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発達障害の子どもといじめ

榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

2016年9月16日掲載
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いじめによる子どもの自殺のニュースをきくと、本当にいたたまれない気持ちになります。
マスコミの関心の中心は、誰がいじめの張本人だったのか、どうして周りが気がつかなかったのか、ということに集中していますが、亡くなられた本人がどのような子どもだったのか、ということについては、個人情報保護のこともあり、ほとんど何も伝わってきません。

私はいじめや、いじめによって追い詰められた子どもたちに想いを馳せる時に、いつも心に浮かぶことがあります。それは発達障害のことです。

発達障害といじめ、と聞くと読者の皆さんは、どのように思われるでしょうか?
いじめというと、真っ先に思いつくのは、注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもです。診断基準(DSM-5)の多動・衝動性の項目には、「しばしば他人を妨害し、邪魔をする」と書かれていますし、陥りやすい二次障害である反抗挑戦性障害の診断基準にも、「しばしば故意に他人を苛立たせる」「しばしば意地悪で執念深い」と書かれています。これだけ読むと、注意欠陥多動性障害の子どもには、いじめっ子が多いのかな、と思いたくなります。
もう一つ思いつくのは、自閉症スペクトラムの子どもです。皮肉やお世辞の理解に困難があるので、ぎこちない人間関係の中でいじめのターゲットになりやすいような気がします。

発達障害の子どもといじめと仲間はずれについての興味深い研究をアメリカのトウィマン(Twyman)さんという研究者が行っています。
そこで明らかになったのは、発達障害といじめの間には極めて密接な関連があるという事実です。以下の表をみてください。アメリカでは、定型発達の子どもの中で、いじめっ子、いじめられっ子、そして仲間はずれにされた経験のある子どもは、それぞれ全体の約7-9%であることがわかります。

chief2_26_01.jpg では、私の最初の想像は正しかったのでしょうか?表を見ると、私の想像とは全く逆で、注意欠陥多動性障害のある子どもの中で、いじめっ子の割合は定型発達児と有意な差はなく、いじめられっ子の割合が定型発達児の3倍以上になっていることがわかります。仲間はずれに至っては、約28%と約4人に1人は仲間はずれの経験があることがわかります。
私の第2の想像は、その通りで当たっていました。自閉症の子どもは注意欠陥多動性障害の子どもと同じく、定型発達児と比べていじめられっ子の割合が3倍近く多いことがわかったのです。
発達障害の子どもは、同年代の子どもたちからいじめられたり仲間はずれにされるという経験の中で、人格を形成していくのです。二次障害が起こりやすい素地がここにもあると言えます。

想像をたくましくすると、いじめで自殺に追い込まれてしまった子どもの中に、発達障害の特徴のある子がいたのではないでしょうか?
もしそうだとすれば、周囲の大人は発達障害の特徴のある子どもが、いじめの対象になっていないか、注意深く見守ることで、いじめで追い詰められる子どもを、最悪の帰結から守ることができるかもしれないのです。

参考文献 Twyman KA et al. Bullying and Ostracism Experiences in Children with Special Health Care Needs. J Dev Behav Pediatr 2010
筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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