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中高生のテレビに対する行動・意識の実態とその関連要因 -『青少年のメディア利用に関する調査』(BPO青少年委員会)より-

菅原 ますみ(お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系・人間発達教育科学研究所 教授)

2019年7月 5日掲載

要旨:

全国の中高生を対象とした『青少年のメディア利用に関する調査』より、平日・休日2日間のメディア利用に関する日誌を分析したところ、リアルタイムでのテレビ視聴がなかった者が平日25.6%・休日31.4%存在したことが明らかになった。一方で、7割前後の行為者(テレビを見た者)のリアルタイムでの平均視聴時間は平日2時間以上・休日3時間と比較的長時間に及んでおり、テレビをあまり見ない3割前後の中高生の層と、よく見ている多数派の層に二極化している可能性が示された。重回帰分析の結果から、平日でのテレビ視聴時間の長さには、性別・都市規模・世帯収入・パーソナリティ・自宅外での活動時間など多くの変数が関連することがわかった。
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1.調査の目的

インターネットの登場によって若者が"テレビを見なくなった"と言われ始めて久しい。パソコンやタブレット、スマートフォンといった新しいメディアが浸透していくなかで育つ"デジタル・ネイティブ"な青少年たちのテレビに対する視聴意識や行動は、近年ではどのような状況になっているのだろうか。また、こうした状況のなかでもテレビに親しんでいる青少年たちがいるとすれば、本人自身や家庭環境、友人関係にはどのような特徴があるのだろうか。筆者が参加している「放送倫理・番組向上機構[BPO]」の「放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)」では、以下の3点を目的として、全国の中高生とその保護者を対象に『青少年のメディア利用に関する調査』(BPO青少年委員会, 2018)を実施した:

目的1: 青少年の"テレビ離れ"の現状はどうなっているのか、多様なメディアの利用日誌からその実態について検討する
目的2: テレビ視聴時間の長短と関連する中高生の多様な特徴(基本属性、本人の心理的要因、家庭環境要因や友人関係等)について探索的な分析を試みる
目的3: 青少年たちのテレビ番組に対する意見や放送倫理観の実態を把握する

調査結果の詳細については報告書(https://www.bpo.gr.jp/?p=9470)をご覧いただければ幸いであるが、ここでは上記の目的1と2に関する結果の概要を報告したい。

2.調査の概要

全国の中学1年~高校3年相当の6学年の青少年をもつ世帯を対象とし、当該学年の青少年1名とその保護者1名に自記入式の質問紙調査を実施した。調査地点数は全国50地点で、住民基本台帳を用いた層化二段無作為抽出法によって、青少年のみ2,000人(1地点40人)を抽出した。調査期間は2017年9月~11月で、郵送による配布・回収をおこなった。

調査票は、青少年記入版調査票、保護者記入版調査票、および青少年記入によるテレビ・ラジオ・パソコン・タブレット端末・携帯電話/スマートフォン利用によるテレビおよびラジオ番組の視聴に関する24時間の利用日誌(平日・休日各1日)の3冊子から構成されている。517世帯(回収率25.85%)から回答があり、青少年票の回収は512票で、回答した青少年(以下、中高生と表記する)の平均年齢は、14.91歳(12~18歳)、性別は男子257名(50.2%)、女子255名(49.8%)で、学年分布は表1の通りである。

表1 回答した中高生の学年分布
report_02_261_01.jpg (有効回答数511名、中等教育学校については、中学および高校それぞれの相当する学年に合算している)

中高生の居住地域は表2および3の通りである。関東地方が約3割と最も多いが、他は北海道から沖縄まで約1割ずつ全国に分散している。人口規模では人口10万人以上の市に居住する者が最も多く、4割以上であった。

表2 回答した中高生の居住地(地方)
report_02_261_02.jpg (*東山地方:山梨県・長野県・岐阜県の三県の総称である)


表3 回答した中高生の居住地(都市規模)
report_02_261_03.jpg *大都市:人口50万人以上の政令指定都市と東京23区

保護者版は概ね母親によって記入され(82.3%)、回答者の平均年齢は46.26歳(29~69歳)であった。回収率は低めであったが、回答者の属性分布に大きな偏りは観察されず、一定の属性上の代表性は担保されているものと考えられる。

3.主な結果について

(1)青少年のテレビ視聴時間の実態

平日1日・休日1日の各24時間のテレビ・ラジオ・携帯電話/スマートフォン・パソコン・タブレット端末の利用に関する日記票の記載を中高生自身に求めたが、リアルタイムでのテレビ番組の視聴がなかった者が、平日で25.6%・休日で31.4%存在していた(図1・図2)。

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図1 リアルタイムでのテレビ番組視聴の平均時間(分):平日


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図2 リアルタイムでのテレビ番組視聴の平均時間(分):休日

平日・休日の2日間ともにリアルタイムおよび録画・オンデマンドいずれでもテレビ視聴がなかった者は全体の13.4%存在していたが、この者たちが他の曜日にも同様にテレビ接触がなく、本当に"テレビ離れ"した生活を送っているかどうかは、より長期の日誌研究で検討する必要があるだろう。一方、"リアルタイムでテレビを見た"7割前後の行為者の平均視聴時間は、平日2時間以上・休日3時間以上と比較的大きな値を示した。中高生間で大きな差はなく、女子は男子より平日の視聴で27.6分長く、統計的に有意な差がみられた(男子79.8分・女子107.4分、p < .01)。テレビを一定時間しっかり見ている多数派と、ほとんど見ない少数派が二極化して混在している可能性が示唆されたといえるが、今後、テレビに接触しない層がさらに拡大していくのかどうか推移を見る必要があるだろう。

(2) 視聴時間と関連する要因

テレビ視聴時間の関連要因に関する分析(重回帰分析)から、平日では、性別(女子)・都市規模(大都市在住者)・世帯収入(低い)・本人の性格(物事に対する柔軟性があり新しい経験に対する好奇心が強い)、クラブ活動や塾等の自宅外での活動時間が短いこと、テレビ視聴によってもたらされる効果に対する効用感が強いこと、また友人・親とのテレビ共有度が高いことが関連することが明らかになった(図3)。昼間は学校があり、限られた時間しか起床在宅していない平日については、多様な要因がテレビに向かい合う程度に少しずつ影響を及ぼしているといえよう。

休日については、青少年が外出せずに在宅していることと、番組を一緒に共有してくれる人(親については共有視聴、友人については内容について会話できること)がいることが、テレビ視聴時間の長さに関連することが示された(図4)。また、平日・休日ともに、スマホ・携帯電話の使用時間との関連は認められなかった。

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図3 平日のリアルタイムおよび録画テレビ視聴時間に関連する要因:
重回帰分析の結果、有意な関連性のみられた要因のみ記載
(詳細は報告書(https://www.bpo.gr.jp/?p=9470)の表46(p61)参照)


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図4 休日のリアルタイムおよび録画テレビ視聴時間に関連する要因:
重回帰分析で有意な関連性のみられた要因のみ記載
(詳細は報告書(https://www.bpo.gr.jp/?p=9470)の表47(p62)参照)

平日と休日ともに、家庭外での活動時間が少ないことと親(母親)との番組共有度が高いことが、テレビに向かい合う時間を長くする方向で主効果(解析に投入した他のすべての要因の効果を考慮したとしても、その要因の効果が相殺されることなく認められること)がみられた。子どもが家庭にいる時間の長短にかかわらず、番組を親子で共有し、一緒に楽しむかどうかが中高生のテレビ時間の多寡に影響することが示唆されたといえよう。背景として、親自身のテレビに対する嗜好性や親子関係の良好さが関係していると思われ、今後こうした要因を測定しつつ、具体的にどんな番組を共有し、そこでどのような対話がなされるのかなどコンテンツに踏み込んで検討することによって、より深まった分析が可能になると思われる。また、今回は調査上の制約から保護者1名(ほとんどの回答は母親)についてのみ測定したが、父親や祖父母、きょうだいなど同居家族全体に広げて検討することが望まれる。

(3) 家族とのテレビの共有

上記(2)の重回帰分析で明らかになったように、親子での番組共有は青少年のテレビ視聴時間に比較的強く関連する要因であった。思春期・青年期といえば、精神的自立を求めて強く自己主張したり対立したりといった"疾風怒濤"の時期であり、家族のなかにあってもプライベートな時間を大切にし、親とも疎遠になりがちなイメージが強い。自分の見たい番組をひとりで楽しむ時間はむしろ、スマートフォンやパソコン、タブレット端末等の新しい媒体によって増え、親子で共有するテレビ時間は減少していくのではないかと予想することもできよう。

しかし、今回の調査で家族とのテレビ視聴の共有の程度について中高生に尋ねたところ、60.6%が「ほとんど」「たいてい」家族といっしょに見ると回答し、「半分くらい」以上の高い頻度では合計83.6%と高い割合を示した(表4)。平日1日・休日1日のテレビ視聴に関する日記票においても、視聴全体の平均時間に対する親・家族と一緒にみた平均時間の割合を算出すると、平日のリアルタイム視聴で71.9%・録画/オンデマンド視聴で47.6%、休日のリアルタイム視聴で64.9%・録画/オンデマンド視聴で42.6%であり、録画/オンデマンドでは半数以上がひとりで視聴していたが、リアルタイム視聴では家族と一緒にテレビを共有していた中高生は6~7割と多数であった。保護者回答版において、「親子でテレビを見て一緒に笑ったりする」に「いつも」「時々」と回答した保護者も93.4%と高率であり、中高生のいる多くの家庭で、テレビは家族のコミュニケーションを円滑にする役割を担いながら共有されていることが伺える。"積極的に見たい番組"として"家族一緒に楽しめるような番組"を挙げた者が7割以上であったことも、現在の日本の中高生の家族視聴志向の強さを表すものと考えられる。

表4 家族とのテレビの共有傾向 report_02_261_08.jpg

家族でのテレビ共有度の高さと中高生の生活満足感(楽しい毎日をおくっている、自分の生活に満足している等の7項目)との関連を分析したところ(図5)、家族とテレビを共有している群のほうが共有していない群よりも、有意なレベルで生活満足度が高い傾向が見られた。思春期・青年期にあっても親子一緒にテレビを楽しめることは、親にとってはうれしいことに違いないと思われるが、子ども自身にとってもポジティブな意味合いをもっていると推察される。家族のテレビ共有度の高さの原因として、"一家に一台の大型テレビ"の普及という物理的な要因の影響も想定されるが、リビングの大型テレビを共有するなかで家族のコミュニケーションが活性化し、そのことが"家族と一緒にテレビを見たい"という青少年の動機づけを高めることにつながることも考えられる。思春期・青年期での家族関係とテレビを媒介としたコミュニケーションとの関連の因果性については、継時的な研究で明らかにされるべき課題である。

report_02_261_09.jpg 図5 中高生の主観的幸福感と家族とのテレビ共有度との関連
(主観的幸福感の得点平均値に関する差のt - 検定)

以上、2017年秋に実施した調査の結果の一部について報告した。限られたサンプル数ではあるが層化抽出法によってサンプリングした全国の中高生を対象としたこと、青少年自身に加えて子どものテレビ番組に対する保護者の意識や行動についても部分的ではあるが尋ねることができたこと、また平日・休日の2日間について、どこで・どの媒体で・いつテレビ番組に接したかがわかる日記票を用いたことが本調査の特徴である。インターネットがますます発達しつつある現在、媒体としてのテレビや放送局が制作するテレビ番組が、今後、青少年たちにどのように視聴され、彼らの生活や心身の成長にどのような影響を及ぼすのか、スマホ等の他の媒体の影響とともに、より精緻に検討していく必要があるだろう。

※本研究は、松本聡子(お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所 特任アソシエイトフェロー)、猪股富美子(お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所 アカデミック・アシスタント)および放送倫理・番組向上機構[BPO]青少年委員会との共同研究である(BPO青少年委員会「青少年のテレビ・ラジオに対する行動・意識の関連要因に関する横断的検討」調査研究報告書(2018, https://www.bpo.gr.jp/?p=9470)。

筆者プロフィール
Masumi_Sugawara.jpg 菅原 ますみ

お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系教授。国立精神・神経センター精神保健研究所室長を経て、2002年よりお茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授、2006年より現職。専門は発達精神病理学・教育心理学で、子ども期のパーソナリティの発達や精神病理の発現に影響する家庭・保育・学校環境、メディア環境について研究している。妊娠期から成人期までの長期追跡調査や、双生児を対象とした行動遺伝学的研究などをおこなっている。
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