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所長ブログ

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最前線で働く物言わぬ医師や研究者への賛辞

新型コロナウイルス感染症に対する日本の対応策について、政治家や評論家、さらには数多くのタレントがテレビなどのマスメディアだけでなく、ウェブサイトで様々な意見の発信をしています。日本での感染者が増えるにつれて、「このままではもう手遅れ」とか、「日本の対応は感染症対策の基本さえできていない」とか、中にはアジアの国に避難している有名なタレントのように「日本のやり方は狂っている」と発言している方もいます。発言は自由ですが、社会的に発信力のある人は、ご自身の発言がどのような社会的影響を及ぼすのか、よくお考えになった上で発言してもらいたいと思います。そうした発言は、もちろん日本での対応方法についての再考を促すことにもつながりますが、多くの場合その意見を聞いた国民の不安を増強することに繋がりかねません。

クルーズ船の検疫体制を「ゾーニングがされておらずエボラ感染に対応したアフリカ以下」と酷評した感染症専門家がいましたが、不顕性感染についてご報告した記事に書いたように、感染した船客の大部分が、検疫が始まった時にはすでに感染していたことが、詳細な調査結果から明らかになっています。つまり、検疫開始後には、厚労省の検査官など少数の新規感染があったものの、検疫体制下では感染は広がっていなかったのです。

声高に意見を言うのではなく、クルーズ船での感染症の広がりを緻密な観察で解析し、新型コロナウイルス感染の実態の一部を明らかにしたこの研究者や、以前にご紹介した中国の子どもの新型コロナウイルス感染症の実態について、子どもは軽症であり死亡するような重症例は皆無ではないものの、少ないことを報告した上海交通大学の医師のように、事実を見つめて科学的確度の高い情報を発信し続けている人たちに賛辞を送りたいと思います。

私の敬愛するチャールズ・ダーウィンは、その著書『人間の由来(Descent of Man)』の中でこう言っています。
Ignorance more frequently begets confidence than does knowledge.
「(科学的)知識を疎かにする人は、知識をもっている人より、自信ありげに語るものだ」

筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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