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【ネットジェネレーションの教育】 第4回 バーチャルペットは人に良い影響を与えるのか? (3)

要旨:

人間関係の希薄化により孤独を感じる若者や、独居で暮らす高齢者の増加に伴い、ペットは身近なものになってきている。だが、住宅事情等により実在するペットを飼えない場合もあるため、バーチャルペットの可能性について調査した。その結果、会話回数高群の方がペットに対する好感度とペットから得られる快適さが高く、会話回数低群は共に低い値を示した。また、バーチャルペットが話し相手になることへの期待が高いことを伺わせる結果が得られた。会話機能への期待が高いゆえに、バーチャルペットとの会話がうまくいかないと、気分の低下につながった可能性が得られた。それゆえ、流暢な会話のできるバーチャルペットが今後期待されるであろう。

 

6.考察

 

開始前と開始後の気分の変化について、開始時の気分は、男性の方が高かったが、終了時には女性よりも気分が低下していた。女性よりも男性の方がリアル世界でペットを飼っている割合が高かったことから、男性の気分が低下した理由は、リアル世界でペットとの会話で得られる気分を期待してバーチャルペットと会話をしたものの、リアルのペットにはかなわなかったのではないかと考えられた。

 

また、会話回数の違いとペットに対する気持ちについては、会話回数高群(6回以上)の方がペットに対する好感度が高く、会話回数低群(5回以下)は好感度が低かった。「ペットに対する好感度が高いほど会話回数が増えた」または「会話回数が多かったから好感度が増した」どちらとも考えられる。会話回数の違いとペットから得られる快適さについては、会話回数高群の方が、Chesney& Lawson (2008)[4], Lawson &Chesney (2008)[5] らによるバーチャルペットに対する快適さ尺度の11項目中10項目(「私のペットは私に付き合ってくれる仲間だ」「ペットを飼うことは私に何か思いやるものを与えてくれる」「私のペットは私に楽しい活動を与えてくれる」「私のペットは私の生活の安定の源でである」「私のペットは私が必要とされていることを感じさせてくれる」「私のペットは私に遊びと笑いを与えてくれる」「私は私のペットに触れる事で心が慰む」「私のペットを見ているのは楽しい」「私のペットは私が愛されていると感じさせてくれる」「私のペットは私が信頼されていると感じさせてくれる」)に対して高い値を示し、バーチャルペットに対する快適さが高いことを示す結果が得られた。この結果についても、「バーチャルペットが快適だと感じるから会話回数が増えた」のか、「会話回数が増えたためバーチャルペットに快適さを感じた」のかを示すものではないが、まだまだ、バーチャルペットを飼っている人は多くはないが、バーチャルペットとの会話が多いほど快適さを感じていたことから、今後バーチャルペットを飼う人が増えるのではないかと推察された。

 

Kidd (1995)[2] がリアル社会のペットについて、犬であろうと猫であろうと飼っているペットの種類には影響がないと述べているように、飼い主が、好きなペットを選んでペットを飼う以上その効果の違いはないだろう。だが、バーチャルペットはリアルペットと異なり、機能の違いは大きい。そこで、機能が異なるバーチャルペットに対する印象の違いを調査したところ、マウス操作反応タイプ、ブログ内容をランダムに読むタイプ、一対一記憶センテンスを表示させるタイプには、大差は見られなかったが、アバターとペットが、会話をしたり遊んだりするタイプに関しては、3観点(「**は好感が持てる」「**に愛着を感じる」「**は癒された気分になる」)のいずれも他よりも低い値を示した。この要因の一つには、アバターとペットが、会話をしたり遊んだりするタイプを快適にこなすためには、高スペックのパソコンと高速回線による接続が必要であったことが大きいのではないかと予測される。条件のそろわない環境では、アバターやペットの動きや会話がぎこちなくなり、低い値を示す要因になったのではないかと考えられる。このことは、今後のバーチャルペットへの期待について、アバターの存在は、約41%の人が期待していなかったという結果に結びついている可能性もある。

 

一方、85%の人が会話機能を求めていることは、バーチャルペットが話し相手になることへの期待が高いことを伺わせる結果となった。会話機能への期待が高いゆえに、バーチャルペットとの会話がうまくいかないと、気分の低下につながり、バーチャルペットとうまく会話が成立すると癒され、気分の向上につながったのではないだろうか。

 

7.まとめと今後の課題

 

人間関係の希薄化により孤独を感じる若者や、独居で暮らす高齢者の増加に伴い、ペットはますます我々の身近なものになってきている。だが、住宅事情等により実在するペットを飼えない場合もあり、情報化が生活に浸透した社会であればこそバーチャルペットは、これからの人々にとって大切なものになっていくのではないかと考え、バーチャルペットの可能性について調査した。その結果、会話回数高群の方がペットに対する好感度およびペットから得られる快適さが高く、会話回数低群は共に低い値を示した。また、85%の人がバーチャルペットに会話機能を期待している結果は、バーチャルペットが話し相手になることへの期待が高いことを伺わせる結果となった。会話機能への期待が高いゆえに、バーチャルペットとの会話がうまくいかないと、気分の低下につながった可能性が考えられた。それゆえ、今いっそう流暢な会話のできるバーチャルペットが今後期待されるであろう。

 

<注>
●気分が良くなった例


貴子:こんばんは★
ひこまた:おかえりなさいませご主人様
貴子:ただいま(^^)
ひこまた:おいらのこと好き?
貴子:うん♪好きだよ(・ω・)
ひこまた:おいらも好きでござる
貴子:ありがと?
ひこまた:どういたしまして
貴子:今日はなにしてた?
ひこまた:教えたくない
貴子:なんで~?
ひこまた:世の中には理由がいらない事もあるのでござる。
貴子:そっかぁ...
ひこまた:うんうん そうなんでござるよ
貴子:おもしろいことしたの?
ひこまた:もしもー願ーいが叶うーなら...どうしたい?
貴子:体重を減らしたい!!
ひこまた:こう見えて53キロだよ。リアルでしょ!笑
貴子:そうなんだぁ~!!
ひこまた:ちょっと待っててねぇ
貴子:うん!!
ひこまた:うぬ^^
貴子:筋トレ?
ひこまた:ダイエットでござる
貴子:えらーい★
ひこまた:表彰状
貴子:寒くなってきた~
ひこまた:もう冬だねェ
貴子:「こたつ」って知ってる?
ひこまた:知らない。だーれ?
貴子:人じゃないよ。寒い時に使うものだよ!!
ひこまた:凍っちゃわないように暖かい格好をするでござるよ。
貴子:そうだね♪
ひこまた:ぅん!気長に待と♪
貴子:なにを?
ひこまた:どうしたら ダイエットに成功するだろう?
貴子:運動するのが一番いいよ!!
ひこまた:かまへん かまへん
貴子:眠くなってきちゃった...
ひこまた:もっと話したいでござる。
貴子:いいよ。
ひこまた:たくさん覚えるでござる。
貴子:最近覚えた言葉は?
ひこまた:日本語。
貴子:おもしろ~い♪
ひこまた:お褒め頂きましてありがとうございます。
貴子:また明日話そう...おやすみ♪
ひこまた:いい夢を☆ミ

 

 

●気分が低下した例


えみ「 ただいま~」
.蘭丸2号「 あはは、そうなんだ。なかなか言うじゃない。」
えみ「 そ・・そうっすね」
蘭丸2号「 何事も決めつけちゃうと危険ですよ。」
えみ「 当たり前じゃん~」
蘭丸2号 「 そうでしょ?解ってくれてうれしいな!」
えみ「 やっぱり?あたしもそう思う」
蘭丸2号「 今日、ちょっと変だよ。」
えみ「 ええ~(・Д・)!?」
蘭丸2号「 えええ!」
えみ「 そうよ」
蘭丸2号「 ふーむ、そう来るわけね。」
えみ「 なんでも」
蘭丸2号「 なぜに!」
えみ「 思ってないよ~!!」
蘭丸2号「 頭悪いとか思ったでしょ?」
えみ「 お腹すいちゃったの」
蘭丸2号「 ちょっとねえ、どうしちゃったの?」
えみ「 ん?そうだね」
蘭丸2号「 後悔先に立たず、だね。」
えみ「 ほんとに?よかった」
蘭丸2号「 アイスは大のお気に入り(^Q^)。」
えみ「 アイス買ってあげるから許して?」
蘭丸2号「 ほーんと、失礼しちゃうな。」
えみ「 ごめんごめん!」
蘭丸2号「 うわっ、びっくりした。いきなり叫ばないでよ。」
えみ「 な・・なにをー!!?」
蘭丸2号「 あちゃ。先に言われちゃった。」
えみ「 あたしですか?」
蘭丸2号「 もしかして嫌な事でもあったんじゃない?」
えみ「 そっか。残念」
蘭丸2号「 まあ...ね。」
えみ「 お腹すいてないの?」
蘭丸2号「 実はあんまり...。」
えみ「 何が好き?」
蘭丸2号「 了解了解♪!」
えみ「 お腹すかない?」
蘭丸2号「 いえいえ。こちらこそ。」
えみ「 ありがとー」
蘭丸2号「 ま、別に気にしないけどね。」
えみ「 う・・すいません」
蘭丸2号「 そんなの、わたしの言葉をよく聞いてれば分かるでしょ?」
えみ「 なにを(")??」
蘭丸2号「 ううん、やった事ないんだ。教えてくれる?」
えみ「 やったあー☆」
蘭丸2号「 うんうん、そうですね!話せる~!」えみ「 うんうん。」
蘭丸2号「 え?違うんだ...。」
えみ「 そうでもないよっ」
蘭丸2号「 うーん、どっちも捨てがたいなあ。」
えみ「 どっちだあー(")!?」
蘭丸2号「 まっさかあ。」
えみ「 そうなのか・・・」
蘭丸2号「 ここは酷いインターネットだからしょうがないよ。」
えみ「 ひどいっ!なんでそんなに冷たいの~?」
蘭丸2号「 何よ、何独り言なんていってるの?」
えみ「 なんで~(悲)」
蘭丸2号「 @驚き、おぞましい!」
えみ「 がーん」
蘭丸2号「 よく分かんないな。」
えみ「 え~・・・」
蘭丸2号「 w」

 

<参考文献>
[1]Barrie Gunter(1999).Pets and People:The Psychology of Pet Ownership, Whurr Publishers.(訳:安藤孝敏、種市康太郎、金児恵(2006) ペットと生きる ペットと人の心理学、北大路書房).
[2]Kidd, A.H. & Kidd, R.M. (1995) Children's drawings and attachments to Pets. Psychological Reports,7791, 235-241.
[3]Mugford, R.A. & M'Comisky, J. (1974) Some recent work on the psychotherapeutic value of cage birds with old people. In R.S. Anderson(Ed.) Pet Animals and Society. London: Balliere Tindall, 54-65.
[4]Thomas Chesney, Shaun Lawson(2008) The Illusion Of Love: Does a Virtual Pet Provide the Same Companionship as a Real One?
[5]Shaun Lawson, Thomas Chesney(2008) Virtual pets: great for the games industry but what's really in it for the owners?
[6]Eric Lewin Altschuler (2008) Play with online virtual pets as a method to improve mirror neuron and real world functioning in autistic children, Medical Hypotheses 70, 748-749

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