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名誉所長ブログ

Koby's Note -Honorary Director's Blog

桶谷式乳房管理法とその研鑽会、法人化のお祝い

「桶谷式乳房管理法」とは、そもそもは第二次世界大戦中、旧満州で開業していた助産師の桶谷そとみさん(1913-2004)が、マッサージ師の資格をとって勉強し、あみ出した医療技術である。母乳の出の悪い時、母乳哺育中の痛み、さらには乳腺炎を起こしたりした時に対応する良い方法と言われている。戦後、桶谷さんは高岡に帰られてからも開業をし、技術を高めるとともに、治療手技を体系化して、現在の技術に発展させた。また、1980年には、研鑽会を作り、研修センターを併設して後進の指導を始めたのである。

その後、桶谷さんは大阪堺市に移り、続いて東京に出て、同じやり方で後進を指導されてきた。亡くなられてからは、お弟子さんが、あとをついで現在に至っている。 桶谷さんのなさっていることに関心をもって、私が直接高岡に参上してお会いしたのは、1970年代の終り頃で、まだ研鑽会を始めてはおられなかったと思う。何故、関心をもったのかというのは、乳房マッサージとは全く別で、育児支援、特に母乳育児支援と関連してのことであった。 国際小児科学会の役員として、パリの理事会に出席した折、昔ロンドン留学中によく行った医学書の書店で求めたD. Raphaelさんの本、"Breastfeeding, Tender Gift"から全てが始まる。彼女は女性の生命のバトンタッチ、すなわち妊娠・分娩・育児、特に母乳哺育には、エモーショナル・サポートが重要であると述べている。更に、どんな伝統文化の社会でも、女性同士のエモーショナル・サポートを柱にした助け合いシステムが存在する、とも述べているのである。しかも、その中心的な役割を果たす女性が必ずいて、それをドゥーラ(doula)と呼んだ。先進社会では、近代産科医療が進むと共に、その助け合いシステムと一緒にドゥーラも消えてしまったと言うのである。それが、先進社会の問題であると強調している。 そういう医療人類学的な発想に私は強い感銘をうけると共に、日本の社会のどこかにドゥーラと呼べる人がいないだろうかと、探し始めていたのである。そんな時、高岡に桶谷さんという助産師がいると、先輩のある小児科の教授が教えて下さったのである。

ドゥーラのことは以前にこのCRNブログでも書いたと思うので、これ以上は述べないが、1970年代の末頃、金沢に講演か何かで行った折、帰途高岡にまわって桶谷さんにお会いしたのである。

今でも思い出すが、3月の上旬の日本海側では珍しく晴れ上がった快晴の日であった。桶谷さんのクリニックは下町にあり、屋根は未だ雪が残っていて、それが早春の陽光で溶け、ぽたぽたと輝きながら落ちていたのが印象的であった。桶谷さんは、優しく母親に語りかけながら、優しく指を動かして、乳房をマッサージしていた。それは、エモーショナル・サポートを取り込みながらもそれだけにとどまらないマッサージの技術で、母親達の乳房をめぐる苦しみを取り除くものであった。同時に、優しい会話のやりとりが、乳房の苦痛の除去によって、更に母親達の子育ての悩みの解決の効果を高めていることがわかった。

現在、桶谷さんに直接指導をうけたお弟子さん、更にそのお弟子さんによる指導によって、桶谷式乳房管理法研鑽会は、桶谷さんの技術を伝え、日本全国で母乳育児の推進と母親の子育て支援を展開している。

桶谷式乳房管理法研鑽会がこの度、法人化されて、11月12日土曜日にお祝いの会が開かれた。そこに招待され、出席した時の印象は、資格をとられた助産師さんの熱気一杯で、わが国の子育て支援の大きな力になるばかりでなく、何か母乳哺育を通じて、ガタが来たわが国の社会の立て直しにもなるのではないかと思った。

桶谷式を学ぼうとする助産師さん達、また桶谷式乳房管理法で治療を受けようとするお母さん達、下記にご連絡下されば、その方法を教示してもらえるでしょう。

 

 

 一般社団法人 桶谷式乳房管理法研鑽会

〒162-0044 東京都新宿区喜久井町20-8オケタニ早稲田ビル

TEL:03-5291-1020 FAX:03-3203-5008

URL:http://www.oketani-kensankai.jp

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