■調査の背景
ベネッセ次世代育成研究所では、日本の父親を対象に、社会環境の変化が乳幼児の父親の子育てに与える影響などを調査しています。この度、東アジアの4都市の父親を対象に、父親の子育ての実態や家族との関わり、育児観、ワークライフバランスなどについて比較調査しました。
■調査概要
【調査テーマ】乳幼児の父親の子育てに関する意識と実態についての東アジア4都市(東京・ソウル・北京・上海)の比較。
【調査方法】インターネット調査
【調査時期】 2009年8月(東京)/2010年3月(ソウル・北京・上海)
【調査対象】 0歳~5歳の乳幼児を持つ父親(*中国は、第一子)、東京(1,602名)・ソウル(1,046名)・北京(1,800名)・上海(1,800名)
■調査結果レポート
東アジア4都市の"イクメン"比較 -東京・ソウル・北京・上海の父親調査―
日本では、今"イクメン"ということばを新聞などでよく見かけます。"イクメン"とは、日本語で「育児」の"育"と、「男性」の"men"を組み合わせた造語で、「育児を楽しみ、自分自身も成長する男性」*1という意味で、父親の育児をポジティブに推奨することばとして使われるようになりました。
ベネッセ次世代育成研究所は、2005年と2009年に、日本の首都圏に住む乳幼児の父親を対象に、父親の子育ての実態や、家族との関わり、育児観、ワークライフバランスなどについての調査を行ってきました。そして、この度、その対象を東アジアに広げ、東京(日本)・ソウル(韓国)・北京(中国)・上海(中国)の4都市の父親に対してインターネット調査を行い、2010年6月に調査結果を発表しました。
さて、東アジアの中で、東京(日本)のお父さんの"イクメン"ぶりはいかがだったでしょうか?東京のお父さんに焦点を当てて、調査結果をご紹介したいと思います。
*1:厚生労働省「イクメンプロジェクト」ホームページより
◆調査の概要
各都市、0歳~5歳(小学校就学前)の子どもを持つ父親を対象に、インターネット調査を行いました。各都市、1,046名~1,800名の有効回答が集まりました。
調査した項目は、父親の家事・育児の実態、子どもや妻、祖父母などとの関わり、育児についての考え、父親としての将来への不安、仕事と家庭のバランスなどです。調査の設計にあたり、3人の著名な研究者とCRNの小林登所長に監修をお願いしました。
◆基本属性
各都市の父親の平均年齢は、東京(36.3歳)、ソウル(35.6歳)、北京(32.2歳)、上海(31.9歳)でした。最終学歴は、どの都市も、「四年制大学」卒業者が最も多く、5割~6割でした。「大学院」卒業者も1割~2割弱いました。現在の職業は、「正社員」が最も多く、8割~9割いました。北京・上海は、共働き率が9割前後ですが、東京は妻の62.9%が無職、ソウルは52.6%が無職でした。
◆平日は子どもと一緒に過ごす時間が最も少ない東京のお父さん。でも、休日は最も長い時間、子どもと一緒に過ごしています。
平日に子どもと一緒に過ごす時間について聞いた質問では、東京・ソウルで「1~2時間未満」、北京は「3~4時間未満」、上海は「2~3時間未満」が最も多く、平日は、東京の父親が最も子どもと一緒に過ごす時間が少ない傾向でした。今回の調査では、平日の仕事からの帰宅時間についても聞きましたが、東京の父親は、帰宅時間が4都市の中で最も遅く、子どもと一緒に過ごす時間が少ない原因になっていると思われます。 一方、休日では、東京の父親が最も長く子どもと一緒に過ごしていました。東京の父親の52.2%が「10時間~ほぼ一日」子どもと一緒に過ごしていると回答しました。
Q.あなたは(今回対象の)お子さんとどのくらい一緒に過ごしていますか。
平日と休日についておよその平均時間をお答えください。

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◆東京のお父さんは、北京・上海のお父さんに比べて、家事・育児への取り組み頻度が低い傾向。短い時間に集中して取り組めるような育児を行っている傾向にあります。
家事5項目、育児11項目(東京は10項目)について、取り組みの頻度を4段階で聞いてみました。東京とソウルの父親は、北京・上海の父親と比べて、家事・育児への取り組み頻度が全般的に低い傾向でした。東京の父親は、育児では、「子どもをお風呂に入れる」、「子どもを叱ったり、ほめたりする」など、短い時間に集中して取り組める内容への取り組みが多くなっていました。子育ての中でも、「子どもと一緒に室内で遊ぶ」ようなことは、帰宅時間の早い北京や上海のお父さんの取り組み頻度が高くなっていました。
ちなみに、家事や育児以外に、自分のための趣味や、地域での活動、資格のための勉強などへの取り組みについても聞きましたが、東京・ソウルの父親は、北京・上海の父親に比べて、熱心に取り組めている割合は少ない傾向でした。
東京の父親が平日にもっと早く帰宅でき、妻や子どもと共に過ごす時間がもっと持てるような社会全体の取り組みが必要であると言えるでしょう。
【家事への取り組み頻度】


【育児への取り組み頻度】



*家事5項目、育児11項目についての質問より5項目を掲示。
◆理想の父親イメージは、東京は「頼りになる」お父さん、ソウル・北京・上海は「尊敬できる」お父さん。
理想の父親のイメージを19項目から3つまで選んでもらったところ、東京は「頼りになる」が66.9%で第一位、「尊敬できる」が51.7%で第二位でした。ソウル・北京・上海は、共に第一位は「尊敬できる」でした。ソウルで特徴的なのは、「友だちのようだ」が62.4%と高い割合で第二位になりました。北京・上海では、「頼りになる」が共に第二位でしたが、第三位に選ばれた「物知りだ」は、東京とソウルではあまり高い割合では選ばれておらず、特徴的です。時代の変化だけでなく、文化の違いによっても、理想の父親像は異なっているといえるのでしょうか。

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◆父親としての今後の不安は、4都市共通して、第一位は「将来の子どもの教育費用が高いこと」、第二位は「育児費用の負担が大きいこと」という経済的なことで、いずれの都市でも5割以上が回答しました。
調査では、父親として今後不安なことについて、19項目の中から当てはまるものをいくつでも選んでもらいました。第一位と第二位は、4都市共通して教育や育児費用の負担に関する不安でした。「将来の子どもの教育費用が高いこと」は、特にソウルの父親の不安が高く、83.9%が回答しました。第三位を見ると、東京の父親は、「自分の収入が減少しないかどうか」47.0%、ソウルは「子どもを育てるには不安な社会であること」64.3%、北京・上海では「子どもが無事に元気に育つかどうか」40.7%、43.7%でした。
東京の父親の不安のトップ3は、経済的な不安でした。少子化が進む日本、東京の合計特殊出生率は国内で最低で1.09です(2008年)。父親がもっと早く帰宅できるような働き方の見直しと共に、育児や教育費用の不安を軽減できるような社会での施策が望まれていると言えるでしょう。
Q.父親として、今後不安なことはありますか。

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◆まとめ
4都市の"イクメン"比較を通して、浮き彫りになったのは、東京の父親の置かれた厳しい労働状況と収入不安。帰宅時間が遅いこともあり、子どもや妻と一緒に過ごす時間が少なくなり、育児への取り組みも平日は少なくなってしまっています。しかし、休日は、子どもと長時間一緒に過ごしている状況がうかがえます。「尊敬でき」、「頼りになる」お父さんになるためにも、お父さんがもっと家庭で子どもと過ごせる時間を持てること、お父さん自身の趣味や勉強などの活動も、もっと出来るような社会になることを願います。
ベネッセ次世代育成研究所では、日本の父親を対象に、社会環境の変化が乳幼児の父親の子育てに与える影響などを調査しています。この度、東アジアの4都市の父親を対象に、父親の子育ての実態や家族との関わり、育児観、ワークライフバランスなどについて比較調査しました。
■調査概要
【調査テーマ】乳幼児の父親の子育てに関する意識と実態についての東アジア4都市(東京・ソウル・北京・上海)の比較。
【調査方法】インターネット調査
【調査時期】 2009年8月(東京)/2010年3月(ソウル・北京・上海)
【調査対象】 0歳~5歳の乳幼児を持つ父親(*中国は、第一子)、東京(1,602名)・ソウル(1,046名)・北京(1,800名)・上海(1,800名)
【調査企画・分析メンバー】
監 修
汐見 稔幸(白梅学園大学学長)
大日向 雅美(恵泉女学園大学大学院教授)
一見 真理子(国立教育政策研究所総括研究官)
調査メンバー
高岡 純子(ベネッセ次世代育成研究所主任研究員)
田村 徳子(ベネッセ次世代育成研究所研究員)
持田 聖子(ベネッセ次世代育成研究所研究員)
監 修
汐見 稔幸(白梅学園大学学長)
大日向 雅美(恵泉女学園大学大学院教授)
一見 真理子(国立教育政策研究所総括研究官)
調査メンバー
高岡 純子(ベネッセ次世代育成研究所主任研究員)
田村 徳子(ベネッセ次世代育成研究所研究員)
持田 聖子(ベネッセ次世代育成研究所研究員)
■調査結果レポート
東アジア4都市の"イクメン"比較 -東京・ソウル・北京・上海の父親調査―
日本では、今"イクメン"ということばを新聞などでよく見かけます。"イクメン"とは、日本語で「育児」の"育"と、「男性」の"men"を組み合わせた造語で、「育児を楽しみ、自分自身も成長する男性」*1という意味で、父親の育児をポジティブに推奨することばとして使われるようになりました。
ベネッセ次世代育成研究所は、2005年と2009年に、日本の首都圏に住む乳幼児の父親を対象に、父親の子育ての実態や、家族との関わり、育児観、ワークライフバランスなどについての調査を行ってきました。そして、この度、その対象を東アジアに広げ、東京(日本)・ソウル(韓国)・北京(中国)・上海(中国)の4都市の父親に対してインターネット調査を行い、2010年6月に調査結果を発表しました。
さて、東アジアの中で、東京(日本)のお父さんの"イクメン"ぶりはいかがだったでしょうか?東京のお父さんに焦点を当てて、調査結果をご紹介したいと思います。
*1:厚生労働省「イクメンプロジェクト」ホームページより
◆調査の概要
各都市、0歳~5歳(小学校就学前)の子どもを持つ父親を対象に、インターネット調査を行いました。各都市、1,046名~1,800名の有効回答が集まりました。
東京 | ソウル | 北京 | 上海 | |
調査時期 | 2009年8月 | 2010年3月 | 2010年3月 | 2010年3月 |
調査対象 | 0~5歳の乳幼児を持つ父親(*中国は第一子) | |||
有効回答数 | 1,602名 | 1,046名 | 1,800名 | 1,800名 |
年齢別 回答数 |
0歳 288 1歳 270 2歳 257 3歳 273 4歳 267 5歳 247 |
0歳 165 1歳 171 2歳 179 3歳 182 4歳 176 5歳 173 |
0歳 300 1歳 300 2歳 300 3歳 300 4歳 300 5歳 300 |
0歳 300 1歳 300 2歳 300 3歳 300 4歳 300 5歳 300 |
調査地域 | 東京都 | ソウル市・ 京畿道の 8市 |
北京市 | 上海市 |
調査した項目は、父親の家事・育児の実態、子どもや妻、祖父母などとの関わり、育児についての考え、父親としての将来への不安、仕事と家庭のバランスなどです。調査の設計にあたり、3人の著名な研究者とCRNの小林登所長に監修をお願いしました。
◆基本属性
各都市の父親の平均年齢は、東京(36.3歳)、ソウル(35.6歳)、北京(32.2歳)、上海(31.9歳)でした。最終学歴は、どの都市も、「四年制大学」卒業者が最も多く、5割~6割でした。「大学院」卒業者も1割~2割弱いました。現在の職業は、「正社員」が最も多く、8割~9割いました。北京・上海は、共働き率が9割前後ですが、東京は妻の62.9%が無職、ソウルは52.6%が無職でした。
◆平日は子どもと一緒に過ごす時間が最も少ない東京のお父さん。でも、休日は最も長い時間、子どもと一緒に過ごしています。
平日に子どもと一緒に過ごす時間について聞いた質問では、東京・ソウルで「1~2時間未満」、北京は「3~4時間未満」、上海は「2~3時間未満」が最も多く、平日は、東京の父親が最も子どもと一緒に過ごす時間が少ない傾向でした。今回の調査では、平日の仕事からの帰宅時間についても聞きましたが、東京の父親は、帰宅時間が4都市の中で最も遅く、子どもと一緒に過ごす時間が少ない原因になっていると思われます。 一方、休日では、東京の父親が最も長く子どもと一緒に過ごしていました。東京の父親の52.2%が「10時間~ほぼ一日」子どもと一緒に過ごしていると回答しました。
Q.あなたは(今回対象の)お子さんとどのくらい一緒に過ごしていますか。
平日と休日についておよその平均時間をお答えください。

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◆東京のお父さんは、北京・上海のお父さんに比べて、家事・育児への取り組み頻度が低い傾向。短い時間に集中して取り組めるような育児を行っている傾向にあります。
家事5項目、育児11項目(東京は10項目)について、取り組みの頻度を4段階で聞いてみました。東京とソウルの父親は、北京・上海の父親と比べて、家事・育児への取り組み頻度が全般的に低い傾向でした。東京の父親は、育児では、「子どもをお風呂に入れる」、「子どもを叱ったり、ほめたりする」など、短い時間に集中して取り組める内容への取り組みが多くなっていました。子育ての中でも、「子どもと一緒に室内で遊ぶ」ようなことは、帰宅時間の早い北京や上海のお父さんの取り組み頻度が高くなっていました。
ちなみに、家事や育児以外に、自分のための趣味や、地域での活動、資格のための勉強などへの取り組みについても聞きましたが、東京・ソウルの父親は、北京・上海の父親に比べて、熱心に取り組めている割合は少ない傾向でした。
東京の父親が平日にもっと早く帰宅でき、妻や子どもと共に過ごす時間がもっと持てるような社会全体の取り組みが必要であると言えるでしょう。
【家事への取り組み頻度】


【育児への取り組み頻度】



*家事5項目、育児11項目についての質問より5項目を掲示。
◆理想の父親イメージは、東京は「頼りになる」お父さん、ソウル・北京・上海は「尊敬できる」お父さん。
理想の父親のイメージを19項目から3つまで選んでもらったところ、東京は「頼りになる」が66.9%で第一位、「尊敬できる」が51.7%で第二位でした。ソウル・北京・上海は、共に第一位は「尊敬できる」でした。ソウルで特徴的なのは、「友だちのようだ」が62.4%と高い割合で第二位になりました。北京・上海では、「頼りになる」が共に第二位でしたが、第三位に選ばれた「物知りだ」は、東京とソウルではあまり高い割合では選ばれておらず、特徴的です。時代の変化だけでなく、文化の違いによっても、理想の父親像は異なっているといえるのでしょうか。

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◆父親としての今後の不安は、4都市共通して、第一位は「将来の子どもの教育費用が高いこと」、第二位は「育児費用の負担が大きいこと」という経済的なことで、いずれの都市でも5割以上が回答しました。
調査では、父親として今後不安なことについて、19項目の中から当てはまるものをいくつでも選んでもらいました。第一位と第二位は、4都市共通して教育や育児費用の負担に関する不安でした。「将来の子どもの教育費用が高いこと」は、特にソウルの父親の不安が高く、83.9%が回答しました。第三位を見ると、東京の父親は、「自分の収入が減少しないかどうか」47.0%、ソウルは「子どもを育てるには不安な社会であること」64.3%、北京・上海では「子どもが無事に元気に育つかどうか」40.7%、43.7%でした。
東京の父親の不安のトップ3は、経済的な不安でした。少子化が進む日本、東京の合計特殊出生率は国内で最低で1.09です(2008年)。父親がもっと早く帰宅できるような働き方の見直しと共に、育児や教育費用の不安を軽減できるような社会での施策が望まれていると言えるでしょう。
Q.父親として、今後不安なことはありますか。

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◆まとめ
4都市の"イクメン"比較を通して、浮き彫りになったのは、東京の父親の置かれた厳しい労働状況と収入不安。帰宅時間が遅いこともあり、子どもや妻と一緒に過ごす時間が少なくなり、育児への取り組みも平日は少なくなってしまっています。しかし、休日は、子どもと長時間一緒に過ごしている状況がうかがえます。「尊敬でき」、「頼りになる」お父さんになるためにも、お父さんがもっと家庭で子どもと過ごせる時間を持てること、お父さん自身の趣味や勉強などの活動も、もっと出来るような社会になることを願います。