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Koby's Note -Honorary Director's Blog

インターネットと私

「インターネット」という言葉を初めて耳にしたのは、20年近く前のことであった。1992年春、ノルウェーのベルゲンで開かれた国際会議"Children at Risk"(危機にある子ども達)後の話し合いの場であった。会議後、世界各国代表と言うべき人達が、バスに乗せられて4、5時間、残雪のある山に囲まれた静かなフィヨルドの奥の瀟洒なホテルまで連れて行かれ、2泊3日で缶詰になった。内容は、"インターネット"で、子ども問題に関心のある世界各地の学者、研究者、実践家を繋ごうという話であった。国際会議そのものは、ノルウェー国立子ども学研究センターと呼ぶべき施設の主催であった。旅費まで出していただき、時間も取れたので参加することにした。何も知らなかった私は、冒頭で「インターネット」はないが、「ファックス」ならあると言って笑われた。


当時私は国立小児病院の院長をしていたので、幸いなことに、会議後間もなく病院にインターネットが入り、院長室にもコンピューターの端末を置いてもらう事が出来た。早速、人差し指でキーをたたきながら、使い方を学び、何とかインターネットをいじることが出来るようになった。もっとも、秘書の方がお上手で、助けられた事もあったと思う。


最初に驚いた事は、何かを探しているうちに、アメリカのとんでもないところにあるホームページまで入り込んでしまったことである。インターネットのネットワークは、地球全体を大きくカバーしているという実感をもった次第である。


そんな体験から、ノルウェーで話し合った、世界の子ども問題に関心をもつ人々をインターネットで繋ぐ仕事を、日本代表としてやってみようかという気になった。国立小児病院の定年退官も近づいていたので、単なる小児科医としての仕事より、子ども達のためになるもっと大きな仕事が、人生のまとめとして出来るかも知れないと思ったこともある。


いろいろやり方を考えて、結局インターネットによる子ども問題の解決をどう研究したらよいかを話し合う場として作ろうということになり、Child Research Net (CRN)を、国立小児病院を定年退官した1996年に設立した。ベネッセコーポレーションの御支援によって、ノン・プロフィットな組織として出来上がったのである。国際的な活動を目指して設立したので、当然日本語版ばかりでなく、英語版、中国語版もお願いして始めたのである。


設立以来15年になり、その間いろいろと思わぬところからメールが飛び込み、やりとりすることになった。フロリダのお母さんからの育児相談とか、シカゴ大学で助産学を勉強している留学生からドゥーラの問合せがあったり、ヨーロッパの国際機関から子どもに関するwikipediaのようなものを作ろうとか、数え上げれば切りがない。その中には、ドゥーラ研究室のように、問い合わせてきた方にお願いして、新しい活動を始めたものもある。その後、CRNのアクセス数が順調に伸びているのは、コンテンツもそれなりに良いからであろうと自負している。


最近驚いたのは、CRNで私の書いたものを読んで、「子ども」とは関係のない個人的な話で、イギリスから私に問い合わせがきた事である。インターネットの情報というものは、生き物のように世界を走り回り、人間の心を動かし、新しい人間関係さえもつくるものであることを学んだのである。


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