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何か変だよ、日本の教育(5) ニックネーム禁止!?

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ニックネーム(あだ名)は、いじめの引き金になるというので、ある小学校では友達を「さん」付けで呼ぶように指導している、という話をニュース1で聞きました。この小学校の先生たちは、一体何を考えているのか、ビックリ仰天してしまいました。

発達小児科学の有名な教科書(Developmental-Behavioral Pediatrics, Levine編2)には、人が他人と社会的にうまくやってゆくための大切な手立てであるソーシャルスキルについての詳しい説明があります。集団での行動や友達付き合いが苦手な子どものために、ソーシャルスキル訓練をわざわざ行っている学校もあるといいます。

Levineはソーシャルスキルを言語的ソーシャルスキルと非言語的ソーシャルスキルに分類し、それぞれに対応する具体的なスキルを挙げています。

言語的ソーシャルスキルの中にlingo fluency(リンゴ・フルエンシー)というスキルが挙げられています。lingo(リンゴ)とは「仲間内言葉」という意味です。子どもたちは仲の良い集団ができるとその集団の中でしか通用しない言葉を生み出します。これは国や言語によらず、世界中で年齢にかかわらずみられる人としての習癖と言って良いでしょう。そしてlingo fluency の中で重要な位置を占めるのが、仲間内でのあだ名です。あだ名は仲間集団の外の人にもつけられます。夏目漱石の「坊ちゃん」に出てくる「赤シャツ」「うらなり」などは、教師につけられたあだ名です。もう時効ですので言いますが、私の高校時代の教師のあだ名を思い出すと、よく着ていた服装や授業中の様子から「めだか」「タコ」「青鬼」「ラーポン」「ドリンク」と人気のある教師には、ほぼ必ずあだ名がついていました。友人同士でも「ドン子」「八戒」「カワデブ」と呼び合っていました。ちなみに私は「バラ」(薔薇ではなくサカキバラの省略)。今でもたまに集まるとこうした青春時代の符牒を共有することで、何か懐かしい気持ちになります。

こうしたソーシャルスキルの重要な要素を「さん」付けで呼ぶように強制することで、一体何を子どもたちに期待しているのでしょうか?



筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。小児科医。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)、「子どもの発達障害 誤診の危機」(ポプラ新書)、「図解よくわかる発達障害の子どもたち」(ナツメ社)など。
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