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Koby's Note -Honorary Director's Blog

10年ぶりの北京訪問で思ったこと

先月11月22日から3泊4日で、東アジア子ども学交流プログラムのため北京に旅した。1970年初頭以来、北京訪問は10回以上になると思うが、この前の旅では、ホテルのテレビで9・11テロ事件の飛行機がニューヨークの高いビルに突っ込むあの映像を見た。ということは、2001年のことである。北京で開かれた国際小児科学会議に参加した年で、もう10年近くなる。

久しぶりに来た北京は、日本のGNPを抜いて、いろいろな面でアメリカに次ぐ世界第2位の大国の矜持を示し始めていた。まず、オリンピックのために建て替えられた北京国際空港ビルの屋根の優しい流線は、中国を感じさせる美しさであった。建物の中は近代化され、乗客の流れもスムーズであった。その上、対応する役人達の服装もきちんとしていて、好感が持てた。町を走るタクシーは、日本とあまり変わらなくなり、10年前ならタクシーの流れをぬって走っていた自転車の群もほとんど消えてしまっていた。中国は豊かになったばかりでなく、人々もそれなりに国際化の意義を理解し、大国の誇りを感じさせた。

東アジア子ども学交流プログラムの会場は、中華女子学院という中国に現在ある3つの女子大のひとつで、歴史と伝統ある大学のホールであった。毛沢東が政権をとって1949年10月1日に中華人民共和国を設立した時に、次の中国を担う女性の教育を目的として北京に設立された大学である。会場には1500人近くの人が集まり、幼稚園(保育園)と小中学校教育をどう結び付けるのが良いかを、日中の専門家と共に話し合ったのである。質疑応答も活発で、会場は沸いた。


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(中華女子学院の学生さん達に囲まれて)

中国側のいくつかの発表は、私達に考えさせる問題でもあった。というのは、北京のような大都市には、仕事を求めて人が集まってくるものであるが、家に住み仕事に就いていても、外から来た人は正式の住居登録は出来ないという。すなわち、従来から住んでいた北京在住の人々とは別に登録されるのである。したがって、そういう立場の人々の子ども達が受ける教育は、前から北京に住んでいた人々の子ども達が受ける正式の教育とは異なるのである。特に、学校に就学する前の教育は充分でなく、幼稚園・保育園も少なく、なかなか入れないという現実がある。

帰国のため、北京空港に向かう前に、北京師範大学の学生さんの案内で、就学前教育を専門とする教師と学生さん、そして親とが一緒になって運営している保育園を見学させて頂いた。30人程の4・5歳の子ども達が、学生さんのお世話で、寒い空気の中で元気よく遊んでいた。先生とのやりとりで見せる子ども達の笑顔や、小さなけんかで見せる泣き顔は共に印象的であった。その子どもの母親が働いている市場も見せてもらった。電気用品から野菜・果物、肉まで並べている大小の店が、優に100はあったであろう。そこは、人間の生きている姿と息づかいが一杯であった。その中では、保育園で笑顔をみせていた男の子の母親が、食糧品を売って働いていた。太った恰幅の良い白衣を着た明るい女性だった。

中国が、間もなくアジア、さらには世界の大国として、世界をリードする国の仲間に入ることは間違いない。その中国の未来を支える子ども達のことに、もう少し配慮して頂きたいものと思ったのは、私だけではないであろう。


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(訪問した保育園で遊ぶ元気な子ども達)


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(保育園に近いマーケット)



文中の保育園は中国語版で連載して取り上げています。
 5年間の経歴をずっとつづっていますので、そちらもご覧ください。
 http://www.crn.net.cn/research/sihuan/2005/(中国語)

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