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勇気の出る言葉

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私がまだ小学生だったころ、「若い日の一日一言」(青春出版社1961年、宇野一編、武者小路実篤監修)という本が家にありました。父が編者の旧制高校時代の友人だったのでもらったのだと思います。一年の365日それぞれの日に一言ずつ選んで、古今東西の著名な人とその人の言葉を説明した本です。多くはその人の誕生日や命日に当たる日にちなんで、半ページほどの簡単な説明がなされていました。「きけ わだつみのこえ」などについて初めて知ったのは、この本を通じてだと思います。内容はほとんど覚えていませんが、結構気に入った言葉をこの本の中で見つけたことを覚えています。

私は取り立てて、名言や 箴言 しんげん に関心があるわけではありませんが、折に触れて思い出す勇気や知恵を与えてくれた言葉があります。人それぞれ生き方は違いますから、他人が好きな言葉には別に関心ない、という方もいると思いますが、新年のブログということで御容赦いただき、紹介させてください。

私のような子どもでも、そのニュースを聞いて震撼したのが、1963年のケネディ大統領暗殺の事件です。以前にこのブログでも御紹介した大統領就任演説は、その当時から口ずさんでいた大好きな言葉です。個人の主体的な行動を呼びかけた「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country」は、後日私が国際学会の会長に選ばれた時の就任の挨拶で、country を association(学会)に置き換えて無断(?)使用してしまいました。もっとも、誰もケネディ大統領の言葉のもじりであることには気がついてくれませんでしたが。

アメリカ留学時代、実験がうまく行かずに落ち込んでいると、アメリカ人の同僚がよく「It's not the end of the world.(この世の終わりっていうわけじゃないんだから)」といって慰めてくれました。これも確かに元気の出る言葉ですが、先人にはすごい人がいるのだと感心させられ、今でも落ち込んだときのためにとってあるのが、宗教改革で有名なドイツのマルチン・ルターの以下の言葉です。「私はたとえ明日世界が滅びることが分かっていても、リンゴの木を植え続けるだろう」。リンゴの木を植えることを、彼の宗教運動にたとえたものです。リンゴの木に実がなるのは何年も先のことです。明日世界が終われば、努力は無駄になってしまいます。それでも、というルターの根性には正直頭が下がります。

最後に、勇気の出る言葉ではありませんが、科学的実証精神の鑑として最も尊敬している科学者であるチャールズ・ダーウィンの言葉を紹介したいと思います。それは「Ignorance more frequently begets confidence than does knowledge」という英文和訳の試験にもなりそうな翻訳がやや難しい言葉です。「知識のない人は、知識のある人に比べて、より自信ありげに主張するものだ」という意味ですが、子どもについての事実に基づいた知見や考えを広く社会に紹介することをミッションとするCRN所長として、忘れずにおきたい言葉だと思います。
筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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