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グレタさん

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんほど、人によってその評価が大きく分かれる人はいないかもしれません。私の周囲でも、グレタさんを高く評価する人と、逆に好きになれない人がいます。

違和感を示す理由は大きく三つあるような気がします。一つは、地球温暖化という考え方が、まだ科学的に絶対確実なものではないという視点からの批判です。世界の指導者を、科学的な根拠がまだ不確実な理論を理由に非難するのは行き過ぎだ、というのです。二つ目は、温暖化が事実だとしても、そう性急に大人を責めても、すぐには対応するのは難しいという立場です。急いて「よくもそんなことができるわね!(How dare you!)」と関係者を責めるのは酷だというのです。しかし、一番好きになれない理由は、一言で言えば「なにも分からない子どものくせに!」という父権主義的な子ども感に基づく違和感でしょう。

世界のリーダーの一人が、第三の立場から「友達と良い映画でも観ていなさい」といなしたり、「大人たちに対する糾弾に終わってしまっては、それも未来はない」と言い切る日本の若手政治家もいたりします。

私は、温暖化の理論の科学性はともあれ、グレタさんを応援しています。

CRNのスローガンは、「子どもは未来である」です。グレタさんには大人の世界のリーダーに対してHow dare you! という権利があります。なぜなら、グレタさんは温暖化が進んだ50年後の世界で、まず確実に生きて生活しているからです。彼女が叫んだ先にいる政治家は、50年後にはまず生きていないでしょう。そうです、子どもは未来なのです。

グレタさんを好きになれない人の第三の理由も、CRNとして看過できない大人視点の世界観に基づいています。子どもだから分からない、という父権主義が優勢な社会では、子どもはいつも受け身であり、その意見は永遠に無視され続けるでしょう。

「子どもは未来である」という名言を残して昨年暮れに亡くなられた小林登先生は、グレタさんのことをどのように思っていらっしゃるでしょうか?

筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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