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論文・レポート

海外留学を断念する前に、ぜひ知っておきたい大切な情報:米国大学の国際交流室職員の視点より- パート2

リチャード H. ポーター(テキサス工科大学国際交流室・留学生サービスセンター長)

2018年11月22日掲載

要旨:

近年、国を国際化し、グローバルな人材を輩出するために、日本では国を挙げて一連の取り組みが行われてきた。これらの施策には、より多くの日本の学生が海外に留学するよう奨励するものが多く含まれている。しかし、現代の日本人学生は様々な理由で留学することを躊躇しており、また留学を選択した学生の殆どが短期留学プログラムに参加しているという現状がある。学位を得るような、より影響力のある長期留学プログラムへの参加は過少である。学生がこれらの長期留学プログラムへの参加を躊躇する理由の1つは、留学にかかる費用不足である。この記事では、私自身の経験に基づき、米国での学位取得にかかるコストを抑えるためのさまざまな方法について説明する。
English
背景

これまでの10年間、国は日本の将来への大きな投資として、様々な国際教育の施策 (MEXT, 2016など) を行ってきた。それは日本社会を国際化し、日本の未来を担う「グローバル人材」を増やすことが目標である。このために、国際化を目的とした小中高校の様々なプログラムへの資金援助をしている。それは留学を奨励することが、生徒や学生たちを国際化させるための最も影響力のある方法だからである(Asano & Yana, 2009; Huang, 2015)。

国と民間セクターの施策により提供された資金の中で、留学奨励を目的として提供されているものの殆どは、短期の留学プログラムを支援するものである (Porter, Edmond & Ota, 2018)。最近の調査によると、最近の短期留学プログラムへの参加が増加しているのは、この政府の支援と深く関わっていると言われている(Porter, Edmond & Ota, 2018)。しかしこれらの短期プログラムが、国と学生自身が望むグローバルなスキルを獲得するためにどの程度影響を与えるかは、まだはっきりわかっていない。本稿では、この短期プログラムの効果についてさらに掘り下げることはしない。もちろん短期の留学経験は、国が目的としているグローバル人材の育成において、ある程度有益であろう。しかし、留学によりどの程度グローバルなスキルを獲得してきたかという度合いは、その留学経験の長さが大きく影響すると考える。短期プログラムは有益であるものの、複数の社会文化に適応し、二つの言語を話すことができるような人材を育成するためには、長期の留学はより効果が高いと思われる。 私が数年前に行った日本の大学における海外留学に関する調査と最近の日本人学生の留学に関する研究を概観すると(小林、2011; Lassegard, 2013; Ota, 2011など)、海外留学への障壁としていくつか共通点が見られる。その中で最も顕著に見られたのが、留学するための資金不足である。本稿では、米国の大学へ長期留学するために、どのように資金不足に対処することができるか、情報を提供したい。このことにより、多少の冒険をしてでも米国の学位を取得したいと考えている学生たちへの少しでも手助けになることができたらと願っている。

米国大学での学位取得のための資金を得る方法について

残念なことに、米国に留学し学位を取得するためには高額な費用がかかるのである。米国の高等教育がなぜ高額なのかについては、多くの理由がある。The Atlanticに掲載された最近の記事("なぜアメリカの大学はとても高価なのか? " (Ripley, 2018))では、米国大学で学位を得るために必要とされる費用の増加について次の要因を挙げて説明している。

  • アドバイザーや学生の健康管理の専門家など、教員以外の支援スタッフの増員
  • 学生一人に対する州および地方自治体による財政的サポートの減少
  • 大学のランキング重視による、大学の研究費への財政投資の増加
  • 大学教育を受ける学生数の増加
  • 非常に大きな割合を占める"大学教育を受ける準備ができていない" 学生を援助するために必要な資金の増加
  • レクリエーションセンター、近代的な寮、新しい学生センターなどの学生生活のための施設への投資の増加

これらおよび他の要因のために、米国の公立大学の学士号取得にかかる費用は、20年前と比較し213% の増加となった(Martin, 2017)。ちなみに、留学生が支払わなければならない費用は、州外の学生が支払う授業料と留学生向けの学費であり、これらは州内の学生が支払う学費の少なくとも2倍の金額であることを考えると、さらなる負担である。

一方で日本の学生も、米国の大学生が利用している学費の節約の方法などに精通していれば、比較的安価に長期留学することが可能である。これらのコスト削減戦略は次のとおりである。

  1. コミュニティカレッジで大学の最初の2年間の単位を取得し、4年制の大学に編入する。
  2. 学費補助として、大学内の仕事を探す。
  3. 比較的生活費の安い地域や授業料の安い米国の大学で学位を取得する。
  4. 日本政府の奨学金に応募する。
  5. 在学している日本の大学が提供している米国の提携校での共同学位プログラムに参加する。

以下、米国大学の国際交流室職員として20年以上勤務した経験に基づいて、それぞれの戦略について説明していく。

1)コミュニティカレッジで最初の2年間勉強する
2年間コミュニティカレッジに通う費用は4年制大学よりもはるかに少額である(1年あたりの授業料を比較した場合)。このため、留学生はコミュニティカレッジで最初2年間学び、その後4年制大学に編入することによって、費用を大幅に削減することができる。この2年間のコミュニティカレッジ(もともとは地域住民のために作られた授業料が安く、入学しやすい2年制大学)は、日本のいわゆる2年間の短期大学や専門学校と少し異なっている。米国の4年制大学の最初の2年間の一般教養コースを、代わりにコミュニティカレッジで取得し、4年生大学に3年生として編入後、残りの2年で自分の専門の学部で学ぶことができるため、はるかに少ない費用で大学の学位を得ることが可能である。この2+2プログラム(コミュニティカレッジに2年間、その後、4年制大学に2年間学んで卒業することから、この進学方法はアメリカでは2+2と呼ばれる)によって学生に発行される学士の学位記は、4年制大学のみで得られる学士の学位記と同じである。さらに、コミュニティカレッジにおける学生・教員の比率は、4年制大学と比較し、はるかに低いことが知られている。米国の大規模な4年制大学の一般教養のコースは、受講生の数が多く(例:500人)、大規模な講義室で行われる場合が多い。また大学のこれらの一般教養コースを担当するのは、専任教員ではなく、ポスドクや大学院の助手である可能性が高い。反面、コミュニティカレッジでは、専任教員によりはるかに少人数のクラスで行われるため、学生は教員より手厚い指導を受けやすいというメリットがある。特に小規模なクラスは、英語と米国の教育システムにまだ慣れない留学生にとっては、教員からのサポートが得やすいという点で有益であると考えられる。このため、2+2の教育ははるかに安価であるだけでなく、留学生のニーズに応じたよりよい教育を受けやすいという可能性が考えられる。

2)学費補助として、大学でアルバイトをする
アメリカの学生は学費を稼ぐために、大学のキャンパス内でアルバイトをする場合が多い。留学生は、夏期・冬期休暇期間中はフルタイム、通常の学期では週20時間のアルバイトをすることが許可されている。これらの経験は、お金を稼ぐだけでなく、日常的に生きた英語を使い、アメリカ及び他国から来た留学生と友だちになれるというメリットがある。またキャンパス外で働くことも、次のような場合には許可されている。自分の専攻に関連したインターシップや仕事で、かつ留学生オフィスのアドバイザーからの許可を得られる場合である。さらに大学卒業後、米国政府より承認を受け、Optional Practical Training (OPT)を得ることにより、12ヶ月から36ヶ月(分野によって異なる)アメリカで働くことも可能である。卒業の目途がたった時点で、留学生は、留学生アドバイザーに相談し、OPTの願書を準備する。移民局により承認されると、カードが証明書として発行され、それを雇用者に提示することにより、米国でフルタイムで仕事に従事できる。この米国での仕事の経験は、留学生の将来的なキャリアアップに非常に役立つと思われる。OPT取得者は、そのままアメリカで就職する場合もあることから、留学生にとっては大きなチャンスであると思われる。

3)物価の安い地域の大学、学費の安い大学を探す
留学生によく知られているカリフォルニアやニューヨークなどの地域よりも、あまり知られていない地域の大学で学ぶことを検討するべきである。日本の留学生は、米国の西海岸または東海岸に集約しやすい。しかし、優秀な大学は、米国全体に広がっており、これらの学校は、西海岸や東海岸の大学よりも安価なことが多い。また物価が安いために、生活費を抑えることも可能である。

日本人はカリフォルニアの大学を希望することが多いが、これは主によく知られている地域であるからと考える。私自身は、出身地であるカリフォルニアの大学を卒業したが、米国の様々な州で働いた経験をもっている。テキサス州の幾つかの大学で管理職を経験し、博士号はテキサス州のサムヒューストン州立大学で取得している。これらの経験に基づいて、カリフォルニア州よりもテキサス州の大学で学ぶことについての利点について、述べたい。

  • テキサス州には、米国最高ランクの公立および私立大学がある(例えば、ライス大学、テキサス大学など)。
  • テキサス州の生活費は、通常、東海岸や西海岸の都市よりもはるかに低い。
  • テキサス州の主要空港からの国際線の料金は、東西の海岸からのフライトの料金とあまり違いはない。東京からダラス、ヒューストンなどのテキサス州中心部への直行便がある。
  • 大手の日系企業がテキサス州に数多く移転している。最も顕著な例は、2016年にカリフォルニアからテキサスに北米本社を移転したトヨタである。テキサス州で学ぶ日本人学生には将来的に雇用機会があるかもしれない。
  • 留学生として米国のコミュニティカレッジで学んだ場合(テキサス州に限らない)、成績が良いなどの条件を満たせば、1,000ドルの編入奨学金を得て、テキサス州の公立大学に編入することも可能である。また、この1,000ドルの奨学金は、留学生を含む学生が州内授業料(奨学金をもらえることにより、州内授業料で編入可能)を支払うための資金として最大2年間もらうことが可能である。

4年制大学に4年間通う場合と、このようにコミュニティカレッジから4年制大学に編入することにより支払う学費の違いは、大きいものである。下記の表は、ヒューストンの近くのコミュニティカレッジで学んだ後にテキサス工科大学へ編入する場合の学費と、4年間テキサス工科大学で学ぶ場合の学費の比較である。

 2+2 (コミュニティカレッジに2年間+4年制大学に2年間通う)の場合4年制大学に4年通う場合
留学生の授業料とその他の学費a.コミュニティカレッジでの授業料
b.1000ドルの編入奨学金をもらい(次の年に再び1000ドルもらう)、4年制大学で州内学生の授業料とその他の学費を払う場合。
州外学生の授業料と留学生に課される費用
コミュニティカレッジ2年間と4年制大学の2年間における授業料とその他の学費a. $4,740×2年= $9, 980
b. $7,860×2年= $15,720
$18,652×4年
合計費用$25,700$74,608

テキサス州への留学は、日本人にはあまり知られていない地域に留学する利点の一例である。

4)日本政府の奨学金に応募する
現在の国の政策として行われている留学生の資金援助としての奨学金(主にトビタテ奨学金)のほとんどは、短期プログラムのために給付されている。しかし、長期プログラムのためにそのような奨学金が利用できない、あるいは競争率が高すぎると諦めてしまう必要はない。実際、私の勤務地であるテキサス工科大学の大学院プログラムにおいて、トビタテ奨学金をもらって勉強している学生たちを知っている。このことから、短期留学ではなく、長期留学に対してもこのような国の資金援助などを探すことは有効であると考える(注:トビタテ奨学金は、8日間から2年以内の留学プランに適用される)。

5)米国の提携校で共同学位プログラム(Dual degree program)に参加する
U.S. News、Word News及びNew York Timesによると、米国の共同学位プログラムは増加傾向にある。国際共同学位プログラムは、米国の大学と日本の大学が共同で提供する研究プログラムで、日本の大学と米国大学の2つの学位の授与につながっている。これらのプログラムに参加する学生 (通常、日本の大学で2年間、米国の大学で2年間) は、結果的に米国留学への学費を抑えることができる。米国の大学に、安価に留学する戦略の一つである。現在行われている共同学位プログラムの例は、次のとおりである。

  • イリノイ州立大学と日本大学の人類学の学位
  • アルバニー大学と関西外国語大学の学位の様々な学位
  • セントエドワーズ大学のBachelor of Artsと立命館アジア太平洋大学の学士号(アジア太平洋学)
  • ワシントン大学と慶應義塾大学の法学修士号 (大学院学位)

大学院でリサーチ・アシスタントまたはティーチング・アシスタントとして働く

別の方法としては、日本で学士号を取得した後、米国の大学院で学ぶことである。米国の大学院で、比較的安価に学ぶ方法についてあまり知らない日本人は多いかと思う。2017年に米国の大学院に進学した中国からの128,250人の留学生の多くは、このようなかたちで資金援助を得ていることが報告されている (IIE, 2017)。これは、米国の大学院が、院生をアシスタントという方法で雇用する場合が多いことから可能となっている。これらは、リサーチまたはティーチング・アシスタントと呼ばれている。

日本人である私の妻は、博士課程在学期間にリサーチ・アシスタントやティーチング・アシスタントとしてミズーリ州立大学で働き、学費は免除され、大学院生に支払われる少額の給料を得ていた。その結果、借金なしで博士課程を修了することができた。このことから、米国の大学で学びたくても資金がない学生は、大学院でリサーチ・アシスタントやティーチング・アシスタントとして費用の援助を受けることが可能である(注:アシスタント採用の条件には、英語能力や大学での成績、GRE *のスコアなど様々な要因が関わってくる)。たとえ大学院入学前にこのようなアシスタントシップを得られなくても、大学院で学び良い成績を修め、教授陣と仲良くなることでこのようなチャンスを得ることも可能である。先ほど述べたような日本政府のトビタテ奨学金を使って大学院で学ぶことも別の方法として考えられる。

アメリカの大学が出す奨学金を得る

アメリカにおいては、大学よりも大学院で学ぶための奨学金の方が留学生にとって得やすい(先ほどのコミュニティカレッジの編入奨学金は例外である)。このような大学院の奨学金は、学部あるいは大学院のアドミッション・オフィスなどで出している。先ほどのテキサスの例をもう一度あげると、コミュニティカレッジの編入奨学金と大学で州内授業料の適用を受けた学生は、大学院でも州内授業料の適用を受けることが可能である。大学院でリサーチ・アシスタントやティーチング・アシスタントの職を得られなくても、このようにして授業料を安くすることが可能である。

おわりに

留学するための資金の欠如は、日本の学生が米国の大学で学ぶ上で直面する主な障壁の一つである。もう一つ、日本の学生が留学する上でよく障壁になるのは、英語能力の欠如である。次の記事では、日本の学生がこの障壁を克服し、米国の大学で成功するために必要な支援を受ける方法について説明したい。

訳:ポーター倫子 (ワシントン州立大学人間発達学部講師)



  • * Graduate Record Examinationと呼ばれる、米国やカナダの大学院進学に必要な共通試験。
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References

  • Asaoka, T., & Yano, J. (2009). The contribution of "study abroad" programs to Japanese internationalization. Journal of Studies in International Education, 13, 174-188. doi:10.1177/1028315308330848
  • Huang, F. (2015). The internationalization of Japan's academy across research and non-research universities. Journal of Studies in International Education, 19, 379-393. doi: 10.1177/1028315315574102
  • Institute for International Education (2017). Open Doors. Retrieved from https://www.iie.org/Research-and-Insights/Open-Doors
  • 小林明 (2011).「日本人学生の留学阻害要因と今後の対策」『留学交流』2, 1-11.
  • Lassegard, J. P. (2013). Student perspectives on international education: An examination into the trend of Japanese studying abroad. Asia Pacific Journal of Education, 33 (4), 365-379.
  • Martin, E. (2017, November 29). Here's how much more expensive it is for you to go to college than it was for your parents. CNBC Make it. Retrieved from https://www.cnbc.com/2017/11/29/how-much-college-tuition-has-increased-from-1988-to-2018.html
  • MEXT (2016). Support for internationalization of universities. Retrieved from http://www.mext.go.jp/en/policy/education/highered/title02/detail02/1373875.htm
  • Ota, H. (2011). Why students are staying away from study abroad. Education and Medical Science, 59(1), 68-76.
  • Porter, R., Edomond, R. & Ota, H. (2018, May). Recruiting students from Japan: Current opportunities and challenges. Session conducted at the meeting of the Association of International Educators, Philadelphia, PA.
  • Ripley, A. (2018, September 11). Why is College in America So Expensive? The outrageous price of a US degree is unique in the world..The Atlantic. Retrieved from https://www.theatlantic.com/education/archive/2018/09/why-is-college-so-expensive-in-america/569884/

筆者プロフィール

Richard_Porter.jpg リチャード ポーター
約25年間、米国の大学で国際教育に携わり、現在はテキサス工科大学留学生及び外国人研究員支援課室長。TESOL(第二言語としての英語を教える)の資格をもっていたこともあり、1993年より6年間日本に在住、その間私立短期大学で英語講師として勤務。近年は、日本人の海外留学をテーマに研究を行っており、このテーマで書いた論文で博士号を取得。2016年には、在日米国大使館よりチームアップ・プロジェクトの助成金を受けたほか、韓国および台湾にてフルブライト国際教育職員プログラムに参加。
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