポイントを考え、該当する幼稚園の情報を集めることにしました。確かに選択肢はたくさんありますが、望むことが多すぎると条件に合う幼稚園を見つけることは難しくなるでしょうし、逆に求めるものがあまりなくても決めかねるだろうと思い、下の4つに絞りました*1。
- 英語で教育
- 家から遠くない
- 環境がよい
- 授業料が許容範囲内 プラス、できれば3歳の誕生日である4月から入園を希望。
言語に英語を選んだのは、中国語よりも英語の方が日本に帰ってからも語学力を維持しやすいこと、また私たちがその時点で全く中国語ができず、子どもに何かあった時、日本語か英語ができる人を介してしか学校側とコミュニケーションがとれないことが面倒に感じられたからです。
また、スクールバスは希望すればかなり遠くまで来てくれますが、3歳になったばかりの息子に片道30分以上の道のりは負担になりそうです。さらに災害など万が一の場合も考えて、がんばれば歩いて迎えに行ける距離が理想です。
環境については、あまり車の往来が激しくない通りにあること。
授業料は、学年が上がると共にどんどん上がっていくようです。少し先まで見据えて考慮しなくてはいけません。
こうして希望を明確にしてみると、数多くある幼稚園の中でも該当するのはたった2つのインターナショナルスクールだけでした。さっそく学校と連絡を取り、夫と息子の3人で見学に行きました。
<見学メモ1>
アメリカ系インターナショナルスクール。高校まであるので、古いが校舎は大きく、校庭も広い。大きな通りから一本外れているため静かで安全。幼稚部は教室や廊下にかわいい飾り付けが施してあり、ポップな色遣いが日本とはちょっと違う。明るいサンルームのような場所にあるトイレが印象に残った。欧米系英語ネイティブの担任、フィリピン人の副担任、子どものお世話をメインで担当する中国人のアイ先生の1クラス3人体制。生徒は日本人を含めほぼアジア系。
かわいい教室の様子
<見学メモ2>
ローカル系インターナショナルスクール。ここも高校まであるが、キャンパスが分かれているため幼稚部の施設は小規模。しかし新しくきれい。園庭は若干狭い。生徒は欧米系とアジア系が半々くらい。日本人は1クラスに1、2名とのこと。案内をしてくれた副校長の女性が親切で良い印象。現在空き待ち。来年8月の新学期からならば願書受付可能とのこと。
広々とした校庭
さらに、子どもがインターナショナルスクールになじめなかった場合を考えて、日系幼稚園の国際コースにも見学に行きました*2。
<見学メモ3>日系お勉強系幼稚園。習い事やカリキュラムが充実しているのは今や上海では普通。子どもたちはのびのびと過ごしている様子。大規模住宅地の中にあるので安全、園庭も広く環境は良い。学校側の説明を聞いていると、運営が日本人だと楽だなと実感。 英語で教育する国際クラスは、定員にまだ余裕があるとのこと。
<見学メモ4>日系幼稚園 。大きなマンションの敷地内にあり、立派な園舎と広い園庭。教室、廊下、ホールなど、全体的に清潔でピシッと整理整頓されていて、全く日本の幼稚園と同じ。 4月からの英語の国際コースの2歳児の定員は2名のみ。すでに7名がウェイティングリストにいるとのこと。
各家庭それぞれの選択
ところで、ほかの日本人家庭のみなさんはいったいどこの幼稚園に子どもを通わせているのでしょうか。インターナショナルスクールの幼稚園、ローカル幼稚園の国際部に通う子どもも少なくはないのですが、やはり実際にこちらで主流なのは圧倒的に日系幼稚園のように感じます。
では、日系幼稚園を選んだ家庭にその理由を聞くと「まずは日本語をちゃんと習得させたい。」(ご主人がそうおっしゃる方多数)「語学力に自信がない。日本語が通じるのはとにかく安心。」「日本の幼稚園に戻る時、習慣の違いなどで子どもが戸惑わないように。」「インターは授業料が高すぎる」などなど。日系幼稚園の中には、数日前から寝袋持参で入園手続きに並ぶという人気の幼稚園もあると聞き、驚きました。
一方、インターナショナルスクールの幼稚園、ローカル幼稚園の国際部に子どもを通わせている家庭では「英語ができなくて困ったから、子どもには小さい頃から身につけさせたい」、その反対に「自分自身も子どもの頃からインターナショナルスクールに行っていたので行かせたい。」また、「中国ならではの経験をさせたい。将来中国語が役に立つこともあるかもしれない」など、いろいろな理由があります。
以前は非常に少なかった、卒園後に日本人小学校には入学せずそのままインターの小学部に進む子や、現地小学校の国際部を受験する子どもも最近増えてきたと聞いています。
ついに幼稚園決定!
では、我が家は結局どうしたのかと言うと、見学から数カ月後、メモ1にあるアメリカ系インターナショナルスクールの幼稚園に通わせることに決めたのでした。メモ2の学校も甲乙つけがたく、ぎりぎりまで迷ったのですが、最後は4月からの入園が可能な方を選びました*3。とは言っても、定員まであと1名しか枠がないと聞き、慌てての入園手続きでしたが。いずれにせよなんとか幼稚園選びが終わり、本当にホッとしました。
広くて明るいトイレも重要!
1日7回(!)行われる掃除の記録
さて、私たちはインターナショナルスクールを選択しましたが、だからと言って簡単に息子がバイリンガルになれるとは思っていません。家庭では日本語のみですし、子どもの言語習得については、覚えるのも早いけれど忘れるのも早いと聞きます*4。英語に関しては、好きになるきっかけになればいいなというところです。
それよりも期待することは、日本とは違う国の歴史や文化、人の価値観を自然に受け入れられる心が育つことです。さらに願わくば、自分をしっかりもった強い子になってくれたら・・・なんて望みすぎですね。上海で欧米式の教育を受ける彼が今後どうなっていくのか、(こわごわとですが)見守っていきたいと思っています。
- *1 日系、インター系、ローカル系国際部、いずれにしても日本人が通う幼稚園については基本的に入園に際して試験はなく、先着順です。
- *2 ちなみに、こちらでは子どもに合ってないと感じたらすぐに転園させるケースが少なくありません。教育熱心な家庭が多いことが一番の理由かもしれませんが、日本と違って高額な入学金がないことも一因かもしれないと推察しています。
- *3 日系の幼稚園以外は8月始まりの二学期制をとっています。一学期は8月~12月、二学期は1月~6月です。息子はNurseryの二学期、残り二カ月からの入園となりました。
- *4 参考
バイリンガル教育とは1:バイリンガル教育を目的別に分析する
バイリンガル教育とは2:バイリンガル教育のタイプを分析する
スティーブ・マッカーティ(大阪女学院短期大学・大学 教授)
世界を移動する生活にさようなら サードカルチャーキッドの本国帰国籠橋 輝子 (CRN 外部研究員)「季刊 子ども学」 vol05 「子どもと英語新時代」要約