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何故、今、「子ども学」なのか
    ~甲南女子大学 国際子ども学研究センターの取り組み~


甲南女子大学 国際子ども学研究センター所長 一色伸夫

   1998年、甲南女子大学に日本で初めて「国際子ども学研究センター」が開設されました。その初代の所長は東京大学名誉教授で日本子ども学会理事長の小林登先生です。その後2006年には「子ども学」を基軸とした総合子ども学科ができ、私も教員として着任しました。
 私は36年に及ぶNHK時代に、小林先生と子どもに関する数多くの番組を企画・制作する機会があり、その中で"子どもは未来である"という言葉に深く感銘を受けました。
 2008年4月から、国際子ども学研究センターの所長となり、まず考えたことは、"子どもが置かれている現状を改善するために何ができるか"ということでした。そこで注目したのが、国際子ども学センターが主催する10年間に及ぶ子ども学公開シンポジウムでした。
 そもそも「子ども学」という発想は、小林登先生が東京大学医学部教授(小児科学)時代の1970年代に、世界各地の大学教育を取材したときから始まりました。その後、国立小児病院院長を経て、甲南女子大学教授として2年間教壇に立たれた時に、日本で初めての「子ども学」を冠とした国際子ども学研究センターとして結実したのです。

 甲南女子大学国際子ども学研究センターでは、授業の一環として"子どもに関心のある人が集まり議論するための場"を積み重ねることで、学際的かつ包括的な「子ども学」の体系づけを構築してゆこうと考えました。多角的な視点や方法論から子どもに迫るために、基調講演をしていただくプレゼンターと、別の角度からコメントしていただくパネリストという枠組みのもと、議論を深めていく形式を用いた公開シンポジウムを年に6回開催することにしたのです。その成果を各年で、研究誌「子ども学」としてまとめてきています。

 少子化時代の今日、子どもが直面している問題は、あまりに多様で、その要因は複雑に絡み合っています。これらの子ども問題を解決するためには、子どもを取り巻く社会問題を科学的にかつ多角的に検証することが急務です。
 子どもの健やかな成長と発達を支援していくためには、子どもに関するさまざまな領域の研究を統合することが重要であり、その学問的基盤として「子ども学」が提唱されてきたのです。

 就学前教育におけるアンバランス(保育園では待機児童が急増し、幼稚園では定員に満たない)などの問題が露呈するなかで、両者を統合するかたちで「子ども園」が具体化しつつあります。
 今日の複雑で多様な諸問題の解決に向けて、子どもを見る多角的な視点とその総合化という「子ども学」が必要であり、その全体像を呈示する研究誌が、今まさに社会的に要請される所以なのです。

 2004年には、総合的な学問領域としての「子ども学」の進歩普及を図ることを目的として日本子ども学会が発足しました。そして今日、「子ども学」を冠とした学部、学科が全国で130カ所に迫ろうとしています。(チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)調査
 日本で初めて「子ども学」の講座を開設した大学として、13年にわたる外部の先生や実践家など様々な分野の人々が討議した公開シンポジウムは、延べ74回に及びます。その中から、多様な領域かつ社会的要請の高いものを抽出し、総合的に子どもの問題を考える研究誌を発刊することにしました。
 具体的には、子ども学、保育、幼児教育、赤ちゃん、比較行動、発達心理、障害児教育、幼児虐待、生活習慣、おもちゃ、芸術、児童観、ロボット、メディアなど、子どもが豊かに育つために必要な指針となる研究や実践を含む20編を再編集し掲載しました。

 子どもに関心をもつ保育園・幼稚園・小学校の先生、母親・父親、将来の保育士・幼稚園・小学校教員を目指している学生等に、幅広く読んでもらいたいと思っています。この本が、読んでいただいた一人一人の方々にとって、子どもの問題を考えるきっかけとなれば幸いです。命のバトンタッチをスムーズにしてゆくために何ができるのか、安心して子育てできる環境をどうしたら構築できるのかなど、子どもが豊かに育つ社会をみんなで、築いてゆくことがとても大切だと思うからです。
 東日本大震災以降、いろいろな立場の違う人々が協力しながら苦難を乗り越え、絆が生まれてきています。明日の世界を担う"子ども"問題に関しても、是非、"子どもは未来である"のもと結集しようではありませんか。




「子ども学 1998―2010」 2011年11月1日発行


  • ◆問い合わせ先:

    甲南女子大学 国際子ども学研究センター
    電話 :078-431-0397
    ファックス:078-413-3007
    メール:child@konan-wu.ac.jp

    株式会社くとうてん
    電話 :078-335-5965
    ファックス:078-332-3415
    メール:sera@kutouten.co.jp

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