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【双子のいる生活】 第8回 夫の育児休業

要旨:

「男性の育児休業」について、休業取得までの経緯、育児休業中の生活、復職後の様子、夫を「育児に巻き込むコツ」など、夫へのインタビューも含めて紹介する。また、復職に向けての保育園見学、小学生の長男の「赤ちゃん返り」現象についても触れる。夫は、まだまだ数少ない男性の育児休業を取得。毎晩帰宅も遅く、泊りがけの出張も頻繁にある仕事の夫は、このままでは育児参加することは難しいと判断し、一度は退職も決意したが、上司の理解があって4か月間の育児休業を取得することが出来た。家事と育児をうまく分担し、協力し合って過ごした育児休業期間は、夫にとっても家族にとっても結果的に非常にプラスとなる体験となった。

夫が、まだまだ数少ない男性の育児休業を取りました。

里帰り出産はしない、双子の出産と長男の小学校入学が同じタイミング、双方の実家は遠方という3重苦。私がいくらタフでも、どんなに強靭な精神力を持っていても、出産直後から3人の育児と家事を一人で行うのは不可能に思われました。

そして、頼みの夫は、多忙なサラリーマン。毎晩、帰宅も遅く、泊りがけの出張も頻繁にあります。双子の赤ちゃんのいる生活と夫の働き方は相容れない。出産前に夫婦で話し合い、夫は職場に退職願を出しました。

ところが、退職願が受理される前に、私が突如、切迫早産で入院してしまい、次の日から、夫は映画「クレイマー・クレイマー」の主人公のように、仕事をしながら息子を育てる生活を余儀なくされました。出張にも、息子を連れて行きました。その姿を見た上司の計らいで、夫は退職はせず、約4ヶ月間、育児休業を取得できることになりました。



育児休業中の夫

「オレの方が、主婦業に向いている」と宣言していた通り、夫は育児休業に入ると、スーツを脱ぎ捨て、毎日TシャツにGパン姿で、炊事、洗濯、掃除、買い物、息子の世話、授乳以外の双子の世話の全てをやりました。(髭だけは毎日剃るように、私からお願いしました。いつもスーツ姿の夫が、平日に私服に髭面でいたら、マンションのご近所さんはなんて思うだろう・・・と思わず、周りの目を気にしてしまいました。)

料理は、パソコンで1週間の献立表を作り、複数のスーパーを巡って買い物に行きました。ついでに、近隣のスーパー別、"食材底値リスト"まで作成。

夫が家事を全てやってくれたので、私は双子の授乳に専念することができ、母乳育児も軌道にのって、双子を母乳中心で育てることができました。

双子の世話は、ミルクをあげる、あやす、抱っこして寝かしつけと何でもござれ。毎日行う二人分の沐浴も、夫と二人でやればあっという間に終わりました。台所のシンクに収める形のベビーバスで沐浴をしましたが、私は、帝王切開の後でお腹に力が入らず、重いものが持てなかったので、夫が主に沐浴を担当し、私が沐浴後の着替えやグルーミングをやりました。

双子達が同時にぐずっても、慌てることなく、夫と私で一人ずつ抱っこしてあやすことができました。

夜は、夫が双子たちの世話をして、私は一旦、息子と一緒に寝ました。夜中の授乳のタイミングに起きて夫と交代するまで、私はまとまった睡眠を取ることができ、長期の入院で失った体力も回復しました。息子が寝入った後、自分の寝室でハーブティーをゆっくり飲んでから寝ました。その一時が、私の一日の楽しみでした。双子の乳児がいるのに、ゆっくり眠り、お茶も飲んだりする時間が出来るなんて、夢のようでした。そのお蔭で、心にゆとりができ、赤ちゃんの出すサインも、しっかり受け止めることが出来ました。

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力のある男性ならでは?のダブル抱っこ!


お兄ちゃんの赤ちゃん返り

夫の育児休業を一番喜んだのは、長男かもしれません。息子は小学校を下校後、学童クラブに通っていましたが、学童クラブから帰ると、父親が迎えてくれて、一緒に公園に遊びに出かけることを毎日楽しみにしていました。

6年間一人っ子だったのに、いきなり母親が一ヶ月以上も入院して留守になり、さらに二人の妹が出来て、退院後の母親は妹たちの世話にかかりきり。本人も、慣れ親しんだ保育園を卒園し、小学校と学童クラブに入学。息子にとっては、大変な環境の変化でした。そのショックからか、息子は指しゃぶりや爪かみをするようになっていました。私が入院中、夫が息子を不憫に思って買い与えたテレビゲームばかりやり、中止すると目を赤くしてボーっとしていました。

さらに息子は、双子たちが泣くと「うるさーい!」と叫んだり、私が双子たちに授乳をしていると、部屋のドアを音を立てて閉めたりしました。「(双子たちの)4つの目がキョロキョロして光るので怖い」と言って、妹たちを受け入れることもできないようでした。

夫と私は相談して、息子が家にいる時は、パパが息子専属ということにしました。大好きなパパが、自分だけを見てくれる。帰宅後は公園でサッカー、夜は一緒に夕食づくり(メニューは息子のリクエスト)、宿題を一緒にやって、お風呂も一緒に入る。週末や夏休みには、パパと二人で郊外の山にハイキングに行ったり、ディズニーランドに行ったり、博物館に行ったりと楽しいイベントが目白押し。

息子はこのように父親からたっぷりと愛情を注がれ、次第に落ち着きを取り戻していきました。テレビゲームに逃避することもなくなり、時間を決めて取り組むようになりました。3ヶ月ほど経つと、気になっていた指しゃぶりも爪かみもすっかり治まりました。

夫が休業を終えるころには、双子たちも成長し、息子を見て笑うようになりました。「小さい頃は、抱っこもできないし、どこを見ているかわからないし、僕がかまっても笑ってくれなかったから好きじゃなかったけど、今は、かわいくなってきたよ。」と、息子は言いました。

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平日にパパとお出かけ、で嬉しい息子。

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夕食後のひととき、パパとゲームをする息子。


共働きの基盤をつくる

核家族、共働きで3人の子どもを育てるためにはどうしたらいいか、夫の休業中に、夫婦で相談しました。具体的なことは、後ほど「共働き編」で紹介したいと思いますが、休業中に保育園の情報収集をしたことだけ、今回、紹介します。

私は双子達が1歳になる春に復職するため、双子達は、保育園に入園することになります。長男の時は、私が一人で候補の保育園を見学に行きましたが、今回は、夫の育児休業中に、夫と一緒に保育園見学をしました。

私の住んでいる東京都下の自治体は、年々、待機児童が激増しており、雑誌の特集などでは、全国ワースト3に入るくらいです。特に、双子達は3月生まれ。保育園の入所申請は、4月1日時点の満年齢で見るため、最も倍率の高い1歳児枠への申請となってしまいます。夫も、自ら保育園を見学し、話を聞くことで、当事者として危機感を感じたようでした。その後も、候補の保育園や市役所に何度も電話をして、アピールをしてくれました。無事、双子達は認可保育園に入所することが出来ましたが、見学していた東京都認証保育所からも内定を頂きました。その認証保育所へ入所の決め手となったのは、「お父様が見学され、大変気にいってくださって、何度もお電話をくださったから」とのことでした。父親からのアプローチというのはとても印象的に残るようでした。


夫を巻き込むコツ

双子のいる家庭の夫は、家事・育児に協力的な人が多いと双子育児の本ではよく語られています。「協力」などという甘っちょろいことでは立ち行かないのが双子のいる家庭の現実ですが、夫と家事・育児を分担するにあたり、せめてお互い気持ちよくできるには、どうしたらいいのでしょうか?「巻き込むコツ」とエラソーな表現では夫に怒られてしまいそうですが、私が心がけていることを書いてみます。

1. 夫のする家事に文句は言わないこと。たとえ、同じようなメニューが続いても、ありがたく食べる。そして、感謝の言葉を伝えること。直接、言えない時は、携帯でメールをする。
2. 家事は、お互いの得意分野を活かすこと。夫は、食べることが大好きなので、食事を担当する。ただし、細かい料理は苦手なので、離乳食作りは私が担当。
3. 夫の生活リズムに合った家事を担当する。忙しい夫が「ついでに」できる家事を担当してもらう。例えば、帰宅の遅い夫には、皿や鍋の片付けと、テレビを見ながら洗濯物をたたんでもらう。朝、シャワーを浴びていく夫に、ついでに、風呂桶も洗ってもらう。



復職後の夫

夫自身にとっても、父親として息子と娘たちの育児を堪能できたことに加え、仕事に関連する書籍を読んだり情報収集をしたりして、仕事に関してもよいインプットの機会になったそうです。育児の日々を綴ったブログまで書いていました。

4ヶ月の休業の後、夫は復職しましたが、仕事の段取りをつけて、帰れる時は早めに帰って、双子たちの入浴や息子の相手をしています。仕事も、早く帰るために、より効率的に時間を使って成果を出す努力をするようになり、以前と同じクオリティの仕事を、以前より短時間で出来るようになったとのことです。

復職後も、夫は、引き続き夕食の献立を作成し、週末にスーパーへ食材の買出しに行きます。買い物へは、子ども達を連れて行ってくれるので、その間(約2時間)、私は一人でお茶を飲んだり、昼寝や読書をしたりと、自分ひとりの時間を持つことができます。いつも双子と寝ている私は、眠っていても脳のどこかが覚醒していて、双子が泣くとすぐに目が覚めるのですが、この2時間は、泥のように眠ることができ、夫には本当に感謝しています。

そして夫は、毎朝、夕食のおかずを一品作っていきます。夕方から子ども達が寝るまでは、私は一人で3人の世話をして目の回るような忙しさ。おかずが出来ていることは、安心感があります。

それから、早く帰れる時は、以前では考えられなかった20時台に帰宅するようになりました。20時台に帰ってくれれば、双子の入浴の風呂場からの受け渡しをやってもらえます。

双子たちも、パパが帰宅して顔を見ると、キャッキャッと声をあげて笑います。息子も、大声をあげて喜びます。それは、夫の育児休業のなによりのギフトです。

次世代育成支援対策基本法などの働きかけもあるのか、女性の育児休業取得率は88.5%になりました(平成18年度雇用管理基本調査)。しかし、男性の取得率は0.57%しかなく、厚生労働省が目標にかかげた男性の育児休業取得率10%にはるかに及びません。男性が育児休業を取ることは、女性の私が想像できない困難さがあったのかと思いますが、勇気を出して育児休業を取り、3人の子どもの育児を共に担ってくれたことは、言い尽くせない感謝をしています。


夫から一言・・・最後に、夫に育児休業についてインタビューしてみました!

Q.育児休業をとってよかったことは?
?復職後も双子が懐いてくれること。4ヶ月間、共に過ごしたので、お互いに感じるところがあるようだ。
?生活リズムを整えて仕事を開始できたので、非常に良かった。家事・育児の役割分担、部屋の配置、荷物の置き場所など、双子中心の生活スタイルを整えられたことで、仕事に戻っても慌てることがなかった。
?自分の過去(仕事、私生活)を振り返ることができ、また、将来を考える時間を作ることが出来て、自分にとっては非常にプラスだった。

Q.育児休業を取るにあたり、職場で気を使ったことは?
?上司の理解により育児休業を取得できたので、特に職場で気を使うことはなかった。

Q.復職にあたり、職場の反応や、職場で気をつけたことは?
?ごく一部の人間のみ、複数回に渡って、恐らく嫌味を込めて、育児休業時代にどう過ごしていたかを聞いてきたので面倒臭いと思った程度。特に違和感なく、職場復帰が出来た。

Q.復職した後、仕事や生活など、自分に変化はありましたか?
?家事・育児参加を前提としたライフスタイルの確立を目標とした。仕事を極力調整し、早く帰宅できる環境を整えるようになった。また、早い帰宅を目標とすることで、仕事の効率を上げて対応する必要を認識した。


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