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【双子のいる生活】 第9回 双子への授乳

要旨:

双子の親となって直面すること、それは「二人の新生児にどうやって授乳したらよいか」である。今回はそんな疑問や不安について、筆者の授乳経験から解説していく。母乳かミルクかの双子の授乳パターンは、「母乳とミルクの混合」のパターンがもっとも多いようだ。母乳だけでやっていける場合でも、ママが忙しく母乳をあげられない時に備えて、哺乳瓶でミルクを飲めるようにしておくことをお勧めする。母乳とミルクの具体的な与え方、授乳のタイミング(一人ずつか、二人同時か)、どうやって二人同時に母乳を与えるか(同時授乳)、また母乳を十分に出すためのアドバイスなども紹介する。

双子の親となり、まず直面することは、二人の新生児にどうやって授乳したらよいかということでしょう。「母乳だけでやっていけるの?」「母乳とミルクをあげる場合、どうやって使いわけたらいいの?」「二人に同時に授乳するにはどうしたらいいの?」「哺乳瓶や粉ミルクはどのくらい準備しておいたらいいの?」たくさんの疑問や不安を感じると思います。

でも、大丈夫です。私も、授乳を通して、赤ちゃん達との幸せな時間を過ごしてきました。現在1歳2ヵ月になった娘たちは、ミルクは卒業しましたが、おっぱいは大好きです。朝と夜間はまだ授乳中の私ですが、これまでの1年間を振り返りながら、双子への授乳について、書いてみたいと思います。



■授乳パターン


授乳のパターンは、「母乳栄養のみ(通称「完母」)」、「母乳とミルクの混合」、そして「ミルクのみ」の3パターンがあります。混合の場合、母乳とミルクの組み合わせ方、頻度や量も、ママと赤ちゃんの状況によって異なります。私のまわりの双子ママたちは、私も含めて「母乳とミルクの混合」のパターンがもっとも多いようです。

もし、母乳が十分に出て、母乳栄養だけでやっていける場合でも、一日少しだけでもミルクをあげて、双子たちが哺乳瓶でミルクを飲めるようにしておくことをお勧めします。赤ちゃんは、いったん母乳とお母さんの乳首に馴れてしまうと、哺乳瓶やミルクを受け付けなくなることがあります。双子の育児は忙しく、母乳の量も相当なもの。ママが体調を崩した時や、外出などで母乳をあげられない時、ママ以外の人がミルクをあげられるように、赤ちゃんが哺乳瓶でミルクを飲めるようにしておいた方がいいと思います。

混合の場合の母乳とミルクのあげかたも、ママと赤ちゃんたちによってさまざまなパターンがありますが、大別すると以下の4パターンが多いと思います。

 1.最初に二人に母乳をあげて、足りない場合にミルクを足す。
 2.授乳ごとに交代で、一人に母乳、もう一人にミルクをあげる。
 3.二人に母乳だけをあげる時と、二人にミルクだけをあげる時と分ける。
 4.基本は母乳のみで、ママが疲れている時、母乳の出が悪い時、夜間など、スポット的にミルクを二人にあげる。

私は、二人への授乳のタイミングを合わせ、まずは二人に同時に母乳をあげ、疲れた時や、母乳の出が悪く、二人の様子で母乳が足りていないと感じた時に、ミルクを足すという方法(パターン1)で授乳をしました。ミルクを足す量は、もっとも哺乳量が多い月齢の時(ミルクのみであれば一回220ml飲む頃)で、60ml~120mlくらいでした。ミルクを足す時は、夕方が多かったです。朝から活動して私自身の身体が疲れ、母乳の出る量が少なくなっていたようです。または、就寝の時に、母乳だけでは双子達が物足りなさそうにぐずった時、ミルクを足すと、スヤスヤと眠りに落ちていきました。

粉ミルクは、複数のメーカーの製品を試しましたが、我が家の双子たちは、特に味にこだわりはないようで、どの製品も飲みました。哺乳瓶の乳首も、メーカーやブランドによってさまざまな形・素材が工夫されていますが、我が家の双子たちは、どれでも上手に飲んでいました。赤ちゃんによっては、特定の乳首からしか飲まない子や、上手に飲めない子もいますので、哺乳瓶や乳首は最初から同じブランドで大量に買い揃えず、赤ちゃんとの相性や好みを見ながら買い足して行くとよいと思います。


■授乳のタイミング

双子への授乳のタイミングは、「一人ずつ」と「二人同時に」あげる方法がありますが、私の経験からは、できるだけ「二人同時に」授乳し、二人の生活リズムを揃えて行く方が、育児が楽になりますのでオススメします。授乳がずれていくと、おむつ替えや入浴などもずれて行きます。ママとしては、永遠に休息できないことになりますので、授乳、おむつがえ、お昼寝・・・と二人一緒にやって、生活パターンをそろえ、ママ自身のリラックスタイムを作れるようにするといいと思います。

もし一人が空腹で泣いているのに、もう一人は眠っていたらどうしましょう? 私は、その時の二人の様子にもよりますが、起こしてしまって一緒に授乳しました。ただ、夜間は、二人に同時に授乳するためには、自分も起き上がって二人を抱えて授乳しないといけなくなりますが、一人ずつ起きた場合は、自分も横たわったまま授乳する「添い乳」ができて楽なので、夜間は二人の自然なリズムに任せていました。


■授乳スタイル

「二人に同時におっぱいをあげるのはどうやるの?」

双子に同時におっぱいをあげることを、双子業界用語(?)では、「同時授乳」といいます。私は、出産した産院の助産師さんからやり方を教わりましたが、最初はなかなか一人では上手に出来ませんでした。首もすわらないふにゃふにゃの新生児二人を抱えて手がふさがり、どうやっておっぱいをくわえさせたらいいのか、汗びっしょりになって試行錯誤を繰り返しました。でも、これも、一度コツをつかめば、すぐに出来るようになります。ぜひ、あきらめずに挑戦してください。

基本スタイルは、双子の頭を前にして、両脇に一人ずつ寝かせる形です(脇抱き。または、フットボール抱き。写真参照)。高さをつけ、双子を安定させるために、クッション等を利用すると便利です。クッションは、U字型の授乳専用クッションもありますが、普通のクッションや枕、タオルケットを折りたたんで使ってもいいと思います。双子への同時授乳用に開発されたクッションもネットなどで売っています。また、自分の左右にアイロン台やミニテーブルを2台置き、その上に双子を乗せて授乳する人もいます。

〔脇抱きでの同時授乳の手順〕
①自分がすわり、クッションやタオルを身体の周りにセット。
②双子を脇に一人ずつ抱える。クッションで双子の身体を安定させる。
③一人目の頭を外側の手で持ち、もう片方の手でおっぱいを持ち、赤ちゃんにくわえさせる。
④しっかりくわえたら、手を離し、もう一人を同様にして反対側のおっぱいをくわえさせる。首がすわらず、頭がグラグラする時は、手で頭を抱えて安定させる。
(赤ちゃんがおっぱいを飲むのに慣れると、自分から乳首を探して吸い付いてくるので、同時に二人の頭に手を添えておっぱいの方に近づければよい。)
⑤クッションの上にはタオルケットやバスタオルを敷いておき、双子達が眠ったら、そっと乳首をはずし、タオルケットごと双子をずらして寝かせる(双子が気づかず、眠り続けた時は、思わずガッツポーズ!)。

私は、この方法で1年間、授乳をしました。そして、双子達が首も腰もすわり、一人で立てるようになった現在は、自分が仰向けに寝て、双子達が私に覆いかぶさる形で授乳をしています。また、私も双子も座って授乳することもできます。ママと子ども達の好みのスタイルをみつけると良いと思います。

同時授乳で唯一困ることは、さすがに、この姿は他人様には見せられないことです。また、双子を左右に横たえるスペースがないと同時授乳は出来ないので、外出先に授乳室があっても、他に人がいたり、椅子しかない場合は、同時授乳は諦めました。その時は、おっぱいは諦め、二人にミルクをあげました。同行者がいたら一人にミルクをあげてもらい、一人におっぱいをあげました。

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同時授乳。こうやって、二人を左右の脇に寝かせ、おっぱいをあげていました。
飲み終わって、すやすや眠る二人。心の中でガッツポーズ!


二人にミルクをあげるとき

次に、双子たちに同時にミルクをあげる時、どのようにしていたかを紹介します。首がすわらないねんねの時期には、二つ揃えた授乳用クッションで双子の身体を支え、両手に一本ずつ哺乳瓶を持って飲ませました。赤ちゃんの一人がミルクにむせてしまった時は、両手がふさがっているので、一旦、授乳をやめ、むせた赤ちゃんを抱き上げて落ち着かせてから、授乳を再開しました。

他に、タオルなどを丸めて哺乳瓶を固定し、ママの手を添えないで授乳する方法や、哺乳瓶を固定することができる専用のグッズ(ネット通販などで売っています)を利用して一人で赤ちゃんがミルクを飲めるようにする方法もありますが、私は、哺乳瓶がずれたりする危険性や、なんとなく愛情がこもっていない気がしてやりませんでした。

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二人に同時にミルクをあげる。U字型の授乳用クッションで二人の首と身体を支え、ミルクをあげました。腕が少し疲れるけれど、かわいいから許しちゃう。

双子たちが成長すると、自分で哺乳瓶を持って飲めるようになるので、ママは楽になります。個人差はありますが、生後5~6ヶ月ごろから出来るようになってきます。プラスチック製の哺乳瓶はガラス製に比べて若干軽いので、赤ちゃんも持ちやすいようです。また、赤ちゃんが両手でつかめる取手がついた哺乳マグもあります。

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生後6ヶ月の頃。もう自分で哺乳瓶を持って飲めるの。

(哺乳グッズは何を揃えたらいいかは、「第6回 双子の新生児を家に迎える」をご参照ください。)


夜間の授乳

母乳育児をしている場合は、これは、自分も寝たまま授乳できる「添い乳」に限ります!私は、部屋に大人用の布団を二枚敷き、双子達が小さい時は、一枚の布団に横に二人を寝かせ、もう一枚の布団に私が寝ていました。ちょうど、ひらがなの「に」の字のように。そして、泣いた子の傍に移動して横たわり、添い寝しながら授乳しました。

成長して寝返りを打つようになると、漢字の「小」の字のように、私が二人の間に寝て、防波堤になりました。そして、右側の子には右のおっぱい、左側の子には左のおっぱいを添い寝しながらあげています。ミルクの場合は、眠くても起きてミルクを作らないといけないので、夜間の授乳は母乳に軍配です。


■母乳育児を軌道に乗せる「本当に、二人分、おっぱいは出るの?」

本などを見ると、母乳は必要な分作られるので、ちゃんと二人分出るようになると書いてあります。最初は信じられませんでしたが、私も、本当に二人分ちゃんと出るようになりました。

私の経験では、赤ちゃんが一人でも双子であっても、母乳育児が軌道に乗るまでは、産後1ヶ月半くらいはかかるようです。それまで、焦らず、回数や時間にこだわらず、ずぼらに気楽に、赤ちゃんが泣いたらおっぱいをあげるようにすると、母乳は出てくるようになるし、最初は不規則で頻回な授乳のタイミングも、次第に2~3時間ごとにととのってきます(ホントです!)。

出産後、まだあまり母乳が出ない頃は、一日10回くらい授乳する時もありました。この頃は、いわば"ド根性母乳道場"でした。双子たちも、まだ小さくて体力がなく、疲れてしまって十分な量の母乳を飲めず、すぐお腹をすかせて泣いてしまい、このように頻回に授乳をしました。

母乳を十分に出すためには、母親も睡眠をしっかりとり、疲れをためないように心がけましょう。家事・育児をできるだけ人にお願いして、授乳に集中できるような環境を整えてください。疲れた時や足りない時は、無理をせず、ミルクを補っていくといいと思います。ただし、ミルクを最初から多めにあげてしまうと、赤ちゃんは飲むのが楽な哺乳瓶に馴れてしまい、おっぱいを飲まなくなってきます。母乳の量も、赤ちゃんが飲む量が減ると減ってきます。もし、母乳育児を希望する場合は、まずは二人におっぱいを吸わせ、足りない分だけ、ミルクを足すようにしてください。

双子でも飲むのが上手な子と下手な子もいます。左右のおっぱいで母乳の出る量が違ったり、乳首の形が違ったりもします。私は、母乳を飲ませる時は、双子を左右で交代にして、どちらからでも飲めるようにしました。

生活の工夫としては、身体を冷やさないこと。食事は、ご飯や根菜・白身魚などの具たくさんの汁をよく作って食べました。また、母乳の出をよくするハーブティーなども飲んだりしました。

もし、思うように母乳育児ができなかったり、乳腺炎や乳首にトラブルがある時などは、助産師さんなどのプロの手を借りることも大切だと思います。乳房マッサージなどの手技を受けられる他、飲ませ方を教えてもらったり、育児相談にも乗っていただけます。

母乳育児の最盛期の頃(双子が生後3~8ヶ月ごろ)は、思春期の頃のようにおなかがすき、いくら食べても底なし沼のような食欲。エネルギーが切れると、貧血でフラフラになるので、常に食べ物を持ち歩いていました。また、のども渇きます(考えてみれば、最盛期は一日に2リットル以上の母乳を作っているのです)。水筒も持ち歩き、たっぷり水分を補給していました。

双子たちが1歳になり、私は職場に復帰しました。復帰してしばらくは、昼間の授乳が減ったために、乳腺が張って辛く、職場に搾乳カップを持ち込んで、保健室やトイレで搾っていました。「圧抜き」と言って、乳腺が空になるまで搾らず、張りの辛さや痛みが軽くなる程度に搾りました。水分やカロリーの高い昼食は控えるようにしました。そうして数日経つと、徐々に日中の張りが減り、昼間は搾らなくてもよくなりました。

生まれた時は2,400gの我が家の双子たちは、1歳を迎えて体重は約9,000gになりました。1歳2ヶ月の今は、離乳食も完了期でほぼ何でも食べられるようになり、日中は保育園に行っているので、授乳は朝、帰宅後、夜間のみです。牛乳も飲めるので、もう母乳は卒業できるのですが、二人が欲しがる間は、もう少し続ける予定です。私にとっても、寝かしつけやぐずった時の最強兵器ですし、何より、仕事から帰って、二人に授乳する一時は、かけがえのないリラックスタイムですから。

双子でも、働いていても、母乳育児は出来ますが、なにせ二人の赤ちゃんが相手です。どうぞ気軽に構えて、母乳でもミルクでも、愛情こめて授乳して、赤ちゃんたちとの幸せな1年間をお過ごしください。

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おっぱい飲んで満腹。おんなじポーズで夢の世界へ・・・。
外出先で授乳する時は、あぐらをかいて、タオルや着替えなどをクッション代わりに。前後左右にスペースがないと厳しいのですが・・・。


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