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所長ブログ

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何か変だよ、日本の教育(1) 新型コロナで休学中の膨大な宿題

榊原 洋一(CRN所長、お茶の水女子大学名誉教授、
ベネッセ教育総合研究所常任顧問)

2020年6月 5日掲載
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新型コロナウイルス感染症の蔓延で、5月末まで日本中の学校の休校措置が続いていましたが、いよいよ分散登校などの対策を取りながら、学校が再開しました。これまでの緊急事態宣言中も、医療機関はたとえ外出自粛が呼びかけられていても、休診にはできませんでした。先日も私の外来に、注意欠陥多動性障害などで治療中のお子さんと母親が10組ほど来られました。こうしたお子さんたちへの私の目下の大きな心配事は、長引いた休校や外出自粛で、お子さんがストレスを溜め込んでいないかということです。

母親の中には、子どものゲームの時間が増えたり、長い時間動画サイトを見てしまうことを心配されている方もおられましたが、奇しくも10人中3人の母親がある同じ悩みを打ち明けられました。

それは、休校中の子どもへの膨大な量の宿題についてです。注意欠陥多動性障害をもつ5年生の男児の母親は、音楽や習字も含め8科目全てに宿題が出され、消化しきれずに子どもが困っている、と訴えられました。さらに、「結局私が手伝うしかないんですが、私も仕事があり、仕事から帰宅した時間を充てるほかない」と困惑しておられました。

もう1人は、小学校に就学したばかりの6歳の男児の母親です。この男児には不注意や多動の症状があり、就学後の学校での生活の様子を見てから、注意欠陥多動性障害に対する投薬治療を開始するかどうか判断するために経過観察中です。お子さんの様子を尋ねると、「好きな動画サイトを見たりして、外出自粛によるストレスはないようです」と答えられました。ただそれに続いて「まだ字の読み書きが苦手なのに、宿題がたくさん出ているので困っています」と、前出の母親と同様の訴えをされました。

学校の先生方、ちょっと待ってください。学校がなく友人にも会えず、また外出が制限されている子どもたちのストレスをどうやって軽減するのかについて、大きな社会的な課題になっていることを皆さんはどう思っているのでしょうか。

さらに、園や学校がなかったために、自宅に籠もらざるをえなかった子どもたちの面倒を見るために、共働き夫婦が時間のやりくりで困っていたこともご存じなかったのでしょうか?

もちろん、学校の先生方が、子どもの学習進度の遅れを大変心配されていることはよく理解できます。しかし、そのことが却って多くのお子さんのストレスとその親御さんの身体的精神的負担を増やしていたことにお気づきにならなかったのでしょうか?

年度内に予定のカリキュラムが消化できないことは、もちろんお子さんの学習進度にも関わりますが、もしかすると年度内にカリキュラムを消化しなくてはならないという、ご自身の達成目標への懸念が、過大な宿題に反映されていることはなかったでしょうか。

課題が終わらずに登校してきている子どもたちがいるかもしれませんが、是非大目に見てあげてください。

また学校は再開したとはいえ、地域によっては、夏休みの短縮がすでに発表されているようです。その短い夏休み中も、今回の休校中のように大量の宿題が出されるとすれば、また同じように苦しむ親子が出てくるのは必定です。同様のことが再び起こらないか心配です。

少し気持ちが入りすぎたブログになりましたが、このような先生方はごく一部であると願いつつ筆を置きます。

 
筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)、「子どもの発達障害 誤診の危機」(ポプラ新書)、「図解よくわかる発達障害の子どもたち」(ナツメ社)など。
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