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名誉所長ブログ

Koby's Note -Honorary Director's Blog

CRNをバトンタッチします

小林 登 (CRN名誉所長、東京大学名誉教授)

2013年5月 9日掲載
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CRN読者の皆さま


突然ではありますが、年齢のことも考えて、CRN所長を副所長のお茶水女子大学教授榊原洋一氏にバトンタッチすることにします。長い間お世話になりました。CRNには、体力の許すかぎり、名誉所長として寄稿するなど、お手伝い致す所存です。

考えてみますと、CRNは私が国立小児病院を定年で辞めた1996年の4月に、当時ベネッセコーポレーションの社長であった福武總一郎さんのご支援によって始めたものでした。

その発想の起源は、それからさらに4年ほど前の1992年春、ノルウェーのベルゲンで開かれた"The Norwegian Centre for Child Research"主催の国際会議「危機にある子どもたち」の後に開かれた小さな話し合いにあります。なお、このノルウェー国立の研究所は、当時は学際的・環学的な「子ども学」の研究をする場所と考えていましたが、最近そこを訪問した榊原氏によると、現在は文化人類学的な研究をしているそうです。必要に応じて研究の目的や方法を変えて研究する研究所と言えるかもしれません。

前述の、国際シンポジウム終了後の小さな話し合いに話を戻しましょう。今でも、その時の様子をありありと思い出すことができます。世界の参加者の中から選ばれた、子どもに関心をもつ学者・実践家が、大型バス2台に乗り、ベルゲンから半日ほどの時間をかけてフィヨルドの水際に建つホテルに集まったのです。ホテルの裏の山には残雪があり、山も空も夕日に輝いて赤く染まっていました。そこで話し合われたことは、子どもに関心をもつ世界の学者・実践家をインターネットでつなげて子どもの問題を解決しようという話でした。当時インターネットの事は何も知らなかった私には、話の内容がよく理解できず、具体的なイメージがわきませんでした。

しかし、幸いなことに帰国後1年ほど経つと、国立小児病院にもインターネットが導入され、その端末が院長室にも置かれたのです。その使い方もすぐわかり、ベルゲンの話の重要性も意義も理解することができました。それには、インターネットの操作に長けていた院長室の秘書Tさんの力も大きかったと思います。

そうこうしているうちに、定年の時が来たのです。私は、インターネットで我が国の子どもの問題に関心をもつ学者・実践家をつないで、子ども問題の解決に貢献することを、最後の仕事にしようと考えたのです。それで、ベネッセコーポレーションの福武社長にお願いに上がることになりました。

この時お世話になったのは、当時ベネッセコーポレーションの教育研究部長だった島内行夫氏と、私の医学部同級生の石井威望氏でした。島内氏には、福武社長を紹介してくださるなど、いろいろとご支援をいただきました。石井氏は、同級生でありますが、東京大学医学部を出て医師免許を取った直後に工学部に入りなおして情報工学の専門家になりました。私が教授になったのとほぼ同じ頃、工学部教授になった親友です。そして、私の赤ちゃん研究からはじまり、いろいろとご支援くださいました。CRNの計画をお話しすると、Child Research Net (CRN)という名前まで考えてくださり、いろいろご指導をくださったのです。

その後CRNは、様々な方のご協力により発展し、現在は日本語版ばかりでなく、英語版、中国語版(簡体字と繁体字)と3つの言語、4つのサイトに広がり、世界各地で子どもに関心をもつ学者や実践家と交流しています。これも、皆さん方のご指導、ご支援のおかげです。

 

今回、私も応分の年齢になりましたので、いろいろ考えた末、この4月から榊原氏にバトンタッチすることにしました。

榊原氏は、学生時代の頃から小児科に熱心な学生として記憶に残っています。卒業後私の小児科教室に入局し、小児科の臨床をされ、アメリカにも留学して小児神経学を勉強され、小児科専門医になられました。そして小児科医としては、数少ない「発達障害」の専門医として、診療ばかりでなく研究でも活躍されています。現在はお茶の水女子大学大学院で育児学・保育学・幼児教育学などを講義し、女子高等教育において活躍されています。また、私の始めた「日本子ども学会」でも副理事長として私をサポートしてくださっています。

これからのCRNは、榊原氏の新しい発想のもと、ますます活発に活動することになるでしょう。皆さま方におかれましては、これまでのご支援に感謝致しますとともに、引き続きご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

筆者プロフィール
kobayashi.jpg小林 登 (CRN名誉所長、東京大学名誉教授)

医学博士。CRN名誉所長、東京大学名誉教授。国立小児病院名誉院長。
日本医師会最高優秀功労賞(1984年11月)、毎日出版文化賞(1985年10月)、国際小児科学会賞(1986年7月)、勲二等瑞宝章(2001年秋)、武見記念賞(2003年12月)などを受賞。  

主な著作は、小児医学専門書以外には『ヒューマンサイエンス』(中山書店)、『子どもは未来である』(メディサイエンス社)、『育つ育てるふれあいの子育て』(風濤社)、『風韻怎思―子どものいのちを見つめて』(小学館)、『子ども学のまなざし』(明石書店)その他多数。
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