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名誉所長ブログ

Koby's Note -Honorary Director's Blog

となりの猫〜母猫と子猫〜

小林 登 (CRN名誉所長、東京大学名誉教授)

2013年11月29日掲載
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わが家では猫を飼っていないが、隣りの家には二匹の猫がいる。母と子の親子猫であるが、どういうわけか、夏のころから、私に挨拶をするようになった。私がわが家の門をくぐろうとすると、隣りの家の門の脇で木陰の涼を楽しんでいるこの親子の猫が、私の顔を見て「ニャー、ニャー」と鳴くのである。何となく愛嬌があって、私も悪い気がしないので、自然に笑顔で手を振ってしまう。子猫はまん丸の顔で、大きな目で私を見ながら鳴くので、特にかわいいと思っていた。

秋風が吹き始めて、ちょっと涼しくなった、ある夕方のことである。わが家に入ろうとすると、隣りの家の方から、突然、母猫が私の方に走り寄ってきた。私の脚に絡みつき、何かを訴えるように「ニャー、ニャー」と泣きつくので、私はとても驚いた。飼い主と私を見間違えたのではないかと思うと同時に、いつも一緒にいる子猫はどこへ行ったのだろうかと心配になった。家に入って、妻にこの出来事を話したところ、子猫は、近くの獣医さんの紹介で、わが家から1キロメートルほど離れたお屋敷に貰われていったという話を聞いたと教えてくれた。

猫が、人類とは長く特別な関係を持ってきた動物のひとつであることは、よく知られている。記録によると、紀元前数千年前のエジプトで飼われていたと伝えられ、わが国では奈良時代に中国から渡来してきたと言われている。そんな猫が、人間を見間違えることはまずないだろう。闇の中でも瞳孔を大きく開いて光の情報を集める視覚や、鼻孔を大きく開いて匂いの化学情報を集める嗅覚が共に優れていることを考えても、人を識別する際に間違えることは、まずないものと思う。

そう考えてみると、あの母猫の行動は一体何だったのだろうかと思いを巡らせてしまう。可愛がっていた小さな子猫が貰われていってしまい、母猫として何か感じていたのだろうか。私に何か訴えたいことがあったのではないかと考えると、心の痛む思いがする。猫の行動に詳しい方に、ぜひ、教えて頂きたいものである。

筆者プロフィール
kobayashi.jpg小林 登 (CRN名誉所長、東京大学名誉教授)

医学博士。CRN名誉所長、東京大学名誉教授。国立小児病院名誉院長。
日本医師会最高優秀功労賞(1984年11月)、毎日出版文化賞(1985年10月)、国際小児科学会賞(1986年7月)、勲二等瑞宝章(2001年秋)、武見記念賞(2003年12月)などを受賞。  

主な著作は、小児医学専門書以外には『ヒューマンサイエンス』(中山書店)、『子どもは未来である』(メディサイエンス社)、『育つ育てるふれあいの子育て』(風濤社)、『風韻怎思―子どものいのちを見つめて』(小学館)、『子ども学のまなざし』(明石書店)その他多数。
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