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親子向けアート書道ワークショップ実施レポート

2013年7月19日掲載
寧月(書デザイナー)
1、小学生の親子に「アート書道」の体験を

2013年3月28日(木)、港区高輪図書館分室にて「ものづくりワークショップ--アート書道家寧月さんとオリジナルカレンダーをつくろう!」が開催されました。小中学生の親子が対象でしたが、当日は4歳のお子さま2名も加わり、子どもから大人まで合計17名の賑やかなワークショップとなりました。

これまで、社会人や母親、中高生を対象としたワークショップを行ってきましたが、今回は、小学生の親子が対象ということで、書道に「ものづくり」をとりいれたプログラムを企画しました。プログラムの前半では、筆を使ったアート書道のレッスンとそれを用いたカレンダー製作を行い、簡単な呼吸と瞑想を行った後、休憩をはさんで、後半に、うちわの自由製作に臨みました。後片づけも含めて2時間、幼稚園や小学校低学年の子どもたちには短い時間ではありませんでしたが、誰ひとり、走り回るということもなく、集中して楽しんでくれました。

2、「アート書道」とは?

言うまでもなく、書道というのは、日々の練習の積み重ねを必要とするものであり、わずかな時間のワークショップで習得できるものではありません。「アート書道」とは、「書き、伝えるための書道」を離れた「自由な表現活動としての書道」のことで、近年定着してきている言葉です。書道それ自体がアートであるので、少しおかしな言い方ではありますが、伝統的な書道とは見た目も異なるものが多く、「現代アートとしての書道」という新たなジャンルを指し示すものとして認められている言葉だと思います。そして、この「アート書道」も、古典書道を模範とした練習の積み重ねがあってよい創作ができるという、そういう位置づけのものであると、私は理解しています。

さて、そんな「アート書道」を、数時間のワークショップで、筆を持ったこともない子どもたちにどう伝えていけばよいのでしょうか。「アート書道」で、子どもたちに何を伝えることができるのでしょうか?

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見本としてつくった書道と和紙のうちわ
3、白と黒と朱の世界

今回は、まず初めに、筆に墨をつけ、横線を書くことから始めました。自分にとっての自然な横線、できる限り細い線、できる限り太い線。いろいろと書いているうちに、「にじみ」や「かすれ」が出てきて、同じ横線でもいろんな線ができてきます。次は、「○」。大きな「○」や、小さな「○」、太い「○」や細い「○」。これもまた、同じものはひとつもありません。「同じものを書こう」と思っても、二度と同じものは書けないのが書道のおもしろさでもあります。そして、この横線と○を組み合わせて、自分の作品をひとつ作ってもらいました。でき上がった作品には、朱肉を指につけ、端に印のように押して、完成!

完成作品ができあがると、みんなうれしそうに、作品を見つめていました。筆で何かを書くというのは、それなりの緊張感を伴うものなのですが、あれやこれやと書いているとその緊張感がほぐれて、よい線が書けるようになってきます(このような筆遣いの練習を「運筆」といいます)。この勢いで、季節にぴったりな漢字の「花」を製作。何となく、線の美しさや余白の美しさといったような、アート書道の世界を理解してきたところで、上半分が真っ白な和紙のカレンダーに、自由な創作を行ってもらいました。自分の名前や、好きな言葉など、それぞれに書いてくれていました。これもまた、指で印を押して、完成!

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何枚も、何枚も・・・書き出したら止まらない!
4、からだに向き合うこと、ものを創ること

休憩の前には、呼吸と瞑想を行いました。胡座(ヨガ等で安楽座と言われる座り方)になり、手を合わせて、ゆっくりと息を吸いながら手を天井に向けて伸ばしていきます。伸びきったところで、今度はゆっくりと息を吐きながら、手を回すようにしながら膝までおろしていきます。これを、ゆっくり10回ほど行います。それから、手を膝に乗せたまま、眼をつむって、姿勢を正し、じっとします。全員が静まると、それまでは聞こえなかった空気の流れる音が聴こえます。じーっと、じーっと。小さな子どもたちに、この瞑想ができるのか不安がありました。でも、4歳の小さな子どもも、じっと座って、「何も無い音」に耳を傾けてくれていました。

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心もからだもまっすぐ伸びて、深呼吸。

5分の休憩を終えたあと、うちわ作りに入りました。二種類のうちわからひとつを選び、色とりどりな和紙から好きなものを選んで、書道で自由な創作をしたものと一緒に飾りつけをするという作業です。きれいな染め物の和紙を広げるとみんな思わず「わ〜!」と声が出ていました。30分程の自由な創作活動の末、でき上がったものは様々でした。涼しげな「氷」の文字、「summer」のようなアルファベットもあれば、果物の絵を並べたものもありました。お母さまたちもとても熱心で、子どものように楽しんでくださいました。

5、子どもと書道、日本の文化

テーブルと椅子で食事することが普通になった現代の日本人にとっては、30分正座するというのはなかなか難しいことです。腹筋、背筋、腿の筋肉も必要とする正座は、実は、身体を鍛えるにはとてもよい姿勢であり、私のワークショップでは、敢えて、テーブルを使わずに正座をしてもらっています。見ていると、どうしても段々と脚が崩れてしまう子どもが多くいました。また、呼吸と瞑想のときの胡座でも、骨盤が倒れて、背中の曲がってしまう子どもが見られました。

「考えれば考えるほど、書けなくなる」。書道には、そんな不思議なところがあります。思考が強くならないよう、呼吸を深くし、血を巡らせて、力を抜くこと。それが、書道の創作のポイントであり、おそらく他の日本の伝統技法にも通じる、"日本の美"の根っこであるのではないかと思っています。色とりどりの和紙や、柔らかな筆の感覚、しびれた脚や、静寂の中の鼓動を通して、子どもたちも、日本の文化を感じてくれたのではないかと思います。

「楽しかった!」「次はいつ?また来たいです!」と、子どもたち。お母さまたちも、できた作品を抱きしめて、「家に帰ったらパパに見せます」とうれしそうに帰ってくださいました。子どもたちの自由な創作は、こちらの想像を超えるもので、インストラクション以外の文脈が、それぞれにあったように感じています。自由に創造することの楽しさ、自分自身の創造性の豊かさを感じる機会になっていたなら、とてもうれしく思います。



筆者プロフィール
寧月(ねいげつ)
書デザイナー。東京大学教育学部卒業後、会社員として働きながら書道を学び、師範資格を取得。2010年、「筆アート寧月」を立ち上げる。インテリア向け等アート作品を行う傍ら、子どもから大人までを対象としたアート書道ワークショップを企画・開催している。2児の母。
http://neigetsu.jp/ja/

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