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社会的に分かち合うプレイフルな構築主義 -キッチンにおける即興について-

ヒレル・ワイントラウブ (同志社国際中・高等学校)

上田 信行 (甲南女子大学)

2003年7月18日掲載

要旨:

本稿で著者は学習環境をキッチンに、学習することを料理に例えている。なぜなら学習も料理も、いろいろな種類の感覚を使い、プレイフルで協動的、構築的な作業だからである。そしてそういった考え方をすることによって、学習活動を周囲との交流やつながりから派生する、現実社会に当てはめることができるプロセスとして捉えることができる。また、参加者が体験する活動内容については、三層のケーキになぞらえて考察する。一番下の層は「手で触れて形作る」層、真ん中の層は「おいしい相互作用」、一番上の層は「ほろ苦い振り返り」である。これが社会的に分かち合うプレイフルな構築主義であり、私たちの新しい世紀に向けてのモットーである。

有意義な学習環境について考えた時、私達は"料理する"という概念をイメージしてきました。なぜなら学習も料理も、どちらもいろいろな種類の感覚を使いますし、プレイフルで協動的、構築的な作業だからです。全ての環境は以下の要素でもってキッチンに置き換えることができます。空間、活動、おもちゃや道具、人、の4つの要素です。これらの要素は私達の学習に対するプレイフルで即興的なスピリットを刺激するのです。そしてそういった考え方をすることによって、学習活動を周囲との交流やつながりから派生する、現実社会に当てはめることができるプロセスとして捉えることができるでしょう。

 

私達は教室や他の伝統的な学習の場を、固定され閉ざされたスペースと考えるのではなく、学習環境はプレイフルで刺激的なスパイスいっぱいの、学ぶ人のスピリットも取り込まれているようなものであると考え、そういったものをデザインしてきました。そしてここでは、今まで「先生」と呼ばれていたメタ・デザイナー達に料理長としての役割を与え、本当の意味で一緒に調理をするというゴールを目指してもらいました。参加者が訪れる前、彼らはドタバタしながらもよく考えていくつかの材料-空間、活動、おもちゃや道具、ファシリテーターを振り分け、配置したのです!

参加者は、料理を味わうだけの受動的な役割しか与えられていないわけではありません。むしろ、プレイフルな学習環境に足を踏み入れた瞬間から、参加者たちは、空間や活動内容をデザインしたり、ものや人と関わりを持ったりと、お互いに遊び、デザイン、そして料理の仲間になるのです。

ここまで、学習環境をキッチンに、学習することを料理に例えて話をしてきました。さて、ここからは参加者が体験する活動内容を三層のケーキになぞらえて考察してみましょう。

一番下の層は「手で触れて形作る」層です。キーコンセプトは、構築すること、デザインすること、結びつけること、そして関連づけることです。

この層を形作るにあたって、料理や遊びの仲間たちは、学校での学習によくあるように受動的なだけではなく、様々な感覚を通して自らの住む世界と深く関わりを持ち、経験をする活動に参加します。構築することは学習の重要な一部分であると私たちは考えており、このような活動は創造的に構築することと関連があるといえます。

真ん中の層は「おいしい相互作用」といいます。キーコンセプトは、アイディアを共有すること、刺激的な題材を用いて表現すること、創造する過程の自らの体験を語ることです。

第一の層で創造されたものは、ここでは創造したものを他の人と意見交換できるメディアに変化します。意見交換を通じて、創造したものに込められたこれまでにない新しい味わい方や、今まで気づかなかったアイディアに気づく方法を発達させていくことができます。私たちが、創造する情熱や他の人が創造したものを味わう興味関心は、このような交流を通して刺激されます。この情熱と興味関心は、悲しいことに多くの学校環境において不足しているものですが、私たちの考えるプレイフルな学習環境には不可欠なものです。

一番上の層は「ほろ苦い振り返り」です。キーコンセプトは、自らのものづくりの体験を深く掘り下げる、その掘り下げた内容を味わったり、再構築したり、見つめなおしたりすることです。

一番上の振り返りの層は、下にある二層の構築と交流の跡を見直すよう促します。行ったことや学んだことを再構築することで、我々個々人にとって意味のある形にものごとの理解を深めることができ、振り返りという過程がそのような新しいレベルへと活動の場を移す原動力になります。

プレイフルなデザインは、自発的で新しい創造力を育みます。私たちの考えるキッチン環境において、学習する人はただ他人が作った料理を口にするだけではなく、自らがシェフ、味わう人、自らの料理の評論家になるのです。自発的に参加したり、プレイフルで協力的な環境において規則性にとらわれないようにする方法を学んだりすることを通じて、参加者が各々にふさわしい学習環境デザインを認識することができるようになります。このようなキッチンにおける即興は、友人を招いて誰かと一緒に手作り料理を振舞うときのように、自らを力づけるようなデザインをつくりだそうとする精神とハンズ・オン、ハート・インの哲学を支援するものなのです。これがまさに、私たちの考える社会的に分かち合う、プレイフルな構築主義であり、私たちの新しい世紀に向けてのモットーであるのです。自らの学びをもっと即興性豊かなものにしましょう!

追記: この論文は、1999年10月24日に甲南女子大学国際子ども学センターで行ったワークショップの追記として書かれました。この論文のアイディアは、マッドパイのメンバーである宮田義郎氏、大森美弥氏、レアン・ラムゼイ氏とともに考えたものです。
出典: 甲南女子大学 国際子ども学研究センター発刊、「『子ども学』第2号2000年3月」『Socially Shared Playful Constructionism "improvisation in the kitchen"』

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