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【イギリスの子育て・教育レポート】 第14回 小学校の年度末② 「泣かせる通知表」を持って帰ってきた!

橋村 美穂子

2017年3月24日掲載

要旨:

今回は、イギリスの小学校の年度末のシリーズ第2回として、「年間通知表」を紹介する。息子がイギリスの公立小学校からもらった年間通知表の特徴は2つある。1つは評価は各科目ごとに文章でぎっしり書かれていること。この1年でできるようになったことが具体的に書かれているため、息子のがんばりが手にとるようにわかり、ホロリとさせられた。2つめは、主要4科目(英語のリーディングとライティング・算数・科学)には到達目標に対して現在、我が子がどのレベルにあるかが明記されていることである。
子どもの到達度を具体的に書ける背景には、学年や学期ごと、また毎日の授業ごとの工夫があるようだ。まず、息子の学校では各学年、各学期ごとの評価規準を独自に定め、それに沿って評価している。息子の英語のように、他の児童より習熟度が大きく下回る場合は、下の学年の規準を使用し評価する。また、毎日の授業では、授業ごとにねらいと3~5つの到達目標が設定され、子どもが授業で使用するノートに評価を記入するというシステムを運用している。先生だけでなく、子どもの自己評価やクラスメイトによる評価を記入するところが興味深い。

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この連載では、小学生の息子をもつ母親による「イギリスの子育て・教育」体験レポートをご紹介します。

春の訪れを感じる季節になりました。卒業式や修了式を迎え、通知表をもらったお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか。前回、「小学校の年度末」シリーズの1回目として、学年末最後の1週間の学校行事を紹介しました。2回目の今回は、息子が学年末にイギリスの小学校からもらってきた「通知表」を取り上げます。タイトルにもあるように、読んでホロリとする通知表だったのです。

イギリスと日本の小学校の通知表、どこが違う?

「なぜ泣かせる通知表なのか」という詳細に入る前に、息子の現地校(公立小)の通知表について簡単に紹介します。

イギリスでは、年度末の7月に個人の到達度を詳しく伝える年間通知表(Annual Report)を配布します(学校によって異なりますが、年間通知表に加え、学期ごとに簡易版の通知表を渡す場合もあります)。この年間通知表には、出欠の記録、各教科の評価、現在のサポート状況(英語の特別指導を受講しているなど)、総合評価が書かれています。通知表の項目は日本とほぼ同じです。

しかし、息子がもらってきた通知表は日本と大きく異なる点が2つあり、驚きました。1つめは、評価の仕方です。日本では「よくできる」「できる」「もう少し」といった3段階で評価されることが多いようです。しかし、息子の年間通知表の評価は各科目ごとに文章でぎっしり書かれていました(写真1)。主要4科目はもちろん、体育、音楽、宗教教育、英語の特別指導など合わせて14科目それぞれに5~10数行、文章で評価が書いてありました。ですので、年間通知表は表紙を含めてA4判6枚ものボリュームです。

2つめは、英語のリーディング・ライティング、算数、科学の主要4科目には「国が定めた到達目標(national expectation)」に対する現在の息子のレベルが明記されていることです(写真2)。これは日本の公立小学校の通知表ではあまり見かけないものだと思います。例えば、算数の到達目標は「Y4S」と書いてあります。これは「4年生(Year4)終了時までに確実に(Secure)到達することが望ましいレベル」を意味します。息子の算数の評価は、到達目標と同じ「Y4S #2」でした。「#2」は、到達目標に対する現在のレベルを示します。#1(目標より下)~#4(目標を大幅に超える)の4段階あり、#2は目標と同レベルを意味します。イギリスで毎週土曜日に日本人補習授業校に通い、日本語で算数を学び続けていたため、算数では「到達目標に対して同程度」という思ったよりよい評価をもらうことができました。しかし、英語のライティングについては、「EALT」と書かれています。これは、英語の初心者であるため、残念ながら学校のカリキュラム内ではまだ評価できるレベルではないという意味なのです。

息子の学校の資料によると、2015年9月より国の指針が変更になり、評価方法は学校独自に決めてよいことになったそうです。そのため、現在、学校ごとに評価の仕方が大きく異なります。今回ご紹介している内容は、あくまで息子の学校の一事例であることをあらかじめご承知おきください。

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写真1 コメントで埋め尽くされた通知表(英語のリーディング・ライティング・算数)

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写真2 主要4科目に関する「国の到達目標との比較表」。

この1年の成長ぶりと先生の温かいまなざしに泣けてきた

「泣かせる」のはその内容です。特に英語の特別指導の先生は、最も長いコメントを書いてくれていたため、息子の状況を非常に具体的に理解することができました。以下、英語の特別指導の評価コメントです(写真3)。

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写真3 英語の特別指導の先生の22行にわたる熱いコメント!

Aさん(息子の名前)は、英語の初心者として昨年11月に編入してから、すばらしい進歩を遂げています。彼は現在、簡単で口語的な英語を理解でき、サポートがあれば、質問や簡単な指示に答えることができます。また、いつも文法的に正しいとは限りませんが、簡単な文章を話すことができています。英語で会話をする機会が増えれば、さらに伸びていくでしょう。
英語の読解も大変よい進歩を遂げています。今は1・2年生で学ぶ重要英単語をすべて読むことができます。よくがんばりました!読んでいる文章の基礎的な理解もできています。今後、語彙が広がっていけば、さらに進歩していくと思います。
英作文においては今、以前に比べ大人のサポートを受けずに自分の力で文章を書けるようになっています。彼の現在の目標は各文章に動詞を含めること、また、大文字で始め、ピリオドで終わるというルールをより確実にマスターすることです。
彼には英語の読解や英作文においては引き続き、一定の支援が必要ですが、5年生でも彼といっしょに学ぶことを楽しみにしています。本当によくがんばりました。Aさん、あなたは自分の成果に誇りをもつべきです!
※一部を抜粋し、筆者が和訳。

息子の1年間のがんばりが手に取るようにわかったことに加え、先生の温かなまなざしや励ましに読みながらホロリときました。上記はほんの一部を抜粋したものですが、この評価の中には、「子どもができるようになったこと」「今後の目標や課題」「子どもの努力や進歩へのほめ・認め」などいろいろな要素が入っていることに気づかされます。私が経験した限り、日本の通知表では先生が主観的なほめ言葉を使うことは少ない気がします。しかし、イギリスでは「よくがんばりました!」「あなたは自分の成果に誇りをもつべきです」といった、がんばりをねぎらう表現を通知表に使用するのが新鮮でした。

短い勤務時間の中で、こんなに詳しい通知表をどうやって書いているのか?

通知表をひと通り読み終わって思ったのが、このような通知表を短い勤務時間の中で、どうやって書いているのかということです。第2回でも紹介したように、イギリスでは子どもたちが習熟度別に分かれて勉強している科目もあり、個人によって習熟度が異なる場合が少なくないのです。約30人の子どもに対して、担任とティーチングアシスタントの先生の2人で担当しているので、子どもの状況をしっかり把握できることも一因かもしれません。しかし、この1年に「できるようになったこと」を詳細に書ける背景には学年・学期ごとと、毎日の授業ごとの2つの工夫もあるようです。

まず、学年・学期といった長期的な視点からの工夫とは、担任の先生に確認したところによると、各学年や学期で望まれる評価規準が学校独自に「~できる」という形で定められ、それに沿って評価していることだそうです。息子の英語のように、習熟度が他の児童よりも大きく異なる場合は、下の学年の評価規準を使用し評価しています。

2つ目は、毎日の授業での工夫です。息子の小学校のHPによると、授業ごとにめあてと3~5つの到達目標が設定され、子どもが授業で使うノートに評価を記入するシステムを運用しているのです(写真4)。☆印は「よくできる」、→印は「できる」、△は「もう少し」、その下にあるSPTのSは「自分(Self)」、Pは「クラスメイト(Peer)」、Tは「先生(Teacher)」いう意味で、先生の評価だけでなく、自己評価やクラスメイトの評価も記載されるところが非常に興味深いです。このように、授業ごとに現在できることや今後の課題を把握しているので、具体的な評価が書けるのかもしれません。

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写真4 4年生のある日のライティングのノート。
授業のめあて(WALT:We Are Leaning To)と到達目標と評価。
一番下に書いてある目標が最も簡単で、「階段」を上るにつれ、難しくなる。

息子がイギリスの小学校からもらってきた通知表は、子どもができるようになったことがよくわかること、また主要4科目については、到達目標に対してどのレベルかわかることもよいと思いました。息子のがんばりがよくわかり、通知表でジーンとするという初めての体験もしました。ただ、一方で、先生や教科による課題も見えました。英語の特別指導の先生のコメントは息子の様子をよく理解できたのですが、実は担任の先生が書いた算数や科学の評価は、今できることがずらりと書かれているだけで、どこが特に評価されているのか、また今後の課題は何なのかわからず、ピンとこなかったのです。日本の通知表と同じように、保護者の通信欄があったので、わからなかった点は直接先生に質問すればよかった、とこの記事を書きながら反省しました。

次回は、「イギリスでのアレルギー児の子育て」について紹介します。お楽しみに。

筆者プロフィール

橋村 美穂子(はしむら・みほこ)

大学卒業後、約15年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育総合研究所で幼稚園・保育所・認定こども園の先生向け幼児教育情報誌の編集長を務め、2015(平成27)年6月退職。現在は夫、息子と3人でイギリス中西部の街バーミンガム在住。
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