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新年に寄せて

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今年ほど、新年のご挨拶に力を込めたい年はありません。

新型コロナウイルスが蔓延するようになり、すでに3年になります。昨年の年明けは、流行株が死亡率の高いデルタ株から、死亡率は低いが感染性の強いオミクロン株に変わったくらいで、まだ明るい見通しが全く立ちませんでした。でも今年は、感染者数は多いもののワクチン接種などの効果で、明らかに重症者や死亡者が減り、少し明るい見通しが出てきました。日本の政府や専門家会議はまだ慎重な姿勢を崩しませんが、インフルエンザ並みの扱いになる日が見えてきたような気がします。

世界全体では、2022年はウクライナへの侵攻で暗雲立ち込める一年でした。まだ行く末はわかりませんが、大国が他国に侵略するという信じられない出来事に対して、世界の多くの国が団結した成果が出てきているような気がします。

国連の障害者権利委員会が、日本の障害児の「特別支援教育」はインクルーシブではなく、分離教育であると認定したことも(予期されたことでしたが)、昨年の嬉しくないニュースですが、勧告をきっかけに真のインクルーシブ教育に近づければと願わずにはおられません。

昨年はこうした暗雲が立ち込めた一年でしたが、子どもたちにとって明るい話もありました。一つは新型コロナウイルス感染症による子どもの死亡率が、成人や高齢者と比べると極めて低い傾向だということです。亡くなった子どもはゼロではないではないか、というお叱りの声も聞こえそうですが、この傾向自体は前向きに捉えて良いと私は思います。

CRNが音頭をとってアジア8カ国で行った子どものレジリエンスとウェル・ビーイングの調査研究では、コロナ禍にかかわらず子どもたちのQOL(Quality of Life、生活の質)は高く保たれていること、またレジリエンスを高める要因のいくつかが明らかになったことも、嬉しいニュースでした。

紆余曲折があり、まだその全貌が分からないとはいえ、こども家庭庁の設置が決まったこともまずは喜んで良いニュースでしょう。

もう聞き飽きた言葉になりますが、今年こそ子どもたちにとって幸福な一年となることを祈念します。CRNも微力ながらそれを後押ししたいと思います。


筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。小児科医。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)、「子どもの発達障害 誤診の危機」(ポプラ新書)、「図解よくわかる発達障害の子どもたち」(ナツメ社)など。
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